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──付き合うようになって初めてになる、彼の誕生日が近づいていた。
いつもいろいろな場所へスマートにエスコートをしてくれて、沢山の幸せな時間をくれる彼に、私の精一杯の想いを形にして贈りたかった。
数ヶ月前から思い悩んで、いつも作ってもらうばかりだからと、誕生日には私の心尽くしの手料理を彼に食べてもらいたくて、料理教室に通った。
そうして訪れた、彼の誕生日の当日──
デートの約束をした後で、ふと気づいた……。
……私、料理を習うことに夢中になっていて、プレゼントを用意するのを忘れてる!
どうしよう……と、今さらのように考えて、今から買いに行っても、なんだか付け焼き刃にもなりそうで私は頭を抱えた……。
今日はお昼からデートをして、その後は彼の部屋へ泊まることになっていた。そこで、サプライズで私が彼にフルコースの料理を振る舞う予定だった。
だけど買い揃える食材などを入念に下調べをしていたおかげで、バースデープレゼントのことがすっかり頭から飛んでしまっていた。
どうしたらいいんだろうと考える間にも、刻一刻と約束の時間は迫って、
初めて一緒に過ごす先生の誕生日を忘れられないものにしたかったのに……と、落ち込みそうになる。
時間ギリギリまで考えてみたけれど大していい案は何も浮かんでこないまま間に合わなくなりそうになって、慌てて出かける用意をすると私は待ち合わせ場所へ急いだ──。
待ち合わせの駅に着くと、彼が既に改札に立っているのが見えた。
遠目でもすらりとした立ち姿に見惚れてしまう程で、通りすがる人たちが皆振り返っていた。
「……一臣さん!」
駆け寄って、この人が私の彼なんだという思いでぎゅっと抱きつくと、
片腕に抱き締め返されて、「そんなにも、私に会いたかったんですか?」頭にふわりと手の平が乗せられた。
自分からも彼の背中に腕をまわして、「……はい」と、頷いて、
「……会いたかった」
口にすると、
「私もですよ…」
彼が口元に優しげな微笑をたたえた。