テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
三文小説
3,873
404
#Snow Man
桃紫 さく🌸
10,209
(渡辺視点)
「……!涼太!」
「翔太、プール掃除お疲れ様」
校門前で涼太を見つけて、俺は真っ先に駆け寄る。
佐久間とふっかには悪いけど、俺はお先に失礼するぞ。
この後、涼太と一緒に飯を食うんだから。
「……ん?」
早速一緒に帰ろうって思ったら、涼太が立ち止まる。
何かあるのかと思って、俺も周りを見渡してみる。
あれ?
あそこにいるのって……
「風紀委員長?」「照?」
なんで委員長が夏休みに学校来てんだよ。
誰か迎えにでも来たのか?
「ちょっと声かけてくるね」
「あ、涼太……」
涼太はそう言って、委員長の方に向かってく。
「………」
行っちゃった……
せっかく、涼太と一緒に帰れると思ったのに…
委員長とも一緒に帰るってなったらたまったもんじゃないし。
「……む…」
涼太と委員長がなんか喋ってる。
「…むぅ……」
話、長い……
俺の迎え来てくれたのに……
涼太、早く帰ってこいよ…
委員長も、なんでここにいるんだよ。
不機嫌が顔に出そうになってたら、涼太が委員長と一緒に戻ってきた。
……なぁ、一緒に帰るとか言いださねぇよな?
俺、嫌だけど…!!!
涼太と2人きりがいい!!!!!
「翔太、ふっかはまだプールにいる?」
「……は?」
と思ったら、涼太にふっかのことを聞かれた。
(佐久間視点)
「大丈夫か?」
「………ぅん…」
多分泣き止んだであろうふっかに声をかける。
「よーし!飯食うぞ!!」
俯いたまま顔を上げないふっかの背中をバシバシ叩く。
そのまんま引きずるようにしてふっかの腕を引っ張る。
「…佐久間、ありがと……」
「ん〜?何が?」
きっと聞かないことに感謝してるんだろうけど、俺は軽く受け流す。
俺は友達としてやったことだし、こんなことで感謝されてちゃこの先短いぞ〜?笑
……って、あれ?
ふっかと一緒に校門に向かってたら見慣れた顔がある。
あの仏頂面…照?
え?照いるよな??
…………なぜ?
ふっかは……気づいてないか。
え?まじどうしたんだ?
照がここにいるわけ……
え……?
なんか、照の後ろに…
「………ホェッ」
変な声出た。
阿部ちゃんじゃんか…
なーぜここに???
「佐久間……?どうしたの?」
ああああ!!!
ふっか、お前、顔あげちゃう…!!
………およ?
でも、別にいいのでは……?
ふっかも照に謝りたい感じだろうし……むしろちょうどいいのでは?
でも、阿部ちゃんはなぜいるん……だ……?
はっ!!!!!
まさか、俺の迎えにきたの……!!
まさかのまさか!!!?
うわっ!!やっだー!!
阿部ちゃんったらイ・ケ・メーン!!キャーーー!!!!
……って違う違う!!
「……ひ、照?阿部ちゃん?何でいるの?」
「「え?」」
俺の言葉に声をあげたのは、ふっかはもちろん、照も。
ふっかは顔を上げて、照は振り返って驚いた。
「岩本…?それに、何で阿部ちゃんも……?」
「阿部…!?お前、何でここに…?」
およよよよ?
照も阿部ちゃんがいることを知らなかったの?
あれ?
それに、ふっか今阿部ちゃんって言った?
そんなふうに呼ぶ仲なの!?
え〜…なんかショック〜……!
…て、違うよな!!
どういうことかしら?
誰かー!!何もわからない佐久間さんに説明して〜!!
(阿部視点)
驚いてすごい顔になってるよ。
「……来ちゃった⭐︎」
少しだけ舌を出して、照に笑って見せる。
「お前、どういう……?」
ま、こう言ってもわからないかな。
……俺も、ちょっとだけふっかの顔が見たかったの。
それに、佐久間もいるからちょうどいいね。
ふふ、照も佐久間もふっかも、みんな口を開けたまま固まってる。
佐久間は状況もわかったなさそうだし、照も2人きりで話す予定だったんだよね。
俺は笑顔で佐久間に駆け寄る。
……ん?
ふっかの目元、腫れてる?
「………佐久間?」
「ほえっ!?違うよ!!俺が泣かせたけど、泣かせてないからね!!!!」
俺の視線に気づいた佐久間は慌てて否定する。
多分、佐久間も佐久間でふっかと何か話してたのかな?
「佐久間、迎えに来たよ」
「ふえっ!!ほんと!?」
俺が手を差し出すと、佐久間は嬉しそうに目を輝かせる。
ほんと、可愛いやつだなぁ、笑
「…あ、でも…」
佐久間は一瞬俺の手を取ろうとしたけど、すぐに隣のふっかを気にかける。
「……ふっか、いいかな?」
「………ぇ…?」
俺に話しかけられたのが驚いたのかな。
ふっかと、久しぶりに目があった。
ふっかは静かに頷いた。
「ありがとう。佐久間、行こ」
「う、うん」
佐久間の腕を引く。
そして、まだ訳がわからず突っ立ってる照の肩をポンポンと叩く。
「……よろしくね」
照にそれだけを伝えて、俺と佐久間は帰ることにした。
(岩本視点)
な、何だったんだ…?
いや、でもありがたいのか?
俺も、こいつと2人きりで話したかったし…
「……あ、のさ…え、と…」
阿部と佐久間先輩が帰って俺と2人きりなのが気まずいのか、何か話そうとしても言葉が詰まってるらしい。
「……ごめん…」
それだけ言って帰ろうとする。
「待って」
そんなあいつの腕を軽く掴む。
まだ話してないし、何に謝ってるのかもわからないよ。
「何で…?」
不安そうに揺れる瞳。
逃げないで。
「……俺は、お前に話したいから来たんだ」
「………ぇ…?」
俺は、お前のことを知りたい。
お前自身のことを教えて欲しい。
「……俺のこと、嫌いになってないの…?」
「嫌いにはならないよ……ちょっとは傷ついたけどね」
「……っ…」
嘘はつかない。
俺はお前を嫌いになったわけじゃない。
でも、傷ついてないわけでもない。
「……ごめん、なさい…」
「何が?」
俯いたまま、ただ謝ってる。
それじゃ、何に対する謝罪かわかんないだろ。
「俺……岩本に、気持ち悪いって……それで、俺…」
震える声で何とか喋ろうとしてる。
「…そんなこと、どうでもいいよ」
「そんなこと……?何、言って…?」
俺が欲しいのは謝罪の言葉じゃない。
「俺は、お前のことを知りたいんだよ」
「…ぇ?」
お前の、本当の姿を見せてよ。
(深澤視点)
こいつ……一体、何のつもり…?
俺のこと、嫌いになったんじゃないの…?
俺の顔も見たくないくらい傷ついたんじゃないの…!?
わかんない…わかんないよ…
俺の本当の姿なんて……そんなもの…
『悩んでるんだったらさ、話してよ……1人で、全部抱え込もうとすんなよ…』
「………」
佐久間……
そんなこと言われても、俺は……
俺、は…
「普通じゃ、ないから……」
こんな俺……見せたらみんな離れて……
離れて……?
俺は、みんなから距離を置いてたでしょ…?
なのに、離れてほしくないの……?
離れてほしくないから俺はみんなから離れてたの?
何……?
何、何なの……?
「俺も、普通じゃないよ」
「え?」
岩本も、普通じゃない……?
「………っ……」
まさか……本当に…
あの噂は、本当だったの………?
なのに、俺は……
気持ち悪いなんて……
「……ぁ…ぅそ…」
俺、俺……
最悪だ……俺は、岩本のことを本当に傷つけたんだ…
岩本の人生も何もかも否定した……
気持ち悪いって一言で、岩本の全てを………!!
「だから、それはもういいんだって」
「…んむっ…!?」
岩本に両頬を掴まれる。
痛い……
「謝罪も自責もいらないんだよ。ずっと言ってるじゃん、俺はお前を知りたいの」
「………ふぇ…?」
「そんなに償いたいんだったら、お前の腹の中全部さらけ出せよ。それで許してやる」
何で……
どうしてそんなに俺のことを知りたいの…?
「俺もお前も普通じゃないんだったらちょうどいいじゃん」
「……へ?」
どう言う意味……?
「普通じゃない同士、ちゃんと話そうよ」
でも、そんな……
「俺は、お前から離れるつもりないよ」
「…………」
「傷ついても、知りたいんだよ」
「………」
「お前自身のことが、な」
「……っ…」
何だよ、それ…
そんなの……ずるいよ…
「………俺の話、聞いてくれる…?」
俺、普通じゃないけど…聞いて…
ほんとの俺を、見て…
中2の時、両親が離婚した。
中学受験の話がなくなった時から、少しずつ両親の間の空気が悪くなった。
俺がいるときはしてないけど、毎晩口論してる。
母さんは俺を私立の高校に進学させようとしてる。
父さんはお金のことを気にしてる。
母さんの考えてることもわかる。
父さんの考えてることもわかる。
俺は、どっちの味方につくこともできない……
だって、俺は母さんにも父さんにも笑顔でいて欲しいから。
俺は、母さんと父さんに笑ってて欲しかったから勉強を頑張った。
いっぱい……褒めて欲しかった…
なのに、俺が頑張ったせいで母さんと父さんから笑顔が消えた。
その喧嘩が俺の前で明確になったのは、中1の冬。
「……母さん?父さん…?どうしたの?急に話し合いだなんて…」
冬休み中、急に母さんに呼び出されたんだ。
母さんは鋭い顔、父さんは不満げな顔をしてた。
無言で母さんに座るように見つめられる。
「………どう、したの…?」
恐る恐る2人の顔を見つめた。
あくまで笑顔は崩さないように。
俺が笑ってれば、少しでも空気がやわらかくなるかなって…
「……あなたは、私立の高校に行くわよね?」
「…………え?」
母さんの気迫で、俺は凍りついた。
もちろんだよって答えたかった。
母さんは、俺が私立に行くことを望んでる。
なら、俺は……
「馬鹿言え。私立は金がかかるんだ」
「………ぁ…」
でも、それは父さんの言葉で消えた。
「そもそも、この子が私立行きたいって言ったのか?」
「……そ、の…」
「そうに決まってるでしょ!?」
「……ま…」
「俺にはそうは見えないけどな?」
「はぁ!!?」
母さんと父さんには、俺の声が聞こえてないのかな…
俺は、何も言えないまま、2人の口論はどんどんヒートアップしてく。
「誰が稼いでると思ってるんだ!!?」
「あなただってこの子の勉学費にちゃんと費やしてるの!?」
「勉学費にばっか費やしてられるか!?」
「だからって、あなたはいつもいつも自分の趣味ばっかで!!!!」
「それはお前もだろうが!!」
「私はこの子への投資よ!!!」
「それがお前の趣味だって言ってんだ!!」
「あなたよりはマシでしょう!!?」
耳を塞ぎたくなる…
俺は、どうすればいいんだろう。
どうすれば、2人の口論を止められるのかな…
「もういいわ」
口喧嘩の温度を先に下げたのは母さんの方だった。
冷たい水を頭から被ったような気分だった。
次に続く言葉が、何となく予想できてた。
「………出ていきます」
喉の奥が詰まった。
机の上に置かれたのは、離婚届……
それを見た父さんも凍りついてる。
父さんは、気づいてなかったんだ…
母さんはずっと、父さんと離れたくて仕方なかったんだ…
………じゃあ、俺は…?
「行くわよ」
「……え…?」
俺が考えるより先に、母さんに腕を引っ張られる。
「早く準備しなさい」
「……母さん…?」
「あなたは、私のところへ来るでしょう?」
母さんに鋭く見つめられる。
そうか……俺は、母さんのとこに行けば…
「おい、何言ってるんだ?」
「……っ…」
でも、机の方に引っ張られるくらい強い力で、父さんに腕を掴まれた。
「お前は、俺のところに残るだろ?」
すごい強い力で引っ張られる。
「………っ…!」
痛い……
「何言ってるのはこっちのセリフよ!ほら、早く準備して」
「あ……か、かあさ…」
「お前にこの子が育てられるのか?」
「とう、さん……」
俺、どうすればいいの……?
母さん?父さん?
俺は、どっちを選べばいいの……?
「………選べないのね?」
母さんに冷たく見られる。
変な汗が、背中を伝った。
もしかして………
「ならいいわよ」
母さんの手が離れてく。
「………ぁ…」
「もう、あなたとは一緒にいれないわ」
母さんは、俺から離れていく。
手を、伸ばそうと思った。
お願い、行かないで……
でも、その言葉も止められるんだ。
「やっぱり、お前は俺のことを選んでくれるんだな?」
父さんに、後ろから抱きしめられた。
俺の伸ばした手は後ろから掴まれて、母さんに届くことはない。
「あなたの顔なんてもう見たくないわ!」
中2の初めに、母さんは出て行った。
出ていく時に、最後に聞いた母さんの言葉。
父さんに言ったのか、俺に言ったのか…
どちらとも読める言葉……
どっちにしても、もう二度と俺は母さんと父さんと一緒にいることができないんだ…
それから、父さんは変わったんだ…
………いや、母さんがいなくなって、本性が現れたんだ…
母さんも、そりゃこんな人と離れたいよね……
父さんは…..あの人は、ただの酒とタバコと女が好きなどうしようもない人だったんだ…
お金は自分のことのために使うし、俺のことだって、都合のいい道具としか見てないし…
それでも、俺は頑張り続けた。
誰かに認めて欲しかった。
俺が頑張り続ければ、母さんも戻ってくるかもしれない。
誰かが、俺のことを見つけてくれるかもしれない。
そんな期待が、まだ中3の秋まではあった。
「君なら難関大も余裕で合格できるさ!!」
「……え…?」
予備校の先生から笑顔で言われた。
大学……?
俺、まだ中3なんですけど?
俺の中では、もう高校は決まってた。
私立は高くて行けないから、俺がバイトで何とかやってけそうな高校。
学力は何とでもなるし、頑張ってたおかげで行けないところの方も少なかった。
だから、素能高校にしたんだ。
「その、何で大学の話なんて…?」
「いやぁ…深澤くんみたいに頭のいい子ならきっとこの高校を選んだ理由があると思ってね」
「……」
「この高校はあまり学問に力を入れてるわけではないから、少し不思議でね。でも、深澤くんが選んだなら俺も応援したくてね」
「…………そう、ですか…」
あれ…おかしいな…?
何だろう…この感覚…
俺みたいな、頭のいい子……?
俺がこの高校を選んだのは、大学進学が目的だからじゃないよ……
あれ…?
俺が選んだ……?
俺が選んだの…?
俺って、頭がいい子…?
頭がいい子って何…?
自分で選ぶって何なの?
「……ありがとうございます」
笑顔でお礼を言う。
最低限、礼儀は忘れない。
俺って、頭がいい子なの…?
あれ………?
俺って、どうするのが正解?
俺、何のために頑張ってるの?
何を求めてるの?
何で俺は頭のいい子として見られてるの?
頭のいい子って何だろう?
周りから期待されてるのは何で?
周りの人たちは俺に何を求めてるの?
俺が、何をすればみんなは喜ぶの?
「………?」
あ、れ……?
おかしいな…
俺って…何で期待されて…?
大人たちは、周りの人たちは…俺に何を期待する…?
何で、期待を俺に押し付けるの……?
俺が頑張ってたのは、期待されるためじゃないのに…
みんな…みんなみんなみんなみんなみんなみんな……
俺に、どんなイメージを押し付けるの?
「…………」
そのまま高校生になった。
もう、勉強する理由も予備校に行く意味も何もかもがわからない…
なのに続けて、何の意味があるんだろう…?
そんな疑問を抱えながら、俺は続けてる。
俺は……俺はどんどん優等生になってくんだ。
みんなみんな、俺に期待の目を向ける。
そして、俺もその期待に応えないといけない。
これって、幸せなのかな……?
幸せって、何なんだろうな…
俺は、幸せになりたかった。
だから、俺は幸福論をひたすら読んでた。
その内容も、どうすれば幸せになれるかも全部……
全部やったよ……!!
全部試した、全部やったんだよ………
でも、俺は幸せになれなかったんだ…
優等生像は積み上がるばっか。
俺は、どうすればいいのかがわからないんだ。
期待に応えることしか、俺にはできなかった。
そんな中で出会ったのが、阿部ちゃんだった。
予備校から帰る時、廊下に順位表が貼ってあるのが目に入った。
そういえば最近テストやったな、なんて思いながら素通りしようと思った。
「………」
さらに視界に入ったのは、多分中学生だと思われる男の子。
何でかは自分ではわからない。
でも、何かを感じて……
「君、見ない顔だね?新人くん?」
声をかけたんだ。
俺の感じた通り、阿部ちゃんは俺と少し思考が似てる。
だから話も合うし、俺も楽しかった。
だから、いろんなことを話した。
自然と口も動いてた。
だからこそ、深く関わりすぎた。
だから悟られた。
阿部ちゃんには、離れてほしくなかった…
俺の家のこと知られたら、阿部ちゃんはきっと心配する。
きっと、自分から俺のとこに巻き込まれにくる。
そんなこと、させるわけには行かない。
だから離れた。
だから、俺は優等生をやめた。
全部諦めたんだよ。
これで、全部終わるかな……って思ったのになぁ…
「学校に来ないとはどういうことだ!?」
高2、授業をサボったら先生に怒られた。
いや、当たり前なんだけど……
「……えぇ?わら」
笑ってみせる。
「学校には来てるじゃないですか〜?わら」
もう、俺は優等生なんかじゃないんだ。
「お前は何してるんだって聞いているんだ!!」
……うるさいなぁ…
………何、その目?
まだ向けてるの?そんな期待の目?
「ねぇ“堕落した優等生“だって…」
あだ名なのかな?
厨二臭いなぁなんて思いながら聞き流す。
俺は、どうやっても誰かから何かしら名前をつけられる。
何をやっても無駄なら、何をやってもいいんだよね?
だったらもう、俺のこと止めんなよ……
「家では父さんの言いなりの玩具、学校ではサボり魔……俺の居場所なんて、どこにもないんだ…」
俺は、もう……
「居場所なら、あるだろ」
「……ぇ…?」
居場所、なんてないよ……?
幸せにもなれないし、誰かからレッテルを貼られて生きてる。
そんな俺に、居場所なんてあるのか……?
「……佐久間先輩、渡辺先輩…宮舘先輩がいるだろ。阿部も、お前が後夜祭で一緒にライブしてた後輩もいる」
「………」
でも、それは居場所なの……?
『ふっかはさ、俺も翔太も、友達とは思ってないの?』
『…そう、いうことじゃ……』
そうだ……
佐久間に、そう聞かれた時に否定できなかった。
「………それに、俺もいる」
「……は…?」
何、言ってるの……?
「俺は、お前の居場所になりたい」
「…………?」
居場所…?
居場所になりたい?俺の……?
俺の、居場所になりたい………
「……はっ?!///」
ど、どういう……
「お前は、俺にとっての特別なんだ」
「ちょ……ぇ…?まっ……///」
特別…?
特別って何よ……?
「……す、好きになっちゃった…?あっはは…わら?」
なんか、何ですか?
えっと……冗談ですか?わら
「……好きって言ったらどうする?」
「…………ごめん、俺が謝るからさ」
「おい、逃げんなよ」
「ごめん、冗談です」
おい、おいおいおいおいおいおいおい…
もしかして……お、俺が気持ち悪いって言ったからその返し?
いや、俺のが何億倍も酷いんだけど…..!!
え?ええ?何?どういうこと……?
「……まぁ、それも別にいいんだけどさ」
「……ぅん…?」
べ、別にいいんだ……
「さっきも言ったけどさ、俺はお前の居場所になりたい」
戻ってくるんかい!!!!
「……それ、どういう意味なの…?」
居場所なんて、どうやって……?
「まずはさ、友達になろうよ」
「…は?」
友達……?
友達?え?フレンド??
「佐久間先輩たちとは友達なんでしょ?俺とはまだ友達になってない」
「いや、そうだけどさ…」
まじで言ってんの…?
友達………
友達なんて…
「俺の全部知ったくせに、友達でいいの…?」
佐久間たちにも話してないこと、話したのに…?
俺のこと特別とか言ったくせに友達……?
何言ってんのか全然わかんないんだけど…
「なら、特別な友達はどう?」
「特別な友達って……」
俺の言葉聞いてた?
そういうことじゃないんだけど?
何?こいつ天然なの?
俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……!!
……そういうことじゃなくて?
「………?///」
あ、あれ?
じゃ、じゃあ、俺はこいつとどんな関係になりたいの…?
友達でいいじゃん、特別な友達でいいじゃん。
何で、ちょっと嫌なの…?
「まぁ、それだけじゃ足りないのか…」
岩本の言葉に思わず首を勢いよく縦に振る。
「………心の友…」
「ジャイ◯ンかよ!!!」
何だ心の友って!!
いや、でも腹の中見せた相手だし、間違ってはいないのか…?
「……お前、そんな元気だったんだ」
「…え?」
俺が耐えきれずにツッコんだら岩本が目を細めて笑った。
こいつの笑った顔、初めて見た…
「……岩本こそ、ちゃんと笑えるんだ…」
「それは失礼だろ」
「だって笑ったことなかったじゃん!」
「今日は、帰るの?」
「………うん」
“心の友“として岩本と話した後、俺は家に帰ることにする。
岩本に心配そうに呼び止められる。
いつもなら憂鬱でしかないんだけど、今日は帰ろうって思えた。
何でだろう…不思議だな。
「なんかあったら、いつでも連絡しろよ」
「……ありがと」
岩本は、本当に優しいな。
岩本に笑って見せてから、1つ思い出す。
「……岩本」
「ん?」
岩本の目を見つめるために、ゆっくり顔を上げる。
『気持ち悪いね』
「……….岩本は、気持ち悪くなんかないよ」
あの時の言葉、岩本のことを傷つけたこと。
まだ、ちゃんと言えてなかったよね。
岩本は、驚いた猫みたいに目を見開いてる。
「………それは謝罪?」
「…どうだろ…?」
謝罪なのかな……?
俺もわかんないや…
俺は、ただ………
「本当の気持ちを、伝えたいから?」
なのかな?
俺の言葉に岩本がどう思ったかもわからない。
でも……
「………初めてだな…」
自分の本当の気持ちを誰かに伝えられたのは。
家まで帰る足取りは、自然と軽かった。
コメント
4件

iwfkしてて思わず笑顔になりました…✨️ 💛さんの不器用ながらに歩み寄っていく感じが本当に表現お上手すぎて💞💞 次回も待ってます!
第25話、読み終わりました……! 深澤くんの過去がまさかこんなに重いものだったとは、胸がぎゅっとなりました。誰かに認められたくて頑張ってきたのに、その期待が自分を縛る鎖になっていく感覚、すごく伝わってきました。 それでも岩本くんが「居場所になりたい」「特別な友達」って言ってくれて、最後に深澤くんが初めて本当の気持ちを伝えられたシーン、じんわりきました。帰り道の足取りが軽くなった描写に、私も一緒にほっとしました。 ふっかの心の声が少しずつ開かれていく過程、本当に丁寧で素敵でした。次も楽しみにしています🌷