テラーノベル
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メバルは、その日も仲間たちの無茶を止めようとしていた。
「だからカキちゃん、道路の真ん中で鉱石を拾わないでってば!」
「だって見ろよ、あの石! 絶対ただの石じゃないって!」
カキはしゃがみ込み、車道の中央に落ちていた黒い石へ手を伸ばしていた。
その横では、ミステーがピラミッドの被り物をしたまま、空を見上げている。
「空が赤い。これは世界が焼き芋になりたがっている証拠だ」
「どういう証拠よ、それ!」
メバルが突っ込んだ直後、道路の向こうから大型トラックが現れた。
速度が異常だった。
車体は大きく蛇行し、フロントガラスの奥には、血走った目をした男が見える。手配中の凶悪犯――ニュースで何度も報じられていた人物だった。
「どけぇぇぇっ!」
男が叫ぶ。
トラックは、道端にいた六人へ向かって突っ込んできた。
「カキ!」
マサカゲが叫ぶ。
カキはようやく顔を上げた。しかし、足がすくんで動けない。
メバルは考えるより先に走っていた。
カキの腕をつかみ、道路の端へ押し出す。けれど、自分が逃げる時間は残っていなかった。
視界の端で、K-Tが動いた。
黒い髪が風に揺れる。K-Tは誰よりも速く前へ出て、防弾盾を構えた。だが、トラックの巨体は盾で止められるものではない。
「Kさん!」
アオノの声が聞こえた。
鈍い衝撃。
痛みは、ほとんど感じなかった。
メバルの体は宙に浮き、世界がゆっくり回転する。アコースティックギターの弦が切れ、甲高い音を残して道路へ落ちた。
「みんな……」
声が出たかどうかも分からない。
視界の中で、仲間たちの姿が遠ざかっていく。
最後に見えたのは、K-Tが倒れながらも、こちらへ手を伸ばしている姿だった。
そして、すべてが暗くなった。
◇
次に目を開けたとき、メバルは草原に立っていた。
青い空。白い雲。遠くには巨大な城。そして、隣には見慣れた五人がいる。
「……生きてる?」
メバルがつぶやく。
「生きているようだな」
マサカゲが答えた。
だが、その声を聞いた瞬間、メバルは凍りついた。
マサカゲの姿が、明らかに変わっていた。
長い髪。細い体。整った顔立ち。服装も、元のものとは違う白いローブになっている。
「マサカゲちゃん……女の子になってない?」
メバルが言うと、マサカゲは眉をひそめた。
「ちゃん付けはやめろ。私はマサカゲだ。状況を説明しろ」
口調は冷静だが、いつもの責任感の強いまとめ役とは違う。むしろ、命令されるのを嫌がるような、刺々しい性格になっていた。
「えっ、性格まで変わってる?」
カキが大声を上げた。
しかし、カキの姿も変わっていた。
赤い髪を長く伸ばし、細身の体に革鎧をまとっている。しかも、普段なら真っ先に洞窟へ飛び込むはずなのに、彼女は怯えたようにメバルの背後へ隠れた。
「こ、ここどこ? 怖いよ……」
「カキちゃんが怖がってる!?」
メバルは叫んだ。
ミステーは、ピラミッドの被り物を外していた。
その下から現れたのは、長い銀髪の女性だった。だが、性格は以前よりさらに奇妙になっている。
「私は今、非常に正常だ。だからこそ、世界のほうが異常だと思う」
「ミステーちゃん、元からそこそこ異常だったよ!」
アオノは、黒い長髪の女性になっていた。キーボードを抱えたまま、周囲を冷静に分析している。
「空気中に未知の魔力成分を確認。地球由来の環境ではない。異世界転移の可能性が高い」
「受け入れるの早くない!?」
そして、最後にK-Tが立ち上がった。
黒髪の短髪。紫色の瞳。見た目は以前とほとんど変わらないように見えたが、防弾チョッキの上から着ていた服は、黒い軽装の戦士服になっている。
K-Tは自分の腕を確認し、拳を握った。
「問題ない」
「いや、そこじゃないよKさん! 性別とか、性格とか!」
メバルは声を上げた。
だが、自分の声にも違和感があった。
高くない。
体を見下ろすと、そこには見慣れない男の体があった。胸元は平らで、手足も以前より大きい。アコースティックギターの代わりに、腰には見知らぬ片手剣が下がっている。
メバルは息をのんだ。
「……僕も、男になってる」
自分の口から出た言葉に、仲間たちが振り向いた。
しかも、胸の奥には以前のような親しみやすさがない。誰かを心配するより先に、状況を利用する方法を考えてしまう。
性別だけではない。
性格まで、逆転している。
そのとき、草原の奥から鐘の音が響いた。
城門が開き、武装した兵士たちがこちらへ向かってくる。
「異世界から来た者たちよ!」
先頭の兵士が叫んだ。
「魔王軍との戦争に参加してもらう!」
カキが震え、マサカゲが舌打ちする。ミステーは空を見上げ、アオノは兵士の装備を観察していた。
K-Tだけが前へ出た。
「断る」
「えっ、Kさん、即答!?」
兵士たちが槍を構える。
メバルは剣の柄に手をかけた。
逃げる場所はない。
戻る道もない。
しかも、仲間たちは別人のように変わっている。
そんな状況なのに、メバルの胸には不思議な高揚感があった。
元の世界で失ったものを、この世界では奪い返せるかもしれない。
「面白そうだね」
メバルは、以前なら絶対に言わなかった言葉を口にした。
K-Tが紫色の瞳でメバルを見る。
「メバル。何をする」
「決まってるでしょ」
メバルは剣を抜いた。
「この世界のルールを、僕たちで変えるんだよ」
その瞬間、空に巨大な文字が浮かび上がった。
『転生者六名、性別・性格反転済み』
さらに、その下へ新たな一文が表示される。
『元の世界へ戻る条件――仲間のうち一人を殺すこと』
草原に、沈黙が落ちた。
K-Takasaka
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コメント
1件
あー、面白かった! トラック異世界転生+性別&性格逆転って、設定の時点で既に熱いわ。しかも6人全員のキャラが一瞬で立ち上がってて、誰に感情移入するか迷うくらい。特にK-Tの「断る」即答と、メバルの最後の「面白そうだね」がガチで痺れた。性格まで変わると、同じメンバーでも新しい関係性が見えてくるのがいいな。 ただ、ラストの「仲間のうち一人を♡♡♡」は衝撃的すぎるわ……。続きが気になりすぎて寝られない。更新楽しみにしてる🔥