「お、おんりー、??」
僕に馬乗りになっているおんりーが得意げに笑う。あまりにも珍しい、飲み間違えて酒が入ってる、とはいえここまで変わるのか、驚きと少しの喜びが入り交じった頭で先程までの事を思い出した。
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「あれ、おんりー寝た?」
机に突っ伏し、微動だにしない彼に声をかける。昨日寝不足だったのだろうか、酒を好まない彼が酒で潰れる事も無いはずだし…。とりあえずもうお開きかな、とすっかりへべれけになった頭で考えた。ちらりと時計を見やると乾杯の音頭からもう既に長針が2周もしていた。微かに揺れる長い睫毛や、控えめに空いた口、無防備な首に悪戯したいと酒が回っているからか、悪い事を考えてしまう、そんな自分は押し殺して少し癖のある髪を撫でた所で不自然に並んでいる酒の缶とジュースの缶が置いてあるのを見つけた。
「なるほど、」
全てのピースが組み合わさった様な快感を覚える。きっと自分の缶と僕の缶を間違えて飲んだのだろう。気をつけないとな、と自分に言い聞かせながら、この少量で潰れてしまうのか、と少し庇護欲が浮かぶ。ベットで寝かせようと抱えた時の身体の軽さも相まってその気持ちはさらに大きくなった。久しぶりの2人での呑みがこの様に終わって少し残念な気持ちもあるが、ほぼ初めての酒に潰れてしまった恋人を無理に起こすなんて無慈悲な事も出来なかった。別に明日の朝も一緒なのだ、今は寝かせてやろうと、そのまま寝室に足を運んだ。
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で、今の状況である。少し赤みがかかった頬が、酔っているのか、先程までの爆睡は演技だったのか、何がしたいのか、思考が読めず混乱する。
「おらふくん」
得意げな表情が一変して、悲しい様な不安げな様ななんとも言えない表情で名前を呼ぶ。どうしたのかと上体を起こし、向き合えば、少し戸惑う様に話し始めた。
「自分、酒飲まないからさ、2人で呑む時、いつもおらふくんが潰れちゃうじゃん。だから、その、寂しくて。今日は俺が、間違えて酔って潰れたフリすればいいじゃんって」
なんだそれ、なんなんだ、可愛すぎる。余りの衝撃に喉奥がじくじくと焼けるように痛い。ごめん、と赤かった顔をさらに真っ赤にした彼に、言いたい事が山程浮かんできたが全て吹き飛んでたった一つの単語を呟くしか出来なかった。
「好き」
返事になってないって、と怒った彼は耳まで真っ赤で、よく分からないけどただ抱きしめたくなって、ぎゅうと抱きしめた。僕の中にすっぽり収まる彼は可愛くて愛しくて、あまりにも弱々しくて、丁寧に、花よりも蝶よりも丁重に撫でた。つい勢いあまり小指の腹がかすかに首に触れた瞬間、ぴくっ、と腕の中の彼が動いて、小さく吐いた吐息がどこか色っぽくて、もう抑えきれなくなって、自分の中の何かがぷちんと切れた。
「怒らないでね、」
コメント
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ほんとに尊い!もーやだっ尊すぎるて
おらおん最高です ...😭
( ゚∀゚):∵グハッ!!(尊死)この2人を壁になって見守りたい…!