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「エルファス! 助けてくれ! 俺はエイミーに拉致されたんだ! しかも、アイミーには殺されそうになったんだよ!」


レイロは往生際が悪かった。

エルたちが近づいてきていることに気が付いた私は、レイロが襲いかかってくるように挑発した。

怒っているレイロの動きはわかりやすく、先が読めた。

力では敵わないけれど、それ以外なら勝てる自信があったからやったことであり、私にとっては危険な行為ではない。


「エイミーに拉致されたっていうのは、目の前で見たから嘘ではないことはわかる」


エルは鼻で笑うと、私に近づいてくる。


「大丈夫か?」

「私は大丈夫だけど、あなたたちは? みんな大丈夫だった?」

「怪我をしてる奴らがいる」

「なら、回復魔法をかけにいくわ。ここを任せても良い?」

「ああ」


レイロのことだから、またウダウダ言うのだろうと思ってお願いすると、エルは頷いた。


任せる前に大丈夫だと言っていたけど、念の為にエルの体に回復魔法をかける。

すると、エルが驚いた顔をして私を見つめた。


やっぱり怪我をしていたのね。

痛みがなくなったから驚いたんだわ。


青く染まっている彼の顔をハンカチで拭いて頬をつねる。


「どうして嘘をつくのよ。嘘つきはレイロとお姉様だけで十分だわ」

「……ごめん」

「おい、何をイチャイチャしてるんだよ!」


レイロが顔を歪めて叫んだ。


別にイチャイチャしてるつもりはない。

昔からこんな感じだった。

レイロはこんな光景を見るのが嫌で、大して好きでもない私と結婚したのね。


近寄ってこようとしたレイロを、エルと一緒に来ていた仲間たちが取り押さえる。


「あんたは俺たちが相手になるよ」

「エルファス隊長、アイミー様を怪我人の所へ連れて行ってください!」


そう言う彼らも青い血まみれだし、ところどころ赤い血も見える。


そうだわ。

光の魔法が広範囲に放てたのなら、回復魔法もできるんじゃないかしら。


まずは、近くにいる仲間たちに回復魔法をかけた。

十数人単位なら、今までもできていたから、魔力の心配はない。


次に広範囲を試してみる。


「エル、怪我人が集められているのはどのあたり?」

「たぶん、あのテントを中心にその周辺かな」

「わかった」


意識を集中して、エルから教えてもらったテントとその周辺に遠隔で回復魔法をかける。

すると、宿営地のほうから驚きの声が上がり始め、いつしか歓喜の声に変わった。


「……上手くいったみたいね」


お姉様の魔力を奪ったとはいえ限界がある。

ゼロに近くなっているのか、立っているのも辛くなってきた。


「アイミー、大丈夫か!?」

「大丈夫よ、ありがとう」


気が抜けたせいもあり、エルがふらついた私の体を支えた瞬間、仲間に引きずられるようにして歩き出したレイロが叫ぶ。


「エルファス! アイミーは俺を殺そうとしたんだぞ! そんな女を助けるなよ!」

「あんたが先に手を出したんじゃねぇか」

「ち、違う! 正当防衛だ!」

「はいはい、うるさい」


エルが答える前に仲間がレイロの頭を殴って黙らせた。

エルはレイロを仲間に任せて話しかけてくる。


「どうして無理するんだよ」

「あと1分早ければ助かったなんてことにしたくないのよ」

「気持ちはわかるけど」

「エルファス! エルファス!」


レイロは仲間たちに引きずられていく間、ずっとエルの名前を呼び続けていた。


エルはレイロのことなど気にする様子もなく、私の体を支えたまま、今度はお姉様に話しかける。


「エイミー、お前を上官の所に連れて行く」

「待ってよ! 私は後方支援なのよ! 他の人たちみたいに逃げたっていいじゃないの!」

「皆、命令で逃げたんだ。お前みたいに勝手に逃げたわけじゃない。しかも、兄さんまで連れて行きやがって」

「しょうがないでしょう! レイロを死なせなくなかったんだもの!」

「兄さんは兵士だぞ。ここに来てる兵士は皆覚悟して来てるんだよ!」

「私はレイロを失う覚悟はできてない!」


お姉様は子供みたいに泣きじゃくる。


「昔からアイミーの周りにはいつも誰かがいる。だけど、私の周りには人が集まらない! そんな私に優しく声をかけてくれたのはレイロだけだった!」


騎兵隊の後方支援に入ってから、お姉様が隊の中でどう過ごしているか、詳しくは知らなかった。

男性だらけだったから、お姉様は怖かったのね。


最近になって、お姉様はレイロのことがずっと好きだったと言っていた。

元々、レイロに好意を抱いてはいたんでしょうね。

弱っている時に優しくされて、恋心は余計に燃え上がってしまったのかもしれない。


「だからって、レイロ以外の人を見捨てても良いわけじゃないんですよ」


冷たい目で見つめると、お姉様は顔を覆って泣き続ける。


「嫌よ。罰なんて嫌。何をさせられるかわからないものっ!」

「命にかかわるようなことはされませんよ。痛い目には遭うでしょうけどね」

「……何をさせられるの? 慰み者にするとかじゃないわよね?」

「騎兵隊の定めた罰則にそんなものはないから安心しろ」

エルが答えると、お姉様はホッとした表情になった。


その後、私とエルはお姉様を拘束し、宿営地まで戻った。

回復魔法で助かったという人たちから、何度もお礼を言われた。


でも、助けられなかった人もいた。


多くの人が亡くなった。


「助けられなくてごめんなさい」


涙した私に、多くの人が言った。


「あなたのせいではありません。エイミー様が逃げずに、怪我人に回復魔法をかけてくれていれば、多くの命が助かっていたんです」


お姉様がいても、全ての命を助けることはできなかったことくらい、みんなわかっている。


だけど、もし、その場にいてくれたならと思ってしまうのは、大事な人をなくした人からすれば当たり前のことのように思えた。


お姉様とレイロへの罰は騎兵隊の隊長が集まって決めることになった。

司令官も騎士団長も各国の情報を集めるのに忙しかったからだ。


今、ルーンル王国が他国に攻め入られれば、確実に負ける。

今がチャンスだと思われないようにしなければならなかった。


家に帰る魔導具も魔力もないので、その日の私は宿営地で眠り、その日の朝にレイロとお姉様の処分内容を聞いた。

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