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title:ある男たちの話
subtitle:映画スペシャルズ妄想小話
映画スペシャルズの続編妄想垂れ流し劇場~!!
ネタバレ込みなので気をつけてくださいね。
作者の夢と希望と願望にまみれた超作者得な小話たちです。
基本的に熊城×ダイヤ、たまに桐生。
作者は誠に遺憾ながら根が腐りきっていますのでどうしてもそーいう雰囲気が匂うかもしれませんので苦手な方は遠慮なくお戻りください。
いちおうぜんぶ繋がってはいます。
妄想なのでいろいろ好き勝手捏造してますので。
熊ダイは一応ブロマンス濃いめの仕事仲間以上恋愛未満な感じを目指してます。
フィリピンにて、日常短編
北緯14度35分、東経120度58分に位置するマニラを首都におく島国、フィリピン。
そんなマニラ郊外に建ち並ぶ住宅街の一角の赤い屋根のこじんまりとした家から香ばしいかおりがただよっていた。時刻は午前六時。
キッチンからは色んな音、色んなかおりがする。フライパンで卵を焼く音。豆を挽いたコーヒーの香り。こんがり焼き色のついたトースターの音。
熊城はエプロン姿でキッチンに立っていた。熊城は風間組という日本のトップ2を張っていたヤクザ組織の組長の右腕であった。そう、右腕であったのは過去の話で今は違う。片の本条会を踏み上げ日本一を夢見た風間組長本人の裏切りによって風間組は崩壊し、今でも風間組の残党…旧風間組と、もともと信頼の厚かった熊城についた熊城組が対立している状況下、熊城は一時仲間と共にフィリピンへ身を潜めていた。なんやかんやで平穏な日々が過ぎてはいる。
さて、もうひとつ付け加えるなら今熊城が生活しているこの家にはもう1人の同居人がいることであろうか。
卵をかきまぜスクランブルエッグにしたものを2つの皿に取り分けた熊城は、まだ寝ている同居人を起こすべく部屋へ向かった。
「ダイ」
一応ドア越しに名前を呼んでみたが返事はない。同居人は朝にあまり強くない。こうやって比較的早起きの熊城が起こすのが日課みたいになってさえいる。
「ダイ」
もう一度、ドアを叩いて声を張り上げるが、やはり反応はない。
「飯できてるぞ」
沈黙。熊城は息をついて寝室へ踏み込んだ。
熊城の同居人、ダイこと、ダイヤはベッドの端で両膝をかかえ布団に埋まっていた。みのむしみたいだな。少し開けられた窓から流れ込んでくる風がダイヤの銀髪をなびかせる。
「ダイ、起きろ」
「……」
「朝だ」
「、んぅ……」
熊城が身体を揺らすと、布団の中でダイヤが身じろいだ。ちなみに熊城がダイヤをダイと呼んでいることに特別深い意味はない。
「ダイ」
「辰巳さん……うるさぃ……」
ぺし、と肩にかけていた腕をやわくはじかれる。これもちなみにだが、ダイヤが熊城を辰巳さんと呼んでいることに特別深い意味はない。いや、今まで熊城と呼んでいたのだがフィリピンで過ごすうちに熊城の名前を初めて知って、なんとなく呼び始めたら定着しただけである。初めてダイヤに辰巳さんと呼ばれた時、熊城が飲んでいたコーヒーをふきだしたのは今は関係ないので割愛しておく。
うんうんまだ眠たそうに布団を顔まで持ち上げてさらに身体を丸め込むダイヤに熊城は俺はお前の親か、と思った。それにしても、ダイヤに辰巳さんと名前を呼ばれるとなんだかむずかゆいような、おかしな気分になる。今までその名を口にするのがかつて愛していた妻か家族ぐらいだけだったからかもしれない。
「うるさくねぇ、朝だから起きろ」
少しだけ声が柔らかかったことに熊城は気づかない。
「やだ……」
「やだ、って子どもかお前」
熊城は思いっきり布団をひっぺがした。
「さむい、布団かえして、辰巳さん」
「だめだ、飯が覚める、起きろ」
「………」
「ダイ」
「………」
その後、約15分弱、ダイヤの沈黙の抵抗に対抗し続け、なんとか朝飯までもっていった熊城は朝から功労者である。
ー
とある日の夕方。キッチンに立っていたのはダイヤだった。
豆乳鍋。白米。スパゲッティサラダ。今日の夕飯の下準備。ダイヤの料理の腕はあじさい園にいた頃よりずっとあがっている。サラダにドレッシングを和えながらダイヤは口元に小さく笑みを浮かべた。
同時刻、熊城は自室にいた。普通に仕事中である。電灯に照らされ青白く発光するパソコン。デスクに広がり放題の書類。立て続けに鳴る電話。日本にいる偵察のための熊城組と旧風間組の対処について日々頭を悩ませている。本条会と手を結んだだけあって後ろ盾が大きい。数が圧倒的不利な中でどう処理すべきか。パソコンの小さな文字の羅列を追う目が悩まし気に細められる。
カチャ
不意にノックもなしに扉が開いた。ダイヤは基本ノックというものをしない。遠慮なしに入ってくるのだ。開いた扉の隙間からダイヤが顔をのぞかせた。
「辰巳さん」
熊城はスマホを耳に振り返る。
「なんだ」
「飯できた」
短いやり取り。しかし何故か妙に落ち着く。ダイヤの声がそうでもさせるのだろうか。
「ああ、分かった。すぐ行く」
「冷める前にな」
「分かってる」
ダイヤが引っ込みすぐ階段をおりる足音がくぐもって響く。熊城は少しだけ笑った。電話を終えて、パソコンをシャットダウンする。
昔なら想像もできなかった。誰かが、自分を呼びに来る生活。「飯できた」なんて言われる生活。ましてや、ダイヤに。初めて会ったあの殺伐とした雰囲気がなぜか懐かしく感じてしまう。フィリピンに来てからというもの、ダイヤは以前の冷徹さがうすれて随分やわくなったものだ。……何かの強い一撃で、粉々に散ってしまいそうなほど。
ー
とある深夜、熊城はぼんやりと椅子に腰かけながらフィリピンに来てからの生活を振り返っていた。これはもうだいぶ前。フィリピンへ来たばかりの頃。
夜中、熊城が水を飲みにリビングへ降りるとソファの横、つまりなんのカーペットもない床で、ダイヤが寝ていた。
「……おい」
なぜ。おかしい。自分の記憶が正しければ、ダイヤが部屋に入っていくのを見たのでベッドで寝てるはず。なのにダイヤはリビングの冷たい床に身体を投げ出していた。毛布すらない。
「お前、そんなとこで寝るな」
うっすらと目が開いているので完全に寝てるわけではなさそうだ。
「風邪ひくぞ」
「……いい……」
ぼそっと返される声。
「よくねぇ」
「別に…」
ダイヤがよくても熊城がよくない。熊城は半ば呆れて額を押さえた。
「頼むからベッドで寝ろ」
「いやだ」
「なんでだ」
「………落ち着かない…」
なるほど。腑に落ちた。たしかに熊城にとっては馴染みのあるフィリピンだが、ダイヤにとっては初めて来た知らない場所。元死線を共にした男との知らない生活。あじさい園とは何もかもが違う。寝慣れないベッド。だからか。
熊城はしばらく考えた。無理やり寝かすのはよくない、が、それはそうとここで寝て風邪でもひかれたらもっとたまったもんじゃない。
「仕方ねぇな………」
熊城は一向に動きそうにないダイヤを抱き上げた。それなりの覚悟をもって。いくら熊城が腕のたつヤクザだと言っても年齢に身体は追いつかなくなってくる。それにダイヤも殺し屋、という点をのぞけばただの成人をとっくに越した1人の男だ。身体にかかる負担はそれなりに覚悟していた、のだが。
「……軽すぎるだろ」
思わず呟く。一瞬、まだ幼すぎた娘を抱き上げた感覚が蘇ったほどだ。思わずダイヤをのぞきこむ。眠ったのか完全にダイヤは脱力していた。ちゃんと食べているのか。一緒に食事をしているがどうもダイヤがどれだけの量を食べていたか思い出せない。それにしてもだ、これはあまりにも軽すぎる。と、その時、ダイヤが身じろぎした。そして無意識か、熊城の胸元へ顔を寄せと落ち着くのかほっとしたように顔をうずめて穏やかな寝息をたてだした。
「……」
猫みたいだな。
熊城はため息を吐いた。
「……これからちゃんと食わせるか」
誰に言うでもなく呟く。そのまま階段を上がり、ダイヤの部屋のベッドへ運ぶ。毛布を掛けて、自分も部屋に戻ろうとして、熊城は不意に動きを止めた。このままいったらダイヤがまたリビングに出て床で寝るのではないか、と。そんな気がした。見事に心労である。逡巡した結果、熊城はダイヤを自分の部屋のベッドに転がし、隣に横になった。横にいたらもしダイヤが動いた時すぐに気づけるだろうと、そう思って。そう、それだけだった。ダイヤの髪を指ですかしながら熊城の意識もまどろみに沈んでいった。
ー早朝。ダイヤが目を開ける。
「……」
すぐに違和感を感じた。まず自分の部屋じゃない。そして、温かい。背中側が温かいのだ。誰かいる。その誰かはもちろん1人しかいない。顔だけ振り返るともちろん、熊城がいた。かなりの至近距離に。ダイヤの首元に顔がある。しかも、どういうわけか、完全に背中からホールドされているのだ。腰と腹ががっしり腕に抱かれておもしろいほど動けない。ダイヤも非力なわけではないのでかなり力をこめて腕をほどこうとしたが、それでも動かなかった。
「な、んで……」
ダイヤは普通に悔しくなった。これが体格差、筋力差なのか、と。半ば諦めかけたダイヤだがいやまだ、とついに最終手段の拳を握ったその瞬間だった。
ガチャと、突然扉が開いた。ダイヤは目をしばたたかせた。この家に住んでいるのはダイヤと熊城の2人である。鍵はしめていた。不法侵入者、という言葉が脳裏をよぎる。殺し屋とヤクザの家に侵入するなどなんとも運がない奴だなと現実逃避気味にダイヤは思った。
「兄貴、いますかー、」
しかし入ってきたのは熊城をよく慕う彼の側近、園田で。入室から数秒後。
「はぁあ゛あ゛あ゛!!!!????」
家中に、いや町中に園田の絶叫が響いた。まぁ無理もない。自分の大尊敬する人が元仕事仲間の男を抱いて(語弊)寝ていた(語弊)のだから。もう本当にしょうがないに尽きる。絶叫に熊城が強制的に覚醒する。ダイヤも耳をつんざく声量にびくっと眉をしかめた。そこはまさしく、カオスに他ならなかった。
ー
ダイヤは睡眠をひどく嫌う。正確には、睡眠によってみる夢、が嫌なのだ。
眠りに落ちるたび、繰り返す記憶。過去。すべてが彼にとっての悪夢になる。
「ッ……」
フィリピンに来てまだ息を張り詰めていたせいもあって、今宵の夢も最悪だった。壊滅させた財前の組織。あの時の記憶がこびりついて消えない。消したのに、記憶の中の財前は未だダイヤを追い続ける。明香が泣いている。ダイヤの人生はすべて彼女のためだった。だが明香の家族を奪ったのはほかでもないダイヤ自身。この事実はダイヤが死んでも何も変わらない。明香が泣いている。ダイヤに向かって叫ぶ。どうして、と。どうしてパパとママを殺したの、と。どうして、それが、仕事だったから。報酬が良くて、それで、。母親の笑った顔が思い出せない。ダイヤが知ってる母親の顔は自分のバレエを厳しく指導する笑顔のない顔で、愛はあった、あったけれど、あの時の自分にはまだ苦しすぎて、最後はあっけなくて、車に吹き飛ばされた身体はもう二度と動かなかった。ただ、真っ赤な液体だけが広がっていた。母親が言う。どうして、と。どうして母さんの言うことがきけないの、と。どうして生きてるの、と。
「………っ、ひゅ、…っぅ、」
途端に呼吸が乱れだした。苦しい。息ができない。目を開けても、夢と現実の区別がつかなくなる。胸元のシャツを搔き乱しす。口元を覆う手がかたかたと震える。どうして、だろうか。どうして俺はまだ生きてるんだろうか。財前はもういない。もう明香に及ぶ脅威はない。それでも、もう明香とは一緒にいられない。いる資格なんてもとからなかったけど、せめてもう少し大きくなるまでと自分に言い訳して。結局明香には真実を告げてしまったけれど。生きたいとは思わない。死にたいとも思わない。生きる理由も死ぬ理由もない。だから、そう、ダイヤは死ぬ理由が欲しかった。
その時、
「ダイ」
自分を呼ぶ低い声がかすかに聞こえた。熊城だった。
「ダイ、こっち見ろ」
ゆっくり、たてた膝にうずめていた顎をすくわれて、暗闇の中で熊城と視線が重なる。
「そんなに吸うんじゃない、ちゃんと吐くんだ」
一緒に呼吸をする。焦らない。責めない。ただ隣にいる。背中を不器用にさする手があたたかい。
「大丈夫だ」
その言葉に正直根拠なんかない。それでも。
「ここはフィリピンだ」
静かな声。
「財前はいない」
ダイヤの震えが少しずつ収まる。
「お嬢も無事だ」
呼吸が徐々に戻っていく。
「……」
しばらくして、浅く深呼吸を繰り返しながらダイヤは小さく呟く。
「…辰巳さん」
「………なんだ…」
「……寝れるまで、いて」
熊城は少しだけ目を細めた。
「最初からそのつもりだ」
部屋の明かりは消えたまま。窓の外では南国の夜風が揺れている。ダイヤはようやく目を閉じる。今度は悪夢を見ないように。その隣には。何も言わずに寄り添う熊城がいた。
今日もまた、夜が明ける。
つづく。
コメント
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読み終えたよ〜!!😭💕もうね、冒頭の朝の起こし合戦からエモすぎる!!「飯できてるぞ」→無視からの布団はがし→15分抵抗、この流れだけで熊城の滲み出る優しさとダイヤの頑固さが伝わってきて最高…!!「ダイ」って呼ぶ呼び方もなんかじわじわくるね、馴染んでる感じがしてさ。それに「飯できた」って言いに来るダイヤとか、床で寝てるのを抱き上げる熊城とか、日常のひとつひとつが尊すぎて胸がぎゅうなる🥺💕悪夢のシーンで「最初からそのつもりだ」って返す熊城、マジで男前すぎるでしょ…!関係性の変化がじんわり沁みるお話でした、続きも楽しみにしてるよ〜🌸