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ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
「俺のものってなに? ……意味わかんない」
やばい、忘れてた。ともやは多分BL反対派だった。唯一の親友が一人消滅するかもしれない、友情の存亡危機だ。
「俺ら、恋人同士で付き合ってるの。ともやでも、それくらい意味わかるよね?」
「いや! わかんない! さやちゃん取り合ってたじゃん! いっちゃん、めっちゃさやちゃんのこと好きだったじゃん!」
いつきくんのド直球な宣言に、ともやが壊れたおもちゃみたいに騒ぎ出す。
「……ともや。人間の心っていうのは、そう簡単に割り切れないものなんだよ」
「でも! 男じゃん!」
「まぁ、そこは……まぁね」
なんて説明すればいいのか、俺にも正解がわからない。恋愛対象ががっつり「女の子」しかいないともやにとって、これは未知の世界すぎるだろう。……というか、俺だってつい最近までそっち側の人間だったんだ。
「……でも、ともや。中学の卒業旅行の時、俺っちにちゅうしたよね?」
「は?」
唐突に投下されたりゅうせいの爆弾に、部屋の空気が凍りついた。そんな話、初耳だ。いつきくんも、しゅうとも、そして当のともやまでもが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「……いや、俺じゃない」
「いや、絶対ともやだよ! 俺っちの横だったし、『りゅせ、寝た?』ってともやの声したもん!」
確かに、中学の頃りゅうせいのことを「りゅせ」と呼んでいたのは、この世でともや一人だけだ。
「……夢じゃね?」
ともや、額の汗がすごいことになってるぞ。悪いが、こればっかりは俺もフォローのしようがない。
「俺は嬉しかったよ? だってともや、あほだけど素直で優しくて可愛いもん。今はこんなイカつくなっちゃったけど、当時は見た目もめっちゃ可愛かったし。……あほだけど」
「りゅうせいくんアホアホ言いすぎちゃう!? 流石にほんまの事でも、ともや泣いてまうで?」
このカオスな状況を楽しめる余裕が出てきたのか、しゅうとがようやく口を開いた。よかった、久々にお前が笑っているのを見た気がする。
「……だって、可愛かったんだもん! この顔が横で寝てんだぞ? そりゃあ中学生なら、ちゅうくらいするだろ!?」
「うわぁ……あほが開き直りよった」
さっきまで笑っていたしゅうとが、今度は本気で引いている。俺はもう、おかしくて仕方がなかった。
「で? わかったか? 俺たちの気持ち」
俺がそう畳みかけると、ともやは気まずそうに視線を泳がせた。
「……まぁ、わからんでもない。だって、いっちゃん俺から見ても綺麗だし、かっこいいし……」
「うわっ、お前そんな目で俺のこと見てたんだ」
「違うからね!! そんなんじゃないからね!!」
もう、面白すぎて顎が外れそうなんだけど。
「じゃあ、認めてくれる? 俺たちのこと」
いつきくんが真剣なトーンで問いかける。
「……俺がどう思っても、気にしなければいいでしょ。二人のことなんだから」
「……だって、俺ら親友じゃん。だから、ともやの気持ちも大切なんだよ」
「いっちゃあ~ん!」
感極まったともやが俺に抱きつこうとするのを、いつきくんがすかさずブロックする。
こういう時も容赦ないんだな。お前。
「……もちろん、二人もね」
「「いつきくぅ~ん!」」
しゅうとりゅうせいが俺を跳ね飛ばしいつきくんに抱きつく。俺の狭い部屋はさらに騒がしくなった。
二人きりの甘い時間はお預けになったけれど、これはこれで、悪くない。
さあ、次は誰のラブストーリーが始まるのやら。
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