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作戦決行日、22時。俺らはコンテナが立ち並ぶ港の一角に身を潜めていた。向かいのコンテナの上にはフラヴスがスナイパーライフルを構え、少し離れたコンテナの上でケルレウスとアモルがスマホを見てなにか話していた。斜向かいのコンテナに身を隠すオルフェンと対角線上のコンテナに身を隠すメラーキとアイコンタクトを取り、報告した。
「こちらフォティア。全員配置に付いた。応答願う」
『こちらケルレウス。予定配置への完了を確認。取引が開始するまで待機、こちらの合図で攻撃を開始してくれ』
「「「「了解」」」」
4人の声が重なる。じっと息を潜めて撃破目標が来るのを待つ。数分もすればわらわらと煩い集団がやってきた。あれが暴力団γだろう。まだ薬物密売組織は来ていないようだ。ヘッドセットマイクはONのまま、2人からの指示を待つ。こちらの息は相手の耳に入っていない。幸い、喋り声で何も聞こえていないようだ。
『密売組織が来た。取引終了辺りを狙うよ』
了解の意を示すため、マイクを1回叩く。4つの爪音が重なった。チラリと視線を向ければ2つのアタッシュケースを交換しているところだった。あそこに薬物と金が入っているだろう。腰に差した日本刀にかける手に力が入る。腰を低くして右足に力を入れる。何時でも飛び出す準備は出来ている。
『総員攻撃開始!!!!指揮全権をメラーキへ移す!!』
アモルの指示で一気に飛び出す。左右に握った日本刀を振り、オルフェンとメラーキの道を作り出す。大群は慌てたように銃を構えるが遅い。俺やオルフェンの攻撃から逃れたとてメラーキとフラヴスから狙撃される。充満する血と火薬の匂い。返り血を浴びても尚斬り続ける。首を斬り落とし、敵同士をぶつけて致命傷を与え、心臓を貫く。
今まで何万回もしてきた俺の仕事。道を切り開き、後に動きやすくするための突破口。重い日本刀を2振り持ち、戦い続ける筋力と体力は俺しか持ち合わせていない。オルフェンは近距離とはいえハンドガンでリロードの必要がある分攻撃に差が出てしまう。メラーキも同様、リロードの必要がある上に中距離のためにエイムを合わせる必要が追加されてしまう。そこを狙われたら彼は一撃でダウンしてしまうだろう。フラヴスは遠距離。遠くから確実に仕留めていく分攻撃は俺らの中で最も遅くなる。そして居場所がバレてしまい、近づかれては何もできなくなってしまう。そうなる前に俺が全ての流れを作り出す。脳裏に焼き付くのはケルレウスとアモル…ちぐとけちゃの可愛い笑顔。世話焼きで心配性で優しすぎるあの2人を悲しませたくない。だから俺は特殊殲滅部隊AMPTAKの最前衛として血飛沫を浴び続ける。
「こちらメラーキ。密売組織及び暴力団γの殲滅完了」
『こちらアモル。こちらも生体反応なしを確認。これから薬物抹消のための準備を行う』
全ての撃破目標を抹殺し、肩で息を整える。暴力団γは団員が多いためいつも以上に疲労が溜まる。コンテナにもたれかかって休憩しようとした瞬間、嫌な気配を感じた。ケルレウスとアモルの背後、生き残りと思われる奴が後ろから発砲しようとしていた。俺は咄嗟に2人に叫んだ。
「ケルレウス!!アモル!!後ろだ!!」
今あるありったけの力を使ってコンテナを登り、生き残りの目の前に日本刀を振りかざす。2人は俺の声を聞いたメラーキとフラヴスが姫抱きをして別のコンテナの上に移動して無事だった。生き残りの後ろにはハンドガンを構えたオルフェン。声を発するより早く撃たれた奴はばたりと倒れた。念のため首を斬り落としておく。
「し、死ぬかと思った……みんなありがと…」
「ありがとね……みんながいなかったら死んでたよ…」
「無事で良かったよ〜!!」
「次はちゃんと後ろも用心しろよー?」
「「はぁーい」」
さすがにもう動けないのでオルフェン…まぜにおぶってもらって4人がいるコンテナへ向かう。
「あっと本当にありがとう!!おかげですぐ動けたよ」
「いや、それほどじゃないよ。すぐ動いたのはあっきぃとぷりだから」
「とにかく!!俺らはあっとくん達のおかげで今も生きれてるからみんなに感謝してるからね!!」
「そうそう!!まぜちもトドメありがとね!!」
「任せろよ。至近距離は得意だぜ!!」
任務の時とは変わり、リラックスした5人の表情。この笑顔を守れるのなら俺は喜んで命だって差し出す。