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〖アーチャ!アチャッ!〗
布団の上で遊んでる、アチャモを眺める
かなりヤンチャな子なのか、ずっと布団の上で走り回ってはたまに転けてを繰り返している
けどそれが堪らなく可愛くて愛おしい
そう思いながら笑っているとコンコン、と部屋のドアがノックされる
「?」
不思議に思いつつ、ドアを開けるとそこにはセイカが立っていた
「シオン、お客さんが呼んでるー」
「(私を?)」
不思議に思いつつ、セイカと一緒にエレベーターに乗って下へおりる
───ポーン…
エレベーターが開きロビーへ入るとそこには自分と瓜二つの人間───妹のアザミに似て人間が立っていた
「っ、ね、姉さ…姉さん!!」
「!」
その人物はシオンを確認するなり顔を歪ませ涙を流しながらシオンへ抱きついた
「(アザミ…?うそ…)」
「姉さん本当に探してたんだよ…!?
私も、リザードン達も…カラスバだって」
「!!」
アザミの口から出た言葉に一気に恐怖が募り、ついアザミの胸を押し離れる
「姉さん…?」
『ごめん、違うの。少し動揺して』
「姉さんなんでスマホ使って──」
『声が少し出ないの』
その言葉にアザミは目を見開き、悲しそうに瞳を揺らす
「そ、んな………」
『それよりあの人達は?大丈夫?』
「え?姉さん…覚えてないの?」
『多分だけど、ここ4年の記憶が無いっぽい』
その言葉にアザミは更にショックを受けたように顔を歪ませ複雑な表情になる
「じゃ、あ……カラスバの事は…?」
『なんでその人の名前を出すの?』
「なんでって…そりゃカラスバと姉さんは──っ…いや、何でも…ない。私が言う事じゃないか…」
何処か悲しそうなそれでいてどこか焦っているような表情をするアザミに違和感を覚える
ふとアザミの首に装置が付いていないことに気づき、首ツンツンと触り「装置は?」というように動作で伝える
「あ…本当になんも…覚えてないんだな……
姉さん、私達はさ助けられたんだよ」
『誰に?助けれたってどういう事?』
「そりゃカラ──」
────ガチャ、
アザミがなにか言おうとした瞬間、後ろのホテルZのドアが開きセイカ達が「えっ!?」と驚くような声が聞こえる
「?───!!」
その人物を見て、一気に身体が震える
それは…あの日出会った男、カラスバだったから
しかしカラスバを見て更に動揺しているように見えたのはアザミだった
「なんや、早退した言いよったけどここおったんかお前」
「カラスバ…なんで…」
「普通に泊まりに来ただけや、なんや不都合でもあるん?てかお前そない背伸びしてどないし────」
「あっ!?やばッ…」
アザミの焦った声と共にアザミの後ろ側を背伸びしてカラスバが覗く
その瞬間、確かにカラスバはシオンの存在を認識した。それはシオンもだった
「っ!!」
シオンは危ないと思い、後ろのエレベーターに乗りエレベーターの中へ入るなり閉まるボタンを何度も押す
───ガンッ!!
「っ!?」
「お前…」
ドアが閉まろうとした瞬間、激しい音を立てドアの隙間に足が入り込みドアが再び開く
「ま、まって!カラスバ!!姉さんは!!」
「アザミ、お前なんで黙っとった」
「ち、違う!私も今日会ったの!!それより姉さんは声と記憶────」
「…ッ!」
アザミが何やらカラスバに詰められ怯えたような表情で話しているのを見て瞬時に理解する
───コイツは敵だと
その瞬間、カラスバの目向けて手を向ける
しかし次の瞬間手をあっさり掴まれそのままエレベーターの中へカラスバが入ってくる
「っ!ァ”ッ!!ぅ…!」
「悲しいなぁ、お前の事ずっと探しよったんに」
普通ならこんな背の低い男すぐに処理できるのに、いつの間に力が弱くなったのか一切抵抗できない
「色々積もる話もあるさかい、2人きりで話そうや。」
「う…っ!ぃ…やっ…!!」
「嫌?はは…オレはお前の事、ずっと待っとったんや。探しとったんや、それなのにこんなん酷いやろ。なァ、シオン」
カラスバの今までの執着が形となってシオンにぶつけられる
何が何だか分からないシオンは段々と恐怖に包まれ、身体を小さく震わせる
そんな様子のシオンに対し、少しカラスバが手の力を緩めた時だった
「──カラスバ!姉さん、なんも覚えてないの!!カラスバの事も、リザードン達の事も…」
アザミの苦しそうな声がロビーに響き渡る
その瞬間カラスバが目を見開き、シオンを見る
「(怖い…何この人……)」
「お前、記憶ないんか」
「…?」
何処か間の抜けた声で聞かれ違和感を覚えつつも、ぎこちなく頷く
その瞬間カラスバは顔を歪める
その表情には怒りと悲しみが混じっていた
「(なに、この人…本当に……)」
「オレの事ほんまに…思い出せんのか」
先程の威勢はどこに行ったのか、悲しそうな声が響く
何故か少し申し訳なく思いつつもゆっくり頷くとカラスバは目を見開いたあと「…は、ははっ……」と枯れたような笑い声をあげる
「…そら、記憶ないなら反抗するわな…」
「?」
「……乱暴な事してすまんかったな」
そう言って掴んでいた手を離して、座り込んでいたシオンを立たせ
一旦エレベーターから出てくる
「カラスバ…」
「…虚しいもんやな、やっと会えたゆうのに」
『もしかして私と仲良くされてたんですか?』
恐る恐る聞いてみると、カラスバは目を見開く
「お前…声は……」
「出ないみたい、多分…毒の後遺症か、ずっと寝てたからか……」
「ッ………まぁ、そうやな…仲は、良かったな」
その言葉に驚く
ターゲットであるカラスバと仲良くしてたなんて、私は何をしてるんだろう
「カラスバ、一旦休みなよ。MZ団の人達も驚いてる。 姉さんには私が話しとくから」
「…すまん、周りなんも見えとらんかったわ。
MZ団らにも悪うしてしもうたな。すまんかった。
──部屋の鍵もろてもええか」
そういってAZから部屋の鍵を貰い、エレベーターへ乗ろうとするカラスバ
「──まぁ、お前が生きとるそれだけで…」
そう言ってシオンの頭を撫で、悲しげな背中のままエレベーターの中へ消えてしまった
「っ…」
撫でられた際何故か安心してしまった自分に戸惑いつつもアザミの方を見ると辛そうな顔をしていた
「シ、シオン大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
慌てたようにデウロ達が駆け寄り、シオンの手を見る
『大丈夫、ありがとう』
「そ、それならいいけど…」
そう言うデウロはチラッとアザミを見る
「ごめん、まさかカラスバが来るとは思わなかったの。本当にごめんなさい。」
そう言ってデウロ達に頭を下げたあとシオンへ近寄り抱きしめる
「姉さん、多分今混乱してるよね、ごめん。
けどカラスバは悪いやつじゃないからそれだけはわかって欲しい」
『アザミがそう言うなら、一応信じてみる』
「…あと姉さん、施設はあの人が潰してくれた」
その言葉にシオンは驚いたように目を見開き慌てて顔を上げアザミを見る
アザミは何処か切なげな笑顔を浮かべていた
「私達自由なんだよ姉さん。
だから好きなことしていい、けどカラスバの事だけは嫌いにならないで。あの人は誰よりも姉さんを想ってる」
それだけ言うとシオンから離れ、アザミもAZから部屋の鍵を貰う
「今はお互い混乱してるからまた話そう。
MZ団、迷惑かけて申し訳なかった。」
そう言ってエレベーターの中へ消えていった