こんちには 葉月です
第一話の必読を読んでから本編を見ることおすすめします
本編↓
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ここはオークションに出される”商品”が置かれた牢。そのひとつに蠢く影があった。それは1人の少年だった。
「はぁ…明日売りに出されるんか 俺」
少年はそんなことを呟く。だがその言葉に反応するものはいない。ただ首輪の鎖がそんな呟きに反応するようにチャリ…と無機質な音を鳴らすだけだった。
「どうしてこんなことになったんやろ…」
過去を悔やんでも意味は無い。年端のいかない少年でも分かっていた。こうするしか無かったと。それでも少年は恋焦がれる。仲間との日々を…
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その少年はあるスラムで仲間と共に生活していた
「湊にいに、今日はご飯取ってこれた?」
まだ5歳くらいの少女が少年に話しかける。
「おう 取って来れたで」
少年は少女に笑いかけながらパンを渡す。そしてほかの仲間にも慣れた手つきで配っていく。
「ごめん 湊にい1人で行かせちゃって」
少年より2つくらい年下に見える黒髪の少年が申し訳なさそうに受け取る。
「ええで 最近物騒な大人が増えてきてるみたいやから ここは最年長が行かないと危ない」
「でも…」
「でも…やない その代わりここを守ってくれとったんやろ?」
「うん… 」
「ここはまだ知られてない場所や 大人に ここが知られたら命が危なくなる」
「分かった 僕頑張る!」
「えい子やな」
「ちょっ 2歳ぐらいしか違わないのに撫でないでよ!」
「にゃはは~」
少年は幸せだった。ご飯などを取ってくる時には大人に暴力されたり暴言を吐かれたりと危険な目に会うことが多かった。だが、仲間のみんなが笑っていてくれるならそれで良かった。少年には仲間こそ全てであり笑っていてくれることが幸せだった。
しかしある日それは崩れ落ちた。最近、物騒な噂を聞かなくなってみんな気が緩んでいたのだ。
「よし! 今日はパンが取れたぞ 湊にい喜んでくれるかな」
そう言って黒髪の少年はみんなのいる場所へと駆けて行った。後ろにいる不穏な物陰に気づかずに…
「あっ! 湊にいちゃん あいつ帰って来た!」
「あっ、ほんまや おかえり~」
「見て! これこんなに…」
黒髪の少年はみんなに今日取れたものを見せようとする。しかし、そこに大きな男の影が被さってきた。
「危ないっ!」
少年は叫ぶ。しかし黒髪の少年はその男に捕まってしまった。
「チッ… なんだここほとんど売りもんにならねぇくらいのガキばかりじゃねぇか」
「おいっお前ら こいつの命が惜しけりゃ大人しくしろ」
「…っ !」
少年も少年の仲間たちも大切な仲間を助けたい。だが今無理に助けようとすると命が危ない。
「大人しくなったな… しっかし本当に売りもんにならねぇやつばかりじゃ… ん?」
周りを見渡していた男の目はみんなを庇うように立っている少年に釘付けになった。
(年齢的には少し幼いかもしれねぇが、この美貌なら言い値がつくだろう)
そう考えた男は少年に話しかける
「おいっ そこの紫の髪が混じったお前」
「なんや」
「俺と一緒に来ないか?」
「は….? 何言ってんの 行くわけないやん」
そう言って少年は男を睨む。
「はぁ… ならお前以外のガキ全員連れて行くか」
「はぁ! なんでや そんなことさせん」
「ならお前が来たらここガキに手は出さん お前が来なかったらここのガキに手を出さしてもらう」
「嫌や、俺がおらんなった後にお前らがまた襲って来るかもしれんやん」
「そうかもしれんな」
「なら…」
「でもこれは今の問題だ もしここでお前が来なけりゃここでこのガキ共の未来は終わりだ」
「っ… 分かった」
「それでいいんだ さっさとこっち来い」
ぎゅ… 少女が少年の服の裾を掴む。
「湊にいに 行かないで…」
「離して 手を」
「でも、離したら…」
「離せ言ってるやろ!! 離せ!!!」
少女は少年の怒号に驚き、思わず手を離す。その瞬間、少年は男の方に駆け出した。
「あっ! 湊にいに!!」
「チッ やっと来たか お前は離してやる」
黒髪の少年の拘束が外れた代わりに少年が拘束される。
「ごめんな みんな みんなは幸せになってくれお願いや」
少年はニコリと笑った。
「にいに」
「にいちゃん…」
「おらっ 行くぞ」
少年は仲間に背を向け歩き出した。どんなに泣き声が聞こえようと決して振り返らずに。
それからの日々は地獄だった。家畜が食べているものより酷い飯、毎日のように行われる躾という名の暴力、顔は売る時に支障が出るからと殴られなかったが体はボロボロだった。唯一の心の拠り所だった仲間とも離れ離れ限界だった。少年が笑わなくなるのも時間の問題だった。
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そして今に至る。少年はもう体も心もこの地獄に耐えられなくなっていた。そんな少年の願いはただ1つ。
「明日、買われるんやったら直ぐに殺してくれる人がえいな…」
このオークションの商品は買った人ならば何をしてもいいことになっている。殺しても犯してもその所有者の自由だ。少年が選ぶ自由は無い。それでも少年は願う。もう生きたくない。この地獄を。さっさと死んで仲間の元に帰りたかった。そんな願いを心中に秘めながら少年は眠りについた 。
コメント
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語彙力 凄い 、