本質的に、真正面から人に甘えるのが苦手な翔太と、普段から口数が少ない俺は、付き合うに至るまでも大変だった。
先に気づいていたメンバーみんなをヤキモキさせ、パンク寸前にテンパってどう振舞えばいいかわからなくなってしまった翔太を泣かせ、抱きしめてどうどう、と宥めてから、ようやく俺のものになった。
今でも翔太は時々、『飼い慣らされた』という表現を使う。
口は悪いけど、俺を見つめるその目には昔から、嘘だけはないと思うから、翔太の中に、俺に恋する気持ちは間違いなく存在するのだと思う。
「で?これ、なに?」
「んあ。照って甘いもの好きじゃん…だから」
口を噤んでしまった翔太を見て、俺は頬が緩むのを止められない。目を逸らせて向こうを向いてしまった翔太を、後ろから抱きすくめた。
「俺のため?」
「………………」
耳が赤い。それ以上は聞かないようにしてぎゅっと翔太の体温を楽しむ。
赤くなった翔太のうなじが、目の前にあって、鼻を近づけ、匂いを嗅いでみた。
朝につけてから時間が経ち、薄れた香水の香りも、ここではまだ薫っている。
「やめ……っ///」
「今日、何かの日だっけ?」
「ハロウィン。なんか、お祝いしたくなって」
「ああ、そっか。俺、翔太の誕生日のことしか頭になかった」
「それはそれで嬉しいけど…っ///」
腕の中にすっぽり収まっている可愛い生き物は、まだあるぞ…と小声で言った。
◇◆◇◆
「え。何…?最高なんだけど」
翔太は、どこで用意したのか、黒い光沢のあるベロア地のローブを見に纏い、まるで映画の中から抜け出して来たような魔法使いの格好をしている。ローブの中にはフリルの付いたブラウスにリボンタイを締め、下は裾の膨らんだ可愛らしいパンツを履いていた。頭には三角帽。
「可愛い」
「そう?照のもあるよ」
そう言って渡してきたのは、全身すっぽり着るタイプのグレーの着ぐるみ。
「なにこれ?」
「狼。照にぴったりだろ」
「なんで俺が狼で…」
ご丁寧に大きなサイズで、着てみたらぴったりだった。
「うん。目つきも狼そのものだ」
満足そうに意地悪く笑う翔太を、抵抗するのも構わず姫抱きし、ベッドへと運んだ。
「うっわ…下ろせ〜!!!」
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いいねぇ良きすぎる😊💛💙