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パーティーに誘われたことを、とりあえず父に報告をすると、「やったな!」と、手放しに喜ばれた。
「あの、お父さん? あらぬ期待はしない方がいいと思うけど……」
たぶん他に予定の合うパートナーがいなかったとか、急場しのぎなだけだと思うし……。
「向こうから誘いがあったんだ、今度は上手くいくかもしれんだろう。そうだ、パーティードレスは私が買ってやるから」
「いいってば。披露宴にお呼ばれ用のドレスとかあるし、新しく買わなくても」
やけに乗り気なのをけん制するけれど、
「こういうのは、外見から入るのが重要なんだ。だから遠慮するな」
全く引く気もなくて、彼からの招待にどんな理由があれ、押せ押せムード一色な父と話していると、なんだか心持ち気分が上がってくるみたいだった。
そうして程なくして、独り暮らしの私の部屋に、父から宅急便が届いた。
「ホントに送ってきたし〜」
やや肩をすくめつつダンボールのフタを開けると、中にはサクラ色のショートドレスが入っていた。
「ピンクって……攻めてるなぁ」
自分の父親ながら、この色を選ぶことに並々ならぬ意気込みが透かし見える。
ドレスの他には、薄いピンクのオーガンジーのショールもあって、そうして全部を取り出したダンボールの底には、『これで、ガツンと魅了して来い。ガンバレ、我が娘』なんて書かれた、メッセージカードが入っていた。
「もう、お父さんたら……」
私だって魅了できたらとは思うけれど、あの人はまるで一筋縄にはいかない感じで──。
前に一緒にいた彼女のことも、今度は明らかにするって言ってたけど、それだってどうなるのかわからないし……。もしかしたらあの女性を正式なお相手として紹介をされて、私自身がお別れを改めて切り出されるようなことだって、無きにしもあらずなんだもの……。
過去の一件が思い出されると、お父さんにも話したことじゃないけど、あらぬ期待はできなくて、ふぅーっとため息をこぼすと、次こそはせめて何事もなく済んでくれればと願い、手にしたドレスをハンガーに吊るした──。