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title:ある男たちの話
subtitle:映画スペシャルズ妄想小話
映画スペシャルズの続編妄想垂れ流し劇場~!!
ネタバレ込みなので気をつけてくださいね。
作者の夢と希望と願望にまみれた超作者得な小話たちです。
基本的に熊城×ダイヤ、たまに桐生。
作者は誠に遺憾ながら根が腐りきっていますのでどうしてもそーいう雰囲気が匂うかもしれませんので苦手な方は遠慮なくお戻りください。
いちおうぜんぶ繋がってはいます。
妄想なのでいろいろ好き勝手捏造してますので。
熊ダイは一応ブロマンス濃いめの仕事仲間以上恋愛未満な感じを目指してます。
ある仕事について@フィリピン
フィリピンに来て数か月が過ぎようとしていた。
ダイヤは朝から不機嫌だった。熊城はかすかに殺気まで帯び始めたダイヤの視線をものともせずコーヒーを嗜み、桐生に至ってはソファでポテトチップスをつまんでいる。
「なんで俺まで」
「仕事だからだ」
「断る」
「家族総出で行かんとならん」
「俺はお前の家族じゃない」
「俺が父親でダイヤと桐生が息子だ」
「話を聞け」
仕事、そう、熊城が突然言い出したからだ。説明もないしついでに拒否権もなかった。結局逃れられず、そして今、ダイヤは高級ブティックの試着室で立たされていた。ここは熊城のお得意先らしいがダイヤはそんなこと知らんし関係ない。
「……帰りたい」
心からの本音だった。
熊城と桐生は先に着替えさせられていた。桐生の灰色の洒落たスーツ姿は意外と様になっている。熊城も慣れ切った様子で袖の調整を言づけている。問題はダイヤだった。ダイヤを取り囲むスタイリストたちはみんなして目を輝かせている。
「この方すごいですねぇ!」
「素材が最っ高なんですけど…♡」
「脚長ーい!」
「モデルさんですか?」
「違う」
即答する。ダイヤはモデルとかいう華やかな職業についた覚えは一切ないしなんなら殺し屋である。ダイヤはいかにも不機嫌ですといった態度で答えるもスタイリスト達はからからと軽く笑い飛ばす。ダイヤはこうみえて表情にでやすい。ダイヤは着せ替え人形になった気分だった。今なら着せ替え人形の気持ちがよく分かる、そんな気さえした。
ようやくコーディネートが終わって続いてと、鏡の前に座らされる。顔も髪も好き勝手にされる。もうダイヤは抵抗しても無駄だと悟るほかなかった。メイクを施されていくダイヤの傍に熊城が寄ってメイクマンに話しかける。
「そいつの頬の傷も隠せるか」
「はい、できますよ」
「じゃあ頼む」
頬にはしる傷痕がコンシーラーで消えていった。
ー
小一時間後。ようやく準備が終わったようだ。カーテンから出てきた桐生に店員達が拍手する。桐生は気恥ずかしそうにに眉をひそめた。
「やめろって」
「似合ってますよー!」
「そういうのいいから」
本気で照れている。そんな桐生を満足そうに見ていた熊城がふと後ろを見る。もう一方の試着室のカーテンが開いた。そして、その場が一気に静まり返った。
「ダイヤさんはいりまーす」
カーテンの奥からダイヤが襟元をいじりながらこちらに向かってきた。
身を包む黒のタキシードには余計な装飾はなく金糸の刺繍というシンプルなもので、しかし身体のラインが綺麗に出ていて細身のシルエットが際立っている。肩幅、腰、長い脚、首筋、全ても無駄なく整っていた。そしてぼさついた銀髪は後ろに流しなでつけられて熊城が頼んだメイクによって頬の傷は消えている。そのおかげか、元々持っていた整った顔立ちがそのまま出ていた。
「……」
誰も喋らない空間にダイヤが不機嫌そうに首を傾げて熊城を見やる。数秒、十秒、さらに数秒。
「…、なに」
ダイヤが声を発する。するとスタイリスト含め、店員達が一斉に我に返った。
「え、かっこいい!」
「綺麗!」
「映画俳優みたい!」
「絶対モテますよ!」
ダイヤの眉間の皺が深くなった。しかしもはやそれですら絵になる。ダイヤを見たまま黙っていた熊城がぽつりとこぼした。
「お前、綺麗だなぁ…」
しみじみと。本当にしみじみと。ダイヤが固まる。桐生は思わず吹き出した。
「……気持ち悪い」
「本音だ」
「なおさら気持ち悪い」
「失礼だな。いや、でも…、ほんとうに綺麗だ」
「熱でもあるのか」
「ないな」
「なら眼科に行け、歳で目がおかしくなってる」
「俺の視力は両方ともAだ」
「知るか」
熊城は平然としていた。だが目だけは少し柔らかい。傷を隠したダイヤを見るのは珍しいのだ。普段は無精髭こそないが、どこか荒んだ空気をまとっている。今はそれがない。年相応の青年に見えた。いやむしろ少し若くさえ見える。
本気で綺麗、綺麗とダイヤを褒めちぎる熊城に桐生の笑いが止まらない。
「熊城、お前ダイヤのこと口説いてんのか?」
「違う」
「いや口説いてんな」
「別に口説いてない。綺麗だと言ってるだけだが」
「それが口説いてるってんだよ」
ダイヤは本気で日本に戻ろうかなと思った。
ー
その日の夜。潜入先のパーティー会場は巨大なホテルだった。豪華な噴水。音楽隊たちの盛大な生演奏。煌びやかに会場を彩るシャンデリア。海外の富豪や実業家が大勢集まっている。完全な社交界。裏社会の大物達の集まりにもうってつけな喧騒。熊城のお得意様案件だった。対してダイヤは騒がしいのは苦手だった。いやだって普通にうるさいしまぶしいし。
「帰りたい」
「我慢しろ」
熊城がぶすくれているダイヤを小突く。
「こんなのお前だけでよかっただろ」
「このパーティーは家族総出出席が条件だ。だから今夜だけお前らは俺の息子だ」
「帰りたい」
「情報収集してからな」
パーティーが始まって間もない頃、すでに人々の視線はダイヤに集まりつつあった。本人は気付いていない。ダイヤは殺気以外には鈍感である。ダイヤが周囲の目を引くのも無理はない。
整った顔に洒落た黒のスーツ。無意識に伸びた背筋。そしてどこか近寄りがたくも魅惑的な雰囲気。これでは目立たない方がおかしい。年齢も、性もとわず、多くの目がダイヤに引き寄せられていく。
最初に話しかけてきた猛者はブロンドを揺らし胸元をあからさまに強調した女性だった。歳はだいぶ若い。流暢な英語でダイヤの腕をひいて、話しかけてくる。
「Nice to meet you. (初めまして)」
「…Thanks. (どうも)」
「Do you like parties? (パーティーはお好き?)」
「I hate it. (嫌いです)」
ダイヤも同じく流暢な英語で切り返す。財前と契約していた頃、ダイヤは数度にわたってアメリカに渡っていたので英語はマスターしている。ダイヤの即答に女性が笑う。冗談ととられたのかもしれないがダイヤはすこぶる本気だった。女性は会話の受け答えからダイヤにその気が微塵もないことを悟ったのか母親に呼ばれたのを機にダイヤの元を去った。
その数分後。
アルコールのないフルーツジュースのワインを傾けていたダイヤに次に寄ってきたのは男性で、こちらはスペイン人だった。ダイヤと年齢は近いようで勢いよく話しかけてくる。だが。
「Buenas noches.Le pido disculpas por dirigirme a usted así, de repente.Estaba tan hermosa que no pude evitarlo.(こんばんは。突然話しかけてすみません。あなたがとても美しかったので、思わず)」
「…..、?」
ダイヤは何も言い返せない。それは相手のスペイン語がまったくわからないからである。ダイヤは日本語と英語しか知らないので。
「……」
じっと押し黙ってみつめかえしてくるダイヤに相手も黙った。男性は笑顔を浮かべるが。
「……」
気まずい。
「I can speak English, though. (英語なら)」
ようやくダイヤが英語で話してみるが相手は通じていないようだった。だがダイヤが反応をしめしたのをよしとしたのか、さらに話しかけてくる。どうやらかなり好意的らしい。でも何を言っているのか全く分からない。にこにことうなずかれながら手を取られそうになる。その時だった。
「Disculpe.(すみません)」
突然、横から別行動だった熊城が入ってきた。あまりにも自然な動作のままダイヤの理解できないスペイン語で二言三言、会話が交わされる。そうして相手が残念そうに笑って熊城と握手を交わした後、そのまま男性は去っていった。
「なんだったんだ…、」
ダイヤが聞く。熊城は一瞬言い淀んだが答えた。
「気に入ったから今夜付き合わないか、だそうだ」
「……あ、そ」
「断ったがな」
「…..へぇ」
「お前マジでモテるな」
いつの間にかやってきた桐生が言う。
「モテるというか、疲れる」
その後も、ダイヤが不意に1人になれば次々と声がかけられた。男女、年齢、国籍とわず。英語なら対応できるがそれ以外だとダイヤは途端にフリーズする。その度に熊城がさも当然のように仲介する。
そしてまた気付いた時、ダイヤの周囲には人だかりができていた。どれも英語が話せるようで、ダイヤも応えている。しかも意外とダイヤにも社交性がある。本人にそのつもりはないのだが。
「I hear you used to do ballet? (バレエやってたの?)」
「Yeah, well… back in the day. Just a little bit these days, too. (昔に。今も少しは)」
「That’s wonderful. Don’t you have a partner right now? (素敵ね、今恋人は?)」
「I don’t have a partner, though. (いないけど)」
「Oh, really? (まぁ、本当に?)」
「It’s true. (本当だ)」
「If you’d like, how about we dance together? (よければ一緒にダンスでもどうですか?)」
「Sorry, but I’m working right now. (悪いが今仕事中で)」
「How about some wine? If you’d like, perhaps we could have a toast together. (ワインはいかがですか?一緒に乾杯でも)」
「Ah… I don’t handle alcohol very well, so… I’ll have to pass. (アルコールは強くないから…、悪い)」
そして少し離れた場所で、熊城はそれを見ていた。
ダイヤは無意識かもしれないがふとした瞬間に笑う時がある。ほんの僅か。機嫌が良い時。気が緩んだ時。その笑顔が妙に人を惹きつける。だからさらに人が寄ってくる。
「大変だな」
熊城が呟く。
「他人事かよ」
桐生が言う。
「他人事じゃねぇよ」
熊城は静かにグラスを傾けた。
「目を離すとどっかに連れて行かれそうだ」
桐生はまた吹き出した。完全に保護者面の熊城がツボったらしい。視線の先では、
また一人、知らない外国人に話しかけられているダイヤがいた。そして数秒後、表情を失っていた。どうやらまた英語以外らしい。熊城はため息をついてダイヤに向かっていくのであった。
ー
無事、情報収集を終え、3人は帰路を歩く。海風が吹いていた。ダイヤはオールバックになでつけられた髪をぐしゃと乱しながらメガネをかけてネクタイを緩める。
「つかれた」
「銃撃戦より疲れてるじゃねぇか」
「銃を向けられてる方が楽だ」
桐生のせせら笑いにダイヤが返す。同意しがたいが、たしかに同意せざるを得ない。熊城は2人の数歩後ろでタバコをふかしながら背中と背景をながめていた。
不意に桐生とダイヤが顔を見合わせて笑い合う。
傷が隠されたダイヤの横顔は、シャンデリアの下よりも、夜風の中の方がずっと綺麗だった。
つづく。
もも
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コメント
1件
ももさんの作品、今回も面白かったです🥀 熊城がダイヤを「綺麗だ」って何度も褒めてるところ、めっちゃツボでした。あれもう完全に口説いてるよね(笑) 着飾ったダイヤが人気者になるのに本人だけ不機嫌で、でもスペイン語が通じなくてフリーズするダイヤが可愛かったです。熊城が割り込んで保護者面するところも好き。 傷を隠した顔、最後の夜風の描写が綺麗で沁みました。次も楽しみにしてますね🌙