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僕はとっさに立ち上がった。こんな時に誰だろう。今日は来客の予定などはなかったはずだけど。
「ああ、来たみたいだね」
しかし、義兄は慣れた様子でインターホンに向かい応対を始めた。
「はーい」
「はーい、じゃないわよさっちゃん、このクッソ忙しい時に来てやったんだからさっさと開けなさいな! もう暑いったらないわ!」
明らか男性の声なのに、明らかに女性っぽいしゃべり方がリビング中に響き渡った。そして。
「……あれ」
不思議なことに、その声が聞こえたその瞬間、いまだに鼻の奥にしつこく残っているような気がしていた磯の臭いが、霧散するように溶け消えたのがわかった。
「紹介するね。この人俺の遠縁の親戚で神主さんやってる、紗倉鷹山さん。よっこさんて呼んであげて。で隣にいるかわいい子がその妹の巫湖たんね。あ、よっこさんとこの神社で巫女さんやってるんだけど、名前もみこたんなんだよ、かわいいでしょ?」
「……は、初めまして、小鳥遊陽充と申します」
「あらあ! やだうそ、さっちゃんにまったく似てないイケメンじゃなーい!」
玄関先で紹介された、鷹山さんというさかえ義兄さんより濃ゆい人。僕は、とりあえず目をしばたたいてから頭を下げることにした。トークが頭上で爆裂し、腕をばしっとたたかれ、僕は思わず膝を折りそうになって踏みとどまる。顔を上げ、かろうじて隣を見れば、黒髪ストレートの清純そうな女性がうつむいて両手を握り合わせていた。この人が巫湖さんだろう。
誰とも目を合わせようとしない女性の居心地悪そうな表情に、僕もそりゃ、そうだよな、と納得する。僕だってこの濃い男二人が集まった状況から一刻も早く逃げ出したい。
鷹山さんは、さかえ義兄さんより背が高く姿勢がよくて、和装がよく似合う人だった。黒髪を長く伸ばしてこよりでまとめている姿は、まるで江戸時代の武士がそのまま飛び出してきたかのよう――なのだが、口を開くと女性なのだ。不思議なことに。
そして隣にいる巫湖さんは、ぽてぽて、という音が似合いそうなたたずまいで歩いてきて、僕と義兄に頭を下げてくる。
「え、ええと、は、初めまして小鳥遊さん、それと、お久しぶりです、烏丸の小父様」
義兄は突然顔を覆って、膝をついて泣き崩れるポーズを見せた。ぎょっとする巫湖さんの目の前でよよよと肩を震わせる。
「お、おじさまって……おれよっこさんより年下なのにぃ……おじさん扱いはひどいよぉみこたん……しくしく」
こういうことを言い出す時点で、さかえ義兄さんの精神はだいぶおっさんだと思うが、巫湖さんは驚いたように目を見張り、おどおどと両手を振って謝ってきた。
「ええっ、ご、ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
「うぅ、みこたんが俺の頭よしよしってしてくれたら機嫌治すぅ……」
「バカなこと言ってんじゃないのッ!」
あわあわと途方に暮れる妹を守るように、鷹山さんがさかえ義兄さんの頭をぺしんとはたく。ふてくされたように頭をさすりながら、義兄は立ち上がった。
「さーて、じゃあ今回よっこさんを呼んだ理由についてお話ししよっかなぁ」
コメント
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第21話読み終わったよ〜!さっちゃんとよっこさんの登場、いきなり濃すぎて笑ったww 男性なのに女性口調の神主さんって設定、好きすぎる。巫湖さんのぽてぽて感も可愛くて、さかえ義兄が「おじさま」呼ばわりで拗ねるとこめっちゃウケた。でも磯の臭いが消えた描写が気になる…何かあるんだろうな。和装の濃ゆい兄妹、続きが気になるわ🔥