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その日――
戦いの合間、少しだけ気が緩んだ瞬間だった。
本泉莉奈が、なにげなく魔法陣を展開する。
「えっと……これ、解除用の――」
ピカッ。
「……あ」
光が収まったあと、
そこに立っていたのは――
小さくなった 中島由貴 だった。
⸻
中島由貴(幼女)
「あたし……おつかい、する!」
元気よく手を挙げる幼女・由貴。
その場が、静まり返る。
……そして。
19人の視線が、一斉に本泉莉奈へ。
じーーーーーっ。
本泉莉奈
「え? な、なーに??
私、何かした……?💦」
その沈黙を破ったのは、
腕を組んだ 吉岡茉祐 だった。
吉岡茉祐
「ふーん……
そんな魔法、覚えてたんだね……」
にこっ(圧)
「あとで、ちょっとだけお話ししよっか」
本泉莉奈
「……はい……」
※短い・優しい・でも逃げられないお説教。
⸻
一方その頃。
おつかいを任された幼女・由貴は、
メモを大事そうに握りしめて歩いていた。
その様子を――
物陰から、
野口瑠璃子
磯部花凜
上田麗奈
レオニの3人が、そっと見守っている。
野口瑠璃子(小声)
「……可愛い……」
磯部花凜
「転ばないでね……」
上田麗奈
「……危なくなったら、すぐ出るわ」
⸻
中島由貴(幼女)
「えっと……どこだろ……
パン屋さん……」
メモと街を交互に見ながら、きょろきょろ。
そこへ、街の人が声をかける。
街の人
「おや? 嬢ちゃん、おつかいかい?」
中島由貴(幼女)
「うん!」
街の人
「偉いな~」
頭をなでられ、
由貴はにぱっと笑う。
中島由貴(幼女)
「あのねあのね、
パン屋さん、どこですか?」
街の人
「それなら、ついておいで」
手を引かれ、
無事にパン屋さんへ。
⸻
……ところが。
中島由貴(幼女)
「……あれ?」
手の中を見て、
顔が青くなる。
「……メモ……ない……」
きょろきょろ。
胸がぎゅっと苦しくなる。
泣きそうになる、その瞬間――
「どうしたの?」
店の奥から、店員さんが駆け寄ってきた。
店員
「迷っちゃった?」
由貴は、こくんと頷く。
中島由貴(幼女)
「……パン……買うの……
でも……何のパンか……」
店員さんは、しゃがんで目線を合わせ、
優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ」
「一緒に思い出そう?」
その様子を見て、
物陰の3人は、そっと息を吐いた。
野口瑠璃子
「……よかった……」
磯部花凜
「この街、優しいね」
上田麗奈
「……声がなくても、
人はちゃんと繋がれる」
⸻
――こうして。
世界を救う戦いの合間に起きた、
ちいさな、ちいさなおつかい事件。
幼女・由貴は、
ちゃんと“守られながら”、
一歩前に進んでいた。
(※なお、このあと無事におつかいは成功し、
本泉莉奈は二度と軽率に幼児化魔法を使わなくなったという……)
もとに戻る瞬間(※二度目はない)
夕暮れ。
おつかいも無事に終わり、場が落ち着いたころ。
本泉莉奈は、魔法陣の前で深呼吸していた。
「……えっと……解除、解除……」
指先がきらりと光る。
「戻ってきてください、元の由貴ちゃん!」
光がふわっと広がり――
⸻
ぽん。
そこに立っていたのは、
すっかり元に戻った 中島由貴。
「……あ」
一瞬、きょとん。
それから、自分の手や足を見て。
「……戻った」
周囲から、安堵の空気が流れる。
野口瑠璃子
「よかった……!」
磯部花凜
「元気そうだね」
上田麗奈
「副作用も、なさそうね」
由貴は少し考えてから、にこっと笑った。
「うん。
でも……」
ちらっと莉奈を見る。
「……あのサイズ、視点が新鮮だった」
本泉莉奈
「えっ」
目を輝かせる。
「じゃあ……」
一歩前へ。
「またやっていい?」
その瞬間――
空気が、凍る。
⸻
腕を組んだ 吉岡茉祐 が、
一切の間を置かずに言った。
「ダメ」
即答。
一切のブレなし。
本泉莉奈
「はやっ!?」
吉岡茉祐
「理由を聞く必要、ある?」
本泉莉奈
「……ないです……」
しゅん。
由貴は苦笑いしながらフォローする。
「まぁ……
おつかいは一回で十分かな」
莉奈、ぱっと顔を上げる。
「でもでも!
安全確認して!
全員同意して!
保護者つきで!」
吉岡茉祐
「ダメ」
二度目の即却下。
「魔法はね、
“可愛い”のために使うものじゃないの」
本泉莉奈
「……はい……」
その様子を見て、
みんながくすくす笑う。
由貴は、少しだけ照れながら言った。
「でも……
見守ってくれて、ありがとう」
その言葉に、
瑠璃子たちは顔を見合わせて微笑んだ。
⸻
こうして――
幼女化事件は、完全終結。
そして本泉莉奈は学んだ。
• 幼児化魔法は危険
• 吉岡茉祐の「ダメ」は絶対
• 二度目のチャンスは、ない
(※なお、莉奈は今でも時々
「もしも次があるなら……」と考えているが、
そのたびに背後から
「ダメ」という声が聞こえるらしい。)