その日は、しつこく風が吹いていた。
教室は三階。毎日重い足を上げて、そこへ向かう。
そしていつも、登る段数が減るに近づいて、心臓は鈍った鳴き声を出す。
戸を引くと、いくつかの視線。
その中には忌むような目線が、静かに私のうなじをなぞる
席に着くと当たり前のように、虫の死骸が置かれていた。
それを見た私の淀む表情に、教室のどこからか笑う声がする。
私は生気がごっそりと抜けた亡骸を睨む。
萎れたからだは惨めで、凹んだアタマは元に戻らない程に歪んでいる。
あなたは最後に何を見たの。
あなたは命が終わって、なにか始まってるの。
薄茶色の机の上に小さくたたずむ姿は、どこかしおらしかった。
私は虫を食べた。
すると女たちが、怖気付いたのがわかった。
制服は平等を表す。私はこの平等が憎い。
制服を買うお金が無かった私の家庭には、学校が寄付を募り、集まった資金により制服が渡された。
いわゆる公平だ。これが。
なんと皮肉なことだ、ひとつの平等を叶えるためには、望んでもない公平の土台を、私には寄せてもらえるのだ。
そして、その平等も時間の問題。
ひとつのラインを定めることは、逆に、少しのズレを際立たせる。
洗濯もできず、縫えもしない穴が制服に刻まれていき、それは次第に増していく。
ほら、平等なんて私で崩れた。
たやすいでしょ?思ったよりもずっと。