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やがて、レセプションパーティー当日が訪れる──。
以前と同様に掛かってきた電話で呼び出されると、マンションのエントランス前には、見たこともないような大きなリムジンが停まっていた。
あっけに取られ突っ立っていると、後部座席のドアが開いて、貴仁さんが姿を現した。
「君は奥へ、さあ」
リムジンから降りて、私にスッと手を差し伸べる。
今日の彼は、オーダーメイドらしいペールブルーのスーツに濃紺の無地のネクタイを合わせた着こなしも決まっているだけじゃなく、就任会見時のようにメガネを掛けていて、いつにも増してクールな魅力に溢れていた。
そんな彼に手を引かれると、わけもなくドキドキとして、目も合わせられないまま、座り心地のいい革張りのソファーシートへ腰を下ろした。
「あ、あの……今日は、お招きをいただきまして」
リムジンなんていう乗り慣れない空間も手伝って、つい堅苦しい敬語口調になる。
「そう固くならないでほしい。私の前では、もっとリラックスしていてくれないか?」
さり気なく肩に片手が添えられ、耳のそばへ、艶のある思わずゾクリとするような声が吹き込まれる。
「あ……、近い、です……」
「……っと、悪い」
慌てたように、パッと手が離される。
「いえ、」と小さく首を振ると、今みたいに距離が近すぎたり、かと思えば不意な隔たりを感じたりと、それで彼に対しては緊張が隠し切れなくてと、密かに思った。