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最悪だ。
私、悠真を殺す時、美輝ちゃんの名前を出してしまった。
悠真は死んで、これといった問題は特にないのだが、死んでいたとしても、悠真が美輝ちゃんの名前を知ってしまったことが最悪なんだ。
あんなやつに美輝ちゃんの名前を教えたくなかったのに、覚えさせてしまったかもしれない。
どうしよう、どうしよう。
私だけの美輝ちゃんなのに。私の、私の美輝ちゃんが。
「凄い…ボロカスに言ってたね…」
私が焦っていると、お姉さんがリビングの方からこの部屋に来た。この部屋というか、扉を少し開けて、頭を覗かせているだけだけれど。
「キッチンに縮こまって隠れてたけど…そいつ全然確認しに来なかったんだけど…奇縁ちゃん凄い暴言吐くんだね…初めて知った……ってうわっ。そいつのバッグの中の封筒から札束はみ出てんじゃん」
お姉さんは引き攣ったような笑みを浮かべながら言った。その後の言葉では、驚きの顔を浮かべ、札束を指さしていた。
「とにかくさ、魚結構買ってきたからさ?まぁ、怖くて一応ビニール袋貼り付けたけど…」
そう言って部屋に入ったきた。
「海に沈める?」
「うん、その方がいいかな。指紋も残りずらいと思うし」
そう言う会話をして、悠真を包丁で、バラバラにし、黒いリュックに詰め込んだ。
「あー、でもなんかサイコパスって人肉食べさせる系多くない?美輝ちゃんに食べさせる?」
「…なんでこっち見て言うの?」
私を見ながら言いずらそうに話を進め、その後に聞いてきた。
「こんなに汚らわしい奴を美輝ちゃんに食べせたくなんてない。美輝ちゃんまで汚れちゃう」
そう言うとお姉さんは、そっか…と短く言うだけだった。
「…んじゃ、行きますか」
そう言って家から出て鍵を閉め、歩きで海へと向かった。
「結構、じかんっ…、かかったんじゃない…?五十分…、程度…?」
そう言ってリュックを下ろすお姉さんは汗を少しかいている。私はかいていないが、お姉さんは人、一人を持っているのだ。バラバラにしたとはいえ、それでも重さは変わらない。
「四十七分だね。お姉さんが休み休み行くからこうなるんだよ。早く帰らなきゃ」
私が冷たく言うと、お姉さんは汗をかき、疲れたまま話しかけた。
「待って…今海に投げるから…」
そう言って靴を脱ぎ、リュックを両手で抱えたまま海の深い方へと入っていった。
ある程度のところまでで止まると、リュックのチャックを開け、バラバラになった悠真の死体を海に沈めた。
「後は波に任せよー?」
そう言ってお姉さんは砂浜の方へと戻ってきた。
「びちゃびちゃじゃん。タオルは?」
「あー、リュックのことだけで頭いっぱいだったわ」
そんな会話をしながら少し休もうとしているお姉さんに私は言った。
「そんなことはいいから早く帰ろうよ。美輝ちゃん、今日一日中、一人で待ってるんだよ。可哀想でしょ」
「いや、私会いに行ったから」
「とにかく、ご飯用意してあげないと」
そう言って一人で帰ろうとする私を、お姉さんが必死に止めた。
「ちょっと、待って!今行くから!」
そう言って裸足のままスニーカーを履き、少し濡れたリュックを背負い、びちゃびちゃになったジャージのズボンを脱ぎ体育着のズボンを見せた。手には靴下が握られている。
「…はぁ、早くして」
私は呆れながらそう言った。
きっと、これからも私と美輝ちゃんの幸せを邪魔するやつがいる。
パパ活で肉体関係を求めてくる輩はごまんといるだろう。
そんな奴らは悠真みたいにバラバラにして、海に沈めてやる。
地球の中でも謎多き海の底へと沈めてあげるのだ。喜んでもいいだろう。
そんなことを思いながら、お姉さんと一緒に、美輝ちゃんのいる木造アパートへ戻って行った。
「なぁ、青也」
そう言って一緒に玖字と俺、先輩で捜査をしていた時、先輩が俺に話しかけてきた。
「悠真のメッセ既読つかねぇんだけど」
「気づいてないだけなんじゃないですか?」
俺が玖字と色々考えながら適当に返すと、先輩は、いや、と俺の言ったことを否定した。
「あいつ、毎回既読めっちゃ早くつくんだよ。それを知ってる俺ならおかしいって分かるから」
そう言う先輩に、玖字が反応した。
「なんか二軒も事件起こってるんですし、その悠真って人も同じ犯人に殺されたとか…?」
悠真は真剣に言っているようだった。すると、先輩が急に、立ち上がり、スマホで何かを操作し、電話をかけた。
「先輩?何してるんですか?」
小声で俺が先輩に聞くと、先輩は、しーっと行ったあとに小声で教えてくれた。
「悠真に電話繋がらないなら美香に聞くしかねぇだろ」
美香。俺の大嫌いな奴の名前だ。
美香は友達の前では自称サバサバ系女子、好きな人の前ではぶりっ子になる、とんでもなく虚言癖の女だ。そして、俺の嫁である春香さんの幼馴染みだ。
春香さんは美香にいじめを受けていたのだ。それだけ?と思うかもしれないが、それだけだ。
「お前分かりやすいなー…」
苦笑交じりに玖字はそう言った。
「あ、もしもし美香ぁー?」
そう言って先輩が電話越しに美香へと話しかけた。
「あー!センパイ久しぶりですぅ!」
電話越しでも気持ちの悪い甲高い声が聞こえてくる。
「美香、悠真に電話してくれない?俺だと出ないからさ?」
「えぇー…!?…まぁセンパイの頼みならいいですよぅ…」
昔と変わらず先輩のことが好きなのだろう。先輩にだけ可愛子ぶって本当に気色悪い。先輩は、じゃ、とだけ言って電話を切った。
「悠真に電話してくれるってよ」
「本当ですか」
俺が美香のことを嫌いなのを知って、玖字と先輩が二人で話してくれている。極力美香の名前は出していないようだ。
でも、俺は美香が気持ち悪すぎて、二人の話を聞く余裕もないくらい、吐き気を催していた。