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「さあて、ブレイク。お前の相手は俺みたいだけど、勝てる自信はあるか?」
「おいおいおいおい、お前にはこの聖槌《せいつい》ミョルニルが見えてないのか? あんまりバカにしてると足をすくわれるぜ?」
「いや、別にバカにしたわけじゃないんだ。けど、俺はお前を殺したくない。身長が百三十センチになっても俺の力は前と……いや、この大会の一、二回戦のおかげで俺は前以上に進化しちまったからな」
「確かにお前の強さは、俺の頭ん中にバッチリ残るくらいのもんだった。けど、お前が今からやろうとしていることは多分、俺の流儀に反するもんだから、やめといた方がいいぞ?」
「そっか……。まあ、俺はハンデの有無なんてどうでも良かったから、別にいいけどな」
「よーし! そんじゃあ、そろそろ始めようぜ! ナオト!!」
「ああ、そうだな! ブレイク!!」
両者がニシッ! と笑うと男同士の戦いが始まった。
「くらいやがれ! おらああああああああああああああああああああああああ!!!」
ブレイクは聖槌《せいつい》ミョルニルを闘技場の床に思い切り振り下ろすと、その衝撃波がナオトに向かって前進し始めた。
「なるほど! それがミョルニルの力か! でも、二回戦が終わった直後から俺の右半身は……!」
ナオトは右拳に力を込めると。
「前より進化したんだよおおおおおおおおおお!!」
その衝撃波を消滅させてしまうほどの打撃を打ち込んだ。
ミョルニルの衝撃波を素手で粉砕しただと! はははは、もうこれは本気を出すしかねえよな!!
「俺が本気を出すのは、お前で二人目だ! 誇っていいぞ! ナオト!!」
「そりゃどうも! けど、そんなこと言われたら俺だって本気を出さずにはいられないぜ!!」
両者は、再びニシッ! と笑うと。
「聖槌《せいつい》ミョルニルよ! 今こそ真の力を解放し、敵を討ち滅ぼせ!!」
「行くぞ! アメシスト!! 俺たちの本気、見せてやろうぜ!!!」
両者は会場中に響き渡るほどの大声でこう叫んだ。
「『聖槌《せいつい》ミョルニル……|ただ破壊し尽くす形態《デストロイ・モード》』!」
その直後、ミョルニルのヘッドの部分に聖印が浮かべ上がり、ミョルニルはそれと同時に白き光を纏《まと》った。
「『エメライオン』との戦いの中で俺が獲得した力をお前に見せてやる! これが|大罪の力を封印する鎖《トリニティバインドチェイン》の第二形態……|白くあどけない香雪蘭《ホワイト・フリージア》だ!!」
その直後、ナオトは白い鎧《よろい》を身に纏《まと》った。
それと同時に瞳は黒から赤に変わり、背中から銀の鎖が十本飛び出した。
ナオトがこの姿になるのは『エメライオン』との戦い以来である。
「『|神聖力を宿す大衝撃波《ホーリークラッシャー》』!!」
ミョルニルを闘技場の床に叩きつけると、先ほどとは比べ物にならないほどの衝撃波がナオトの方に向かってきた。
「『電光《ジェット》……石火《アクセル》』!!」
ナオトはそう言うと猛スピードでそれに突進していった。(『電光石火《ジェットアクセル》』は鎖の力の一つである。『第二形態』でなくても使える)
「バカめ! その衝撃波をくらって立っていられたのは『あの方』を除いて他にいねえ! 俺の勝ちだああああああああああああああああ!!」
「さあて、それは……どうかな!」
ナオトはその衝撃波を両手で押しながら、そう答えた。____そして。
「どおおおおおりやああああああああああああ!!」
「バ、バカな!? 俺の本気が押し負けて……いや、それならば、もう一度、放つのみ!!」
「もう遅《おせ》え! はあああああああああああああああああああああああああ!!」
その衝撃波はブレイクの方に勢いよく向かっていき。
「そんな! そんなバカなああああああああああああああああ!!」
ブレイクを吹き飛ばした。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
ナオトの息は上がっていたが、ゆっくりと右拳を天へと掲げると。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
勝利の雄叫びをあげた。
それに便乗して観客たちも雄叫びをあげた。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
「試合終了! 『ケンカ戦国チャンピオンシップ』三回戦の勝者は『本田《ほんだ》 直人《なおと》』選手だあああああああああああ!!」
実況の『トワイライト・アクセル』さんのテンションは上がりに上がった状態であった。
ナオトが『第二形態』を解除しながら、こちらに向かって飛んでくるミカンを見ていた……その時。
「はぐれモンスターチルドレンは成敗する!」
「……ガハッ!?」
先ほどまで『トワイライト・アクセル』さんのとなりにいたはずの『オメガ・レジェンド』がミカンの背中に拳で打ち込んだ。
ミカンはうつ伏せで落下すると気を失ったのか、ピクリとも動かなくなった。
その直後、観客たちは動揺の声をあげ始めた。
国民たちは彼が『はぐれモンスターチルドレン討伐隊司令』であることを知っている。
しかし、不意打ちで敵を倒すというのは見たことも聞いたことがなかった。
『オメガ・レジェンド』がナオトの元に行くと。
「危なかったな、少年。もう少しで君は殺されていたぞ?」
ナオト(『第二形態』になった副作用でショタ化した主人公)は少し俯《うつむ》いた。
「……なんで……だよ」
「なぜ? それは私がはぐれモンスターチルドレンを討伐するためにこの世に存在しているからだ」
「あんたは……なんとも思わないのか?」
「君の言っていることが理解できないな。そもそもモンスターチルドレンは人の皮を被った化け物だ。そんな化け物を野放しにしておいたら危険なことくらい、君にだって分かるだろう?」
「あいつらは……元は普通の女の子なんだぞ? それなのに、なんであんたはあいつらを化け物呼ばわりするんだ?」
「君にはまだ理解できないかもしれないが、モンスターチルドレンはとても危険な存在なのだ。先ほどの天使型のように人を襲うケースもある。『はじまりのまち』がその存在によって破壊されたことは君も知っているだろう?」
「たしかにカオリは『はじまりのまち』を破壊した。それは紛れもない事実だ。けど、それは、まちのやつらが先に手を出したからだ。あいつに責任を押し付けるな!」
※ゾンビ型モンスターチルドレン製造番号《ナンバー》 一のカオリ。ナオトの家族の一員。
「……! 君は他のモンスターチルドレンに会ったことがあるのか! もし良ければ、ぜひその時の情報を詳しく……」
ナオトはゆっくりと『オメガ・レジェンド』の目を見ると、今にも襲いかかりそうな口調でこう言った。
「あいつらのことを化け物呼ばわりするやつに、あいつらの情報なんて言うわけねえだろうが!」
「……君はどうやら、何かの病気みたいだな。ここで少し待っていてくれ。今、医者を……」
「俺は至って正常だよ。それより、俺はあんたの脳内の方が心配だ」
「君は何も分かっていないだけだ。もう少し話し合えば、きっと……」
「あんたは俺を怒らせた。もう、どうなっても知らねえぞ!」
「君が戦いを望むと言うのなら、全力で相手をしよう。しかし……」
『オメガ・レジェンド』は一瞬で『ミカン』のところに行くと『ミカン』を闘技場の隅《すみ》に放り投げた。
「邪魔者には退場してもらおう」
その光景を目の当たりにしたナオトの中には、怒りという感情だけが存在していた。
しかし、ナオトは怒りで暴走しないように歯を食い縛った。
「『|黒影を操る狼《ダークウルフ》』……俺以外の四人のこと、頼んだぞ」
ナオトの影から出現した、それは。
「了解した」
ただそれだけ言うと、ナオトに言われた通りのことをやり始めた。
「おい、『アメシスト』。あのおっさんを倒せる力を俺に寄越せ」
「ナオトよ。お前はこの大会で三回も我の力を使っているが、それでもやつに戦いを挑むのか?」
「ああ、もちろんだ」
「十本の鎖を手足のように操ることもできないぞ?」
「ああ」
「『|紫水晶の形態《アメシスト・モード》』にもなれないぞ?」
「ああ」
「『|黒影を操る狼の形態《ダークウルフ・モード》』にもなれないぞ?」
「ああ」
「『第二形態』にもなれないぞ?」
「ああ」
「……たとえ『第三形態』になれたとしても暴走するやもしれんぞ?」
「あのおっさんを倒せるのなら、それでいい」
「そうか……ならば、思う存分暴れるがいい!」
「ああ、最初から、そのつもりだ!」
※ナオトとアメシストの会話は他の人には聞こえない。
「行《ゆ》くぞ! 少年!!」
オメガ・レジェンドがそう言いながら、拳を構えるとナオトはこう言った。
「あいつらを化け物呼ばわりした、あんたを俺は許さない! 死んでも恨むなよ!!」
両者は全力以上の力で戦うために、ありったけの力を解放した。
「『|身体能力超強化《レインフォース》』!!」
「『|大罪の力を封印する鎖《トリニティバインドチェイン》』第三形態……」
ナオトがそう言い始めた直後、彼の目からは殺意しか感じられなかった。
「『|黄色い無邪気な香雪蘭《イエロー・フリージア》』アアアアアアアアアアアアアアア!!」
その直後、ナオトの体は黄色の鎧で覆われ、瞳は真紅に染まっていた。
彼の背中から黄色の鎖が十本飛び出したが、彼はそれの先端についているひし形のダイヤモンドのようなものだけを残して、体の中にしまった。
「さあ! かかってこい! 少年!!」
その時、ナオトの鎧に今までなかった口の部分が現れた。
彼がその口を開くと、全てを噛み砕いてしまうかのような牙と自由自在に動く真っ赤な舌が姿を現した。
それはどう見ても、人間のものではなかった。
「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
ナオトはエ○ァ初号機の雄叫びのような声を出しながら床を思い切り蹴ると、雷の如き勢いで突進していった。
どうやらナオトは暴走してしまったようだ。
*
その頃、ミノリ(吸血鬼)が置いていってくれた水晶で大会の一部始終を見ていた者たちは。
※彼女たちは巨大な亀型モンスターの甲羅の中心と合体しているアパートの二階にある『ナオトの部屋』にいる。
「このまま何もしないで待っているのは耐えられないと思う人は手を挙げてください」
コユリ(本物の天使)がそう言うと、全員が手を挙げた。
「そうですか。しかし、ここにいる全員を連れて行くことはできません。なので、私が選出します」
コユリは今の状況をなんとかできるのは誰なのかを頭の中で取捨選択した。
「それでは、コハルさん、カリンさん、メルクさん、フィアさんにお願いします。よろしいですか?」
『はい!』
四人は元気よく返事をした後、瞬時に身支度《みじたく》をすると、アパートを飛び出していった。
*
ナオト対オメガの戦いは、もはや人間同士の戦いではなくなっていた。
ナオトは闘技場内を縦横無尽に走り回り、オメガはナオトの後を追い、攻撃を仕掛けている。
まるで獣と狩猟者が戦っているかのような光景は見る者を圧倒した。
その時、例の四人が到着した。
四人は例の狼と共に負傷者を医務室に運ぶと協力して、手当てを始めた。(負傷者とは、ブラスト、ブレイク、ブレイズ、ミカンのことである)
その様子を観客席から見ていたミノリ(吸血鬼)と名取は最悪の事態になるのを防ぐために何かを準備していた。
※名取《なとり》 一樹《いつき》。
ナオトの高校時代の同級生で名取式剣術の使い手。名刀【銀狼《ぎんろう》】の所持者。
前髪で両目を隠しているのは人見知りだから。
いつもは途切れ途切れに話すが、武器のことになるとよく話す。
今はナオトたちと共に旅をしている。
ミノリは固有スキル『|意思の伝達《メッセージ》』を使ってナオトに話しかけてみたが応答はなかった。
伝わっていたとは思われるが、自我を失っているせいで応答できなかった可能性が高い。
拳と拳がぶつかり合う度《たび》に己《おのれ》の限界以上の力を解放し合い、相手を倒そうと一生懸命に戦っている両者からは異常なまでの気迫と自然の厳しさのようなものが伝わってきた。
勝利の女神が微笑むのは、ナオトかオメガか……。