テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「いっちゃん、今日暇?」
「暇? っていうか、毎日暇だけど。……ともやしだいかな。何かあるの?」
「んっふっふ、実はね」
……なんだよ、今日は一段とニコニコしててめっちゃ可愛いじゃん!
「どうしたの?」
思わずこっちも笑顔のままいつきくんに一歩近づく。
「あ! いっちゃん! 今からりゅうせいとさやちゃんとファミレス行こうって言ってんだけど、来る?!」
突然走ってきたともやは相変わらず空気が読めない。だが、そんなことより今は目の前の恋人の反応が気になって仕方がない。
「……どうしよっかな? ねぇ、いつきくん」
試すようにニヤニヤしながら問いかけると、いつきくんは少しだけ頬を膨らませ、わざとらしく視線を逸らして教科書をカバンに詰め始めた。……可愛すぎる。今すぐ抱きしめてしまいたい。ギュッと握りつぶしたい。
「今日バイト休みでしょ? いつきくんも来るよね?」
「え? なんで俺も行く前提になってんの?」
「え?! 来ないの?! さやちゃんだよ?! あのスーパー可愛い女の子だよ?!」
ともやは本当にアホだ。俺といつきくんが付き合ってること、完全に忘れてる。
「俺といつきくんはパス。どうぞ3人で仲良くイチャイチャしてきて」
「え?! いいの?!」
お前、ほんと嬉しそうだな。それなら最初から俺らなんて誘うなよ。……あぁ、もう行っちゃったじゃん。
「……いいの? いっちゃん。さっきまでともや次第だって言ってたのに」
「いいんだよ。今の俺には、いつきくん以外に大事なものなんてないから」
「え!! いっちゃん俺のことめっちゃ好きじゃん! 大好きじゃん!」
いつきくんはテンションが上がったのか、普段使わないような言葉まで使ってその辺飛び跳ねてる。本当に分かりやすい。この愛おしさに、ニヤニヤが止まらない。
「んで? 今日は何があるの?」
「今日ね……夜、家で一人なんだ」
「あ……お母さん夜勤? お父さんもいねぇの?」
「うん。だから、寂しいなって思ってて。あ、もちろんご飯作るよ。いっちゃんペペロンチーノがいいよね? デザートはついでにスーパーで買って、お風呂は二人で入って……そのあとは俺のベッドで」
「ちょっと待って、勝手にお泊まりコースになってんじゃん」
相変わらず、俺のことになると必死で、どこか危うい。笑いながら軽く小突くと、不意にその手首を強く捕まえられた。
「……だって、俺のこと大好きでしょ? 断れないでしょ?」
少しだけ不安に揺れる瞳で見つめられて、心臓がキュッとなる。いつきくんが俺だけに抱く独占欲が、たまらなく愛おしい。
「……だな。けど、キス以上は無理だからな!」
「…………うん」
……え、何その間!? 俺、何か変なこと言ったか?
いつきくんは手で顔を隠してるけど、指の隙間からニヤニヤしているのが丸見えなんだけど!!
「何だよ! 気になるんだけど!」
「だって、いっちゃん……今日の夜、ちゅうする気満々なんだなって思って」
「はぁ!? だっていつきくんが、俺のベッドがどうとか言うからだろ!」
……クソ、猛烈に恥ずかしい。顔が火照って破裂しそうだ。
「ふふ、……俺のベッドで『ゆっくり寝ていいよ』って言おうとしたんだけどな」
いつきくんは可笑しそうに笑って、ようやく俺を真っ直ぐに見た。
なんだよ、それじゃ俺だけがやりたがってるみたいじゃねぇか!絶対、さっきの意地悪への仕返しだろ。
「……別に、しないならしないでいいけど」
恥ずかし紛れに鞄を掴んで立ち上がる。もういい、こんな意地悪ないつきくんなんて大嫌いだ。
「待って、いっちゃん! 怒らないで、俺、すごく嬉しかったんだよ?」
わかってる。そんなこと、言われなくてもわかってるんだ。
誘われたのが嬉しくて、つい先のことまで想像して舞い上がってしまった自分が情けないだけだ。
「……っていうか、今日金曜だろ。フットサルの日じゃねぇの?」
「あ……どうしよう、忘れてた」
「じゃあ、俺も行くよ」
「えっ!? それじゃ二人で過ごす時間が減っちゃうよ」
「……まぁいいじゃん。どのみち明日も……」
危ない! 「明日も一緒にいればいい」なんて、俺の方が惚れ込んでるみたいなセリフ、口が裂けても言えるか。
「……りゅうせいも来るって言ってた?」
「うん。りゅうせいとしゅうとは皆勤賞。あそこがツートップだからね」
「それにしてもさ、いつきくんってチームにいた頃、めちゃくちゃサッカー上手かったよな。なんであんなことになってんの?」
「……さあ、わかんない。でも、それはいっちゃんもでしょ?」
「俺も……わかんないわ」
二人で顔を見合わせてクスクスと笑い合う。
結局、フットサルは夜の7時からだ。それまでなら、二人で過ごす時間は腐るほどある。
「ほら、手ぇ貸して」
「……いいの? 誰かに見られちゃうよ」
「別にいいだろ。付き合ってんだから」
「……うん、そうだね」
昇降口からスーパーまでずっと手を繋いだまま歩いた。
途中でクラスメイトに会って冷やかされたけれど、構わず恋人繋ぎにして見せつけてやった。いつきくんは本当に嬉しそうで、スーパーに着くまで一言も喋らず、ただ幸せそうに口角を揺らしていた。
「あ、待って……ともやからメール」
「……俺の方にも、りゅうせいから来た。今日、フットサル行かないって」
「……どんだけイチャイチャしてんだよ。今頃3人でホテルでもいってんじゃねぇの?」
「えっ!? いっちゃん、下品!」
「普段のいつきくんには負けるわ」
「……まぁね。でもまだまだいっちゃんの前では猫かぶってるから」
「先が怖ぇわ」
「……楽しみにしてて?」
不敵に、そして妖艶に微笑んだいつきくん。
その横顔があまりに綺麗で、心臓がどくんと跳ねたことは、今のところ俺だけの秘密にしておこう。