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第7話.迫られる選択
国見ちゃんが感情をあらわにした翌日。
春竜は一日中、心がざわついていた。
黒板の文字も頭に入らず、ノートにはペンを持ったまま止まった線だけが残っている。
放課後、体育館での練習。
部員たちが帰り支度をしている頃、及川先輩が春竜を呼び止めた。
「春竜ちゃん、ちょっといい?」
にこやかに微笑みながらも、その瞳は真剣だった。
「俺、本気で言うよ。……俺は春竜ちゃんのことが好き。だから、俺のそばにいてほしい」
突然の告白に、春竜は目を大きく見開いた。
耳まで熱くなるのを自覚しながらも、声が出せない。
そこに、遅れて荷物を持ってきた国見ちゃんが現れる。
二人の様子を見た瞬間、国見ちゃんは立ち止まり、静かに口を開いた。
「……俺もだ。俺も、春竜ちゃんが好き」
短い言葉。
けれど、その声音は揺るぎなく、春竜の胸を強く打った。
「……!」
体育館に残されたのは三人だけ。
視線が絡み合い、張り詰めた空気が流れる。
「春竜ちゃん」
「春竜ちゃん」
二人同時に名前を呼ばれ、春竜は息を呑んだ。
――逃げ場なんてない。
二人の想いがぶつかり合った今、春竜はもう選ばなければならない。
その心臓は、誰に向かって鳴っているのか。
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