テラーノベル
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1.
――ねぇ、魔理沙。
肌寒くなってきた冬口のこと。
一番夜空がきれいだった夜にお前は星を指さして言った。
「私が死んだら、あの星の隣に行くね。」
お前がさした指の先。
眩いくらいに輝いてたのは、オリオン座の左上の、ベテルギウスだった。
あん時のあたしは、何言ってんだ、と笑って取り合いもしなかったけれど。
ぶっきらぼうなお前が妙に素直に、嘘じゃないからね。ってこっちを見つめてた。
だって信じたくなかったから。
隣に行く、ってことは、霊夢が死ぬってことだろう?
思い返せばあの時が一番平和だったから。
お前の一言が際立って不気味だったんだ。
ちら、と横目で盗み見た横顔は、雲がかかったほのかな月明かりに照らされて柔らかく笑っていた。
あたしは幸せだった。
満たされてたんだ。
まぁ、多分こういうのは失わないと気付けないんだよな。
どれもこれも、お前ありきだった、なんて。
3.
あたしは知ってる。
お前が指さしたあの星は、530光年以上離れてんだ。
つまり、だ。
もしも霊夢が光の速さで進んでも、530年かかるんだ。
お前がベテルギウスの隣で胸を張って輝くとき。
それを目印にして進むあたしも、その星を眺めるあたしもいない。
そして、奇しくもベテルギウスの星言葉は”煌めくセンス”。
まるでお前みたいだよなって言ったから霊夢はあそこを目標にしたんだろうか。
でも。
どれだけ長く生きても、どれだけ魔法を極めたって、人間の身じゃ、お前をこの目で見ることは叶わないんだぜ。
こんなにあんまりな話もないよな。
――星になんて、ならなくてよかった。
生きたまま、隣にいてほしかった。
こんなに、好きなんだからさ。
いや。
お前がどこにいったとしても。
あたしが誰より先に迎えにいって名付けるよ。
そうだろ、霊夢。
儚く、強い博麗の巫女が。
無邪気な白黒の魔法使いが。
いなくなって、何年も何年も経ちました。
すっかり廃れて、人気のなくなった幻想郷の上空に目を凝らせば。
今でも、オリオン座の近くに、赤い星と金色の星が輝いています。
時に大きく揺らぐことがあっても。
なくなることは無いのです。
これから先も。
幻想郷ではまばゆいばかりの星の光は、外界ではかすかにしか見えません。
それでも。
見つけ出した外の誰かにも、なぜか伝わっているのです。
「あ。見て、あそこ。2つ、星があるよ。」
「あっちの赤いのは、夢見星。金色のは、恋色星だって。」
肉眼でみることは叶わなかったけれど。
生きたまま、また隣に並ぶことは叶わなかったけれど。
だけど、魔法使いは撃ち抜いてみせました。
距離も運命も、時間だってブチ抜いて、最愛の人の隣に並び立ってみせました。
これは、約束が紡いだ、はるか昔の御伽話です。
コメント
1件
ああ、もう、最初からやられたよ……「死んだらあの星の隣に行く」って約束が、530年後の今も輝き続けてるのが切なすぎる。ベテルギウスの星言葉を「煌めくセンス」って拾って、最後に「夢見星」「恋色星」って名付けるところ、魔理沙が霊夢を追いかけて時間も距離もぶち抜いたって描写に震えたよ。設定の緻密さと感情の熱が両立してて、本当に美しい話だった。