テラーノベル
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スタートーー!
夜明け前。
山の向こうから、淡い青色の光がゆっくりと空を染め始めていた。
湖畔には、事件を知らせるパトカーや救急車の赤いランプが静かに点滅している。
救助隊が負傷者を搬送し、警察官たちは崩壊した星見山の調査を進めていた。
美月は毛布にくるまりながら、昨夜ファントムが残した白いカードを見つめていた。
『約束は果たしました。 また、星空の下で。』
カードには、いつものようにユリの香りがほのかに残っている。
「本当に行っちゃったんだね……。」
小さくつぶやく美月の横で、蒼真は木箱の中身を慎重に確認していた。
⸻
木箱の底
「……美月さん。」
蒼真が静かに声をかける。
「この箱、少し重すぎると思わない?」
「え?」
木箱を裏返すと、底板に小さな星形のくぼみがある。
美月は首から下げた星形のペンダントを取り出した。
「これが合うかも。」
ペンダントをはめ込むと、小さくカチッという音がした。
底板がゆっくりと開く。
中には一本のフィルムと、小さな封筒。
封筒には神崎蒼介の文字で、
『最後の星空』
とだけ書かれていた。
⸻
現像
数時間後。
月影写真館。
店主はフィルムを受け取ると、静かにうなずいた。
「……分かりました。」
暗室の赤いランプだけが部屋を照らす。
現像液へゆっくり沈められるフィルム。
時間が止まったような静けさ。
やがて店主は一枚の写真を取り出した。
「これは……。」
そこに写っていたのは、満天の星空。
しかし、それだけではなかった。
星空の下には、多くの子どもたちが笑顔で空を見上げている。
その中心には、若き日の神崎蒼介と倉橋俊介。
二人とも心から楽しそうに笑っていた。
美月は写真を両手でそっと受け取る。
「すごく……あたたかい。」
写真を見ているだけで、その日の笑い声が聞こえてくるようだった。
⸻
裏面の言葉
蒼真が写真を裏返す。
そこには手書きの文章。
『未来の写真家へ。』
『シャッターを押す前に、誰かの笑顔を思い出してください。』
『その一枚は、きっと誰かの宝物になります。』
美月の目から、一筋の涙がこぼれる。
「これが……。」
「神崎さんの、本当に伝えたかったこと。」
店主も静かに目を閉じた。
「最後まで写真家らしい人だった。」
⸻
新たな予告状
その日の夕方。
帝丹高校。
文化祭の準備で校舎はにぎわっていた。
写真部の部室へ戻った美月は、机の上に見慣れた白い封筒が置かれていることに気づく。
「まさか……。」
封を開く。
中には白いカード。
しかし今回は予告状ではなかった。
『白石美月さんへ。』
『あなたなら、この星空を未来へ届けてくれると信じています。』
『私の役目は終わりました。』
『でも、いつかまた必要になれば――。』
『その時は月明かりの下で、お会いしましょう。』
──怪盗ファントム
カードの下には、小さな銀色の星のバッジが添えられていた。
「これ……。」
ファントムが子どもの頃に写真で身につけていたものと同じだった。
美月は優しくほほ笑む。
「預かるね。」
⸻
黒崎の決断
一方、病院。
黒崎レオンは腕に包帯を巻いたまま、病室の窓から夕焼けを眺めていた。
警察官が病室へ入る。
「事情を聞かせてもらいます。」
黒崎は静かにうなずいた。
「……逃げるつもりはない。」
しばらく沈黙したあと、小さく笑う。
「負けたのは怪盗ではない。」
「写真を信じる人たちだった。」
その表情は、事件の始まりとは少し違って見えた。
⸻
星の写真展
数週間後。
帝丹高校文化祭。
写真部の展示室には、多くの来場者が訪れていた。
美月の作品の中央に飾られているのは、湖畔で撮影した一枚。
満月と星空。
静かな湖面。
そして、風に揺れる白いマントの後ろ姿。
タイトルは、
『約束の夜』
「きれい……。」
来場者が足を止める。
「まるで映画みたい。」
美月は少し照れながら笑った。
その写真の片隅には、小さく白いユリが写っている。
⸻
ラストシーン
文化祭が終わり、夕暮れの屋上。
美月はカメラを構え、茜色の空へ向ける。
カシャッ。
その瞬間。
屋上のフェンスの上に、一羽の白いハトが舞い降りた。
足には小さな白いカード。
美月は近づく。
カードには短く、こう書かれていた。
『星は、今日も君を見守っている。』
風が吹く。
遠くの時計塔の上。
白いマントが夕日に揺れたように見えた。
美月が目を凝らすと、その姿はもうどこにもなかった。
彼は本当に去ったのか。
それとも、どこかで新しい「約束」を守っているのか。
その答えを知るのは、夜空の星だけだった。
⸻
――第九章 終――
次回・第十章「未来へ続くシャッター」
文化祭が終わり、平穏が戻ったかに思われた。しかし、美月のもとへ神崎蒼介が残した最後のアルバムが届けられる。その中には、まだ誰も見たことのない一枚の写真と、新たな「約束」へつながる手がかりが隠されていた。物語は、いよいよクライマックスへ向かって進んでいく。
コメント
3件
みぅだよ🤍🥀 第九章、めっちゃ良かった……。特に写真の裏に書かれた「未来の写真家へ」のメッセージ、心にじんわりきた。ファントムが去るのも切ないけど、ちゃんと「約束」を守ってくれたんだね。最後の屋上のシーン、白いマントが夕日に揺れた感じがすごく美しくて、何度も読み返したくなる。次回も絶対読むね🌙
#デジタルイラスト
る あ 。 @低浮
209
る あ 。 @低浮
3
#クロスオーバー
紫蘭
5,220