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他所で食べたものと、前に食べたボルシチ。何かが違うのだ。
—-優しさ。だろうか……?
いや、そんな訳無いな。
確かに、前。不可侵条約を結んだ時に食べたボルシチは主炎の手作りだ。
だが、敵となった今、俺にアイツが優しさを向けるとでも?
そんな事はゼロに近いだろ。
そんな事を自問自答しながら、昼ご飯を食べれば、あっと言う間に無くなる。
木のトレーを机の端に寄せて、パン屑が落ちていないか確認した。
その時だった。
視界の端に、見慣れていないようで、懐かしい気のする土色の塊が映った。
毛布か。
先ほど主炎が持ってきた毛布。
とっくの昔に焼き払われた思い出の物に酷く似ている。
高い椅子からそっと降りて、床にあるそれに触れた。
……温かいッ。
彼らのサイズに合わせてか、俺にとっては何倍にも大きく思える程の毛布。
それにはまだ、アイツの温度が残っている。
毛布をそっと拾い上げて、抱きしめた時、何かが弾けるように目が潤んだ。
「兄さん…」
声が無意識の内に漏れ出す。
初めて俺に温かさと優しさを教えてくれたのは、兄さんだった。
兄さんが俺に土に似た色の毛布をかけてくれた時だった。
いつも、こんな時にくる。
ヒュー、ヒュー…………。
増す咳の激しさと息苦しさ。体の震えは止まってはくれない。
苦しい程に温かい時ばかり。
俺は崩れるかのようにその毛布に身を委ねた。
苦しさのあまり、俺は気絶するかの如く眠りに就いた。