テラーノベル
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真っ白な靄の中
ただ前に歩み続ける
「ロウさん」
声はなく、それでも真っ直ぐ歩き続けた
そして空気が冷たく変わる
『‥‥邪魔ナ奴ダ‥‥』
あの声だ
なんだ、俺が邪魔なのか?
「お前が犯人か?正体を現せっ!」
『‥‥‥‥アト二回‥‥アト二回‥‥』
「二回?何がだ?」
俺がそう問うと一気に空気が澱んだ
重い‥‥そして強い‥‥‥‥
息を吸うのもままならない
『‥‥アレハ私ノ物。モウ少シデ‥‥』
「アレってなんだよ‥‥くそっ!」
苦しくて足が出ない
『アト二回デアノ者は私の妻トナル‥‥アト少シデ‥‥‥‥』
目の前にふわりと何かが現れる
上半身裸の男
その体は白く屈強
胸元には勾玉がかけられていた
その勾玉が粉々に砕け散る
そして辺りが暗くなり、その体も黒くなった
体の繋ぎ目が黒く光り、その者が動くとシューという音が聞こえた
これがロウさんが言っていた音なのか?
『ヤット連レテ帰レル‥‥』
「お前‥‥まさか‥‥‥‥」
暗闇に包まれる手をその男に向け伸ばす
でも息がもう持たない‥‥
「ハァァッ!‥‥ゲホゲホっ‥‥ハァハァ‥‥」
俺は大きく息を吸って肺の奥まで空気を送り込んだ
酸素が足りないからか、まだ手が痺れてる
そしてこの感じ‥‥
まだ居る!
重力を感じる体を起こし、ロウさんを見た
ロウさんの布団が膨らんで‥‥
これは‥‥
徐に布団を掴み投げ捨てる
この中にさっきの男がいるのか!
布団がなくなりそこにいたのはロウさんだけ
ただ‥‥
ロウさんは歯を食い縛り、シーツを固く掴んでいる
そして脚を広げ‥‥‥‥
俺には見えない何かがロウさんを‥‥
何かじゃない
さっきの奴だ!
俺は体を乗り出しロウさんに手を伸ばす
しかし何かしらの力に弾き飛ばされてしまった
「っ痛‥‥‥畜生‥‥」
俺はそこに座り直り、指で印を結んだ
それを口元に近づけ息を吹く
『‥‥グヌッ‥‥‥‥ヴゥゥ‥‥』
弱まったけどこれじゃ無理か?
俺だって今まで勉強してきた知識がある
仏道、神道、陰陽道‥‥
なんだっていい
全部お前に試してやる!
経を唱え印を結ぶ
指を鳴らして手をかざした
「去れ!ロウさんから離れろっ!」
『‥‥ウグッ‥‥‥‥アト一回‥‥‥‥邪魔ハサセン‥‥』
「あ!‥‥おいっ!」
見えない何かが風を起こし、ロウさんの中に消えていった
「そんな‥‥嘘だろ‥‥?」
俺はロウさんに近付き体に触れる
ロウさんからは何も感じない
そんな事があるのか?
俺はロウさんに触れたまま印を結ぶ
そして静かに術を唱えた
微かに歪む顔
居る
やはり奴はこの中に居るんだ!
俺は経典を手に取りロウさんの胸に押し当てた
そしてまた術を口にする
「‥‥っ‥‥ぐっ‥‥」
『‥‥私ノ苦シミハコノ者ノ苦シミ‥‥』
「なにっ!」
俺が唱えるのを止めると声が消えた
どうするべきだ?
何をするのか考えるんだ!
コイツの正体はなんだ?
さっきの体‥‥
鱗みたいなものがあった
経典を押さえていた手をロウさんが掴む
ロウさんが俺を見ている
これはロウさんか?
「‥‥‥‥北見」
「‥‥ロウさん?」
「これは‥‥」
自分の体に乗せられた経典を見てロウさんが尋ねる
「ロウさん‥‥少し分かったかもしれません」
「俺の体はどうしたんだ‥‥?」
「痛みますか?」
「‥‥少し」
俺の呪文が効いてるんだ
この間になんとかしないと‥‥
俺は御神鏡を取りに行き、ロウさんの腹と着物の間に挟んだ
「ロウさん、今あった事話しますね」
「‥‥あぁ、全部頼む」
早くしないと‥‥
あと一度
ロウさんは眠らせない!
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コメント
2件
こや にも効いちゃうのか...北見~頑張って!どうなるのか続き楽しみにしています!