テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第6話.国見の嫉妬
体育館の前。
及川先輩が春竜の肩に手を置いたまま微笑んでいる。
その光景を見ていた国見ちゃんの目が、ほんの一瞬だけ鋭く光った。
「……離してください」
低い声。春竜は驚いて顔を上げる。
「え? なにを?」
とぼけたように笑う及川先輩に、国見ちゃんは一歩踏み出した。
「……春竜ちゃんが困ってるの、わからないんですか」
その言葉に春竜の胸はドクンと高鳴った。
国見ちゃんが、こんなにはっきりと感情を出すのを初めて見たから。
及川先輩は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐににやりと笑う。
「へぇ~。国見ちゃんにしては珍しく強気じゃん。……もしかして、嫉妬?」
「……そうかもしれません」
国見ちゃんは淡々と、しかし揺るぎない声で言った。
「っ……!」
春竜は息をのむ。
耳まで熱くなり、何も言えなくなる。
及川先輩は少しだけ目を細め、春竜と国見ちゃんを交互に見た。
その笑顔の裏には、どこか本気の色が混ざっている。
「なるほどねぇ……。これは面白くなってきた」
その場の空気が張り詰め、春竜は心臓を抑えながら二人の間で立ち尽くす。
――そして、三角関係はもう、後戻りできないところまで進み始めていた。