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僕は、君が星になったあの日からずっと一人で生きていると思っていた。大家さんが言い放った言葉を聞いた瞬間、僕は一人ぽっちじゃないのかもしれないと初めて思うことができた。
そして、僕は今まで毎日同じことの繰り返しで、自分が生きているかもわからない日々を過ごしていた。でも、僕は生きている。こうしてしわくちゃな顔を晒しながらも、今ここで息をしている。生きている僕が君のためにできること。それが何かを考えたときに、出てきた答えはたったひとつだった。
「ねえ!明日はどの夢叶えよっか!」
君が大きな瞳を輝かせながら僕に尋ねる。僕らのノートに残っている夢は、もう指折り数えられるほどに少なくなってしまっていた。このノートに書いてある夢が全部なくなったとき、君はどうするつもりでいるんだろう。それどころか、全部叶える前にまた君が死にたくなってしまったらどうしようか。そんな不安を抱きながら、僕は数少ない残りの夢から1つを指差した。
「うーん…そうだねえ、これなんかどう?そろそろお金も貯まってきたし!」
「え!いいの!私、昔からずっとここに行くのが夢だったんだ!」
君は夢ノートを書いたあの日から毎日、僕の前で笑ってくれている。一人でいるときにはどんな気持ちでいるのかは分からない。少なくとも、僕には君が心からちゃんと笑ってくれているように見える。それだけで十分だ。
「あれ、君も行ったことないんだ!意外だね!」
「うん…。私と行ってくれる人間なんて、どこにもいなかったから…。」
あからさまに表情を曇らせる君。またやってしまった。
「そっかそっか!それなら僕も行ったことないから、一緒だね!二人で全力で楽しもうよ!」
「うん!また共通点だね!楽しもーう!私ね!いっぱい乗りたいものあるし、いっぱい見たいものもあるんだ!」
君が死にたいと告げた日からもう四年。突然ケロッと元気になるのは相変わらずだ。
「お、いいねえ。じゃあ、今日は明日に備えていっぱい予習しよう!乗りたいもの全部乗っちゃおう!見たいものも全部見よう!」
「やったー!あのねあのね!」
そう言って君の口からは次々と言葉が溢れてきた。山の中を突き抜けるジェットコースターや、景色を見ながら遊園地の中をぐるぐると回る電車、キャラクターと一緒になって踊るショーなど、本当に全部叶えられるか不安になるくらいに莫大な量だ。
「そっかそっか、乗りたいものたくさんあるね!その分楽しみもいっぱいだね!」
「あ、どうしよう。チケットとか大丈夫かな?それに、もう夜行バスとかもきっと間に合わないよ?」
「大丈夫だよ。明日は朝から新幹線に乗っていこう!新幹線だったらお昼までには十分間に合うし、一日中楽しめるよ!」
「新幹線…!!私、新幹線も初めて!!駅弁とかあるのかなあ、おコーヒーにしますか?お茶にしますか?とか聞かれるのかなあ…。」
「どうなんだろう?僕も新幹線初めてだからわかんないや。」
「わあ!また共通点だね!ほんとに君とは共通点が多いんだねえ!」
何気ない会話。決して裕福とは言えない生活の中で叶えていく君との小さな夢。この四年間、僕の人生は充実している。君が生きていてくれて本当によかった―――。