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第十一話:君がいない朝なんて、もう考えられない
朝の光が静かにカーテン越しに差し込み、真白は目を覚ました。
隣には、まだ眠りの中で小さく呼吸を繰り返す陽翔がいる。
その寝顔を見つめるだけで、胸がぽかぽかと温かくなる。
「…お前、もう起きてるのかよ」
真白の呟きに、陽翔は寝ぼけ眼をこすりながら微笑む。
「うん。先輩の匂いで、気持ちよくて…つい起きちゃった」
陽翔は照れたように首をすくめ、真白の腕に顔を埋める。
真白はそんな陽翔をそっと引き寄せ、小さく唇を重ねた。
「…もう、お前って奴は」
その後ろで聞こえる陽翔の寝息を、真白はしばらく幸せそうに聞いていた。
⸻
──朝ごはんのキッチン
エプロン姿の陽翔がスクランブルエッグをかき混ぜ、真白がトーストを焼く。
ふたりの息はすっかり合って、小さなキッチンに微笑ましい空気が満ちている。
「先輩、塩、もうちょい入れてもいい?」
「お前、味見しすぎだろ…でも、いいよ」
陽翔が指先で味見したスクランブルエッグを真白に差し出す。
真白はその手を取り、自分でもひと口味見てから満足げに頷いた。
「悪くないな。…って、その手、ベタベタじゃねぇか」
「えへへ、ごめん…でも、先輩の料理、毎日食べたいんだ」
真白はくすりと笑って、陽翔の頬に軽くキスをした。
⸻
──登校前のリビング
テレビのワイドショーを横目に、ふたりは制服に着替えを終えていた。
陽翔がバッグを肩にかけると、真白が肩越しに小声で話しかける。
「お前、ちゃんと学校行くんだぞ?」
「もちろん。先輩も行くんでしょ?」
「当たり前だろ。お前が帰ってくるまで、俺が守ってやるからな」
陽翔はその言葉に胸をきゅっと掴まれるような気持ちになり、真白の手をぎゅっと握り返した。
「ありがとう、先輩。今日も一日、頑張ろうね」
⸻
──電車の中
いつものように並んで立っていると、陽翔の表情が少し曇った。
「ねぇ、先輩…」
「どうした?」
「最近、すごく幸せで…でも、もし突然先輩がいなくなったらって、たまに考えちゃうんだ」
真白はハッとして、陽翔の肩に手を置く。
「バカか。俺がいなくなるなんてありえねぇよ」
「でも…」
「お前が不安になるってことは、俺がもっとしっかりしないといけないってことだな」
真白は真剣なまなざしで陽翔を見つめ、小さく笑った。
「大丈夫。俺が絶対に、ここにいるから」
⸻
──帰宅後のスーパー
晩ごはんのメニューを考えながら、ふたりは食材を選んでいる。
「今日はクリームシチューにしようかな」
「お前、シチュー好きだもんね」
「うん。でも、先輩の顔が見たいから、どんなメニューでも嬉しいよ」
真白は照れ笑いを浮かべつつ、陽翔の肩をポンと叩いた。
「お前のおかげで、俺も新作レシピ考える気になれそうだわ」
⸻
──夜のベッドルーム
陽翔が先に布団に入り、真白がそっとくるりと向きを変えて陽翔の隣に来る。
ふたりはお互いの体温を感じ合いながら、静かな時間を共有していた。
「先輩…今日も一緒にいてくれて、ありがとう」
「…お前、毎日言うけど、俺もお前がいるから頑張れるんだ」
陽翔は真白の胸に手を当て、小さく頷いた。
「大好きだよ、先輩」
「俺も、大好きだ」
そしてふたりはゆっくりと唇を重ねる。
そのキスは言葉以上に確かな想いを伝え、今日一日のすべての幸せをふたりで締めくくった。