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狭山さんは即通話に出てくれた。
「あかりさん!?大丈夫ですか、無事ですか!?」
「あ、あの、とりあえず大丈夫です。どうしてホテルわかったんですか?」
「わかんないですよ! 前、コンビニ入ってるホテルは雲隠れにいいって話したの思い出して、そういうホテルに片っ端から連絡して言付け頼んだんです!」
え、じゃあ私のいる場所、狭山さんは詳しくはわかんないんだ。
そう思うと、居場所を改めて言うのが怖くなった。
「その、あの、私の場所の前に、朝日さんが狭山さんのファンってことがよくわかんなくて、詳しく聞きたくて……どういうことなんですか?」
「あ、そ、そうですよね、意味分かんないですよね!」
狭山さんは詳しく話してくれた。作家は不幸じゃないと面白いものが書けない教のこと。それにハマってる上、ネットストーカーばりに佐山さんのネットでの活動を追い回す佐山さんのファンアカウントがあること。そのファンについて狭山さんは前々から千歳さんと和泉さんに相談してて、今回の朝日さんのあれこれで、「もしかして」と感づいた和泉さんが、あの鹿島もみじちゃんに依頼して、そのアカウントが朝日さんのだと特定したこと。
「どんなアカウントなんですか? 教えてください、見たいです」
「う……」
狭山さんは、なぜか言葉に詰まった。
「あ、あの……だいぶエロアカウントなので……あかりさんが見るのは適さないかと……」
「私もう成人だから、見ていいはずですよ?」
「それはそうなんですけど……いやでも今回のこと僕側が原因だからちゃんと説明しないのも……あー! もう仕方ない!」
狭山さんはヤケクソのように叫び、それからこう言った。
「「裏垢メス男子」でTwitterをユーザー検索したら多分出ます」
う、裏垢メス男子?
「ちょ、ちょっと待ってください」
タブレットで通話してたので、通話画面をはじによせて、Twitter(X)を開いて検索してみた。あった。……わ、わーお……。
「な、なんかすごいですね……」
「その……そのアカウント詳細に見たらわかると思うからもう言いますけど、そのアカウントが粘着してる「エロ茶坊主」って言うのが僕の別名義アカウントで、エロを書いてる名義です……すみません……」
「エロを!?」
え、狭山さんちゃんとエッチなこと考えられる人だったの!?
探して飛んでみたら、最近のツイートはあんまりないけど、エッチなキャラについてあれこれ語ったりエッチな絵をRTしてたりして、私はまた、わーお、となった。
「さ、狭山さん、エッチなのも書いてたんですね……」
「書いておりました……まあ僕も大半の男性に漏れずそういうのは好きなので……」
「そ、そうなんですか……」
え、じゃあ私に何もしなかったの、すごく我慢してのことだったんだ……。
狭山さんはとりなすように言った。
「いや、その、問題はですね、僕や朝日さんがエロツイートばっかしてたことじゃなくて、朝日さんが無理にあかりさんと結婚することで僕の人生を邪魔しようとしたことですからね」
ま、まあ、それはそう。
「朝日さん、エロ自撮りツイート自体は別に、法を犯したわけでもなんでもないですから。売春系のことは全くやってないみたいですし」
「でも、これ朝日さんは、本当は男の人が好きなんじゃないですか?」
「うーん、全然そうとは限らなくて……女装コス趣味の既婚子持ち男性とか普通にいますし。あとは、性別問わず両方行ける人もたくさんいるし」
よ、世の中にはいろんな人がいるんだな……。
「えーと、朝日さんのことはよくわかりました、ありがとうございます……」
わかったけど、どうしようかな……わたし、何もかもすっぽかして逃げたから、また周りの人の前に出ていきたくないな……相手が狭山さんでも、あんまり場所言いたくない。
ていうか、朝日さんってこんな自分勝手で周りを振り回すような人で、そんなのと私を無理に結婚させようとしてたおじいちゃんやお母さんやお父さん、何なの?
なんか、すごく腹立ってきた。それに悲しくなってきた。
「なんか、私のいる場所、どんどん言いたくなくなってきました。私の家族、そんなとんでもない人と私を無理に結婚させようとしてたんですよ」
むかつきと悲しみで気持ちがぐちゃぐちゃになってきた。狭山さんと和泉さんがいなかったら、私、何も知らずに無理やりそんな無茶苦茶な人と結婚させられてたんだ。
ていうか。
私は今思いついた。やろうと思ったら、私不在でも私と朝日さんを結婚させることはできるじゃない。婚姻届、私の名前を別の人が書いてお役所に出しても、窓口の人は私の名前私が書いてないってわからないじゃない!
それに気づいて、私は泣きそうになった。
「狭山さん、でもどうしよう、おじいちゃんたちがその気になったら私今でも朝日さんと無理やり結婚させられちゃう……」
私は、必死で抑えようと思ったけど、涙声になってしまった。
狭山さんのあわてた声がした。
「え、どういうことです!?」
「だって、婚姻届、私の欄勝手に書いて出したって窓口の人わかんないから、お役所受け付けちゃうじゃないですか!」
「さ、流石にそんなことは……ご家族心配してましたし……」
「でも、朝日さんだけでも、そういうことできちゃうじゃないですか!」
「……それは、そうですね……」
私は、もうわけわからなくなって、泣き出してしまった。
「朝日さんとは嫌です! 狭山さんがいいです! そうじゃなきゃ場所言いません!」
「…………」
狭山さんは困って黙ってしまって、私はしばらく泣いていた。
「……あかりさん、ひとつ考えがあるんですが」
しばらくして、狭山さんの静かな声がした。
私は、まだしゃくりあげて、まともな返事ができなかった。
「な、な、なんです、か?」
「今、僕と籍入れてくれませんか?そしたら、朝日さんがあかりさんと無理やり入籍なんて、もう絶対出来ませんよ」
え……。
びっくりしすぎて、涙が止まってしまった。
狭山さんは言葉を続けた。
「流石に、僕があかりさんの名前勝手に書くのよくないので、あかりさんの名前書くだけにしといた婚姻届用意したら、あかりさんの居場所教えてほしいんですが」
びっくりしすぎて、頭が真っ白になってしまった。
でも、落ち着いて検討したら、それはとてもいい案だと思った。そしたら、私、朝日さんと結婚は避けられるんだ。狭山さんと結婚できるんだ。
私は言った。
「わ、私の名前だけ、書かないでおいてくれた婚姻届の画像送ってくれたら、居場所教えます」
「わかりました、居場所教えてくれたら迎えに行きます」
「こ、婚姻届って、何が必要ですか?」
ハンコいるんだったら、困る。
「えーと、ですね……。ハンコはいらないんですけど、証人のサインが二人分いるんですよ」
「か、書いてくれる人、います?」
ど、どうしよう、その辺の人に頼むってわけにも行かないし。
狭山さんは言った。
「証人、千歳さんと和泉さんにお願いできないか頼んでみます。あの二人に、今回の件で僕たちの味方になってほしいって頼もうと思ってたんですよ。で、僕たちの結婚の証人になってもらうっていうのは、周りの人に、「この二人は僕たちの味方です」って示すいいやり方なんじゃないかと思います」
そ、そっか! 千歳さんが味方になってくれるなら、かなり心強い!
「じゃ、じゃあ、それでお願いします。狭山さんの名前と、証人に千歳さんと和泉さんの名前ある婚姻届の画像送ってくれたら、居場所教えます」
「わかりました、待っててください」
狭山さんは、力強く言った。
コメント
1件
うわあ、このエピソード、めちゃくちゃ展開が加速しましたね……! 狭山さんにエロ名義があった衝撃、そして「籍入れませんか」の提案。あかりさんの混乱と涙がすごくリアルで、感情移入しながら読みました。婚姻届の証人を千歳さんと和泉さんに頼むってところも、ちゃんと「味方」の可視化になってて、設定の上手さを感じます。続きが気になりすぎる……!
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485