ある新聞記事に不可解な事件が載っていた、何やら洋風の家具などに死体が入っていると言うものだ。その記事を書いたそばかす顔、つまり、。詩軸矢太郎だ。
矢太郎は呆れていた、人の死を望むようにネタを探すお偉いさんや噂の種を求めては食いつくす、人の皮を
被った化け物の様な世間を軽蔑した。
そんなことを考えていた罰が下ったのか、矢太郎はこの世で一番と言っても良い位に嫌いな社交の場に引っ張られていた。よりによってこの社交場は記者たちが集まり、腹の探り会いが密かに行われるようだ。
矢太郎は着なれないスーツとやらに身を包み髪を弄られ、先の尖った革靴を履いた。
矢太郎はこの靴の先で人を殺せるのでは?と変な考えが頭をよぎった。会場の少しお高いホテルに着き、同業者と思われる者達が次々に会場に集まっていた。
そこにひときわ目を引く薄桃色の刺繍が施された白いドレスで着飾ったモガ(モダンガール)と言う風貌の女性が入って来た。
矢太郎と同じ位か、少し歳上かと思われるその女性は凛とした態度で話掛けた男性記者に接していた。
そして親睦会と言う名の腹の探り会いがはじまった。
矢太郎は洋風家具の事件に二度も出くわしたことで注目の的だったが、持ち前の愛想笑いでのらりくらりと交わしていた。
ほとほと疲れて会場の隅にあるやや大きいソファーに腰掛けた、何処か違和感が気になったがそんなものか、と考えを放棄した。
ボーイがドリンクを持って来た。中性的な好青年と言ったところか、そのボーイからドリンクを受け取り飲む前に踏みとどまった。
ボーイに気を取られていたが、朱色のこれまた大きな金魚が会場に集まっていた。
すると、いきなり男がうめき声を上げた。ボーイから受け取ったと思われるドリンクを飲んだ者が泡を吹いて倒れたのだ。
辺りを見渡すがボーイな姿は無い、
すると、ひときわ鮮やかな朱色の金魚がこちらに泳いできた。
すると金魚はソファーに来るとやはりソファー周辺を円を描くように泳いだ。
最初に座った時から違和感を覚えたが、違和感から確信に変わった瞬間だった。ソファーを何とか解体すると怪しげな紫色の花が敷き詰められ、そこに綺麗な女性の遺体が眠ッているように横たわっていた。
周りは倒れた男性とソファーの遺体で大騒ぎだった。
当分記者はネタに困らないだろうなと他人ごとのように考えたのだ。
矢太郎はこの時この紫色の花が猛毒のことを知らなかった。