テラーノベル
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1x1x1x1が「時間の黎明」へと封印されてから、どれほどの年月が流れただろうか。
ビルダーマンや、ドゥームブリンガーたちも、神から人間へと姿を変えていた。
もはや神はRobloxだけとなり、世界にはRobloxianと呼ばれる人間たちだけがいた。
そしてシェドレツキーは、変わった。
かつてのような傲慢さは消え、胸に刻まれた罪だけを抱えながら生きていた。
傷ついた世界を守るため、仲間を守るため。
相棒デュセッカーと共に鍛え上げた光の刀――イルミナは、二人が二度と過ちを繰り返さないという誓いそのものだった。
だが。
運命というものは、反省した者に優しくなるほど甘くはない。
ある日、世界そのものが嫌な音を立てて裂けた。
空が割れ、地面が軋み、コードが悲鳴を上げる。
「……なんだ、この揺れは!?」
シェドレツキーが顔を上げた瞬間、視界が真っ黒に染まった。
ビルダーマンも。
デュセッカーも。
そして、封印されていたはずの1x1x1x1までもが、その裂け目へ飲み込まれていく。
誰一人、抵抗することはできなかった。
気づけば彼らは、見知らぬ場所へ立っていた。
空は血のように赤く。
霧は黒く。
遠くでは誰かの悲鳴と笑い声が混ざり合っている。
生き物の気配はあるのに、生の温もりだけが存在しない。
そこは――
FORSAKEN。
現世から見捨てられた者だけが流れ着く、終わりなき殺し合いの牢獄だった。
「……ようこそ。」
乾いた拍手が響く。
パチ、パチ、パチ。
視線を上げると、巨大な玉座の上に一人の男が足を組んで座っていた。
真紅のシルクハット。
同じ色のスーツ。
退屈そうに頬杖をつきながら、それでも口元だけは楽しそうに笑っている。
「歓迎するよ。僕の可愛い箱庭へ。」
男はゆっくり立ち上がり、優雅に一礼した。
「僕はスペクター。この世界の創造主であり、支配者。そして――君たちの絶望が大好物の神様だ。」
その笑顔は、美しかった。
だからこそ、不気味だった。
善悪を知らないのではない。
正しさを理解した上で、それを踏みにじることを娯楽にしている笑みだった。
「ここは何だ!」
シェドレツキーがリンクソードを抜く。
「俺たちを元の世界へ返せ!」
スペクターは首を傾げる。
「えぇ? せっかく来たのに?」
「君たちって、本当に帰りたがるよね。」
「でもさ。」
その赤い瞳が細くなる。
「帰れないから、絶望って美味しいんだよ。」
パチン。
指が鳴った。
次の瞬間だった。
ズドォォォォン!!
見えない衝撃がシェドレツキーとデュセッカーを正面から吹き飛ばす。
「ぐあぁっ!!」
「シェドレツキー!!」
叫ぶ暇すらない。
骨が砕け。
コードが裂け。
二人の身体は、一瞬で崩壊した。
ビルダーマンは目を見開く。
#デジタルイラスト
汚染
39
あめ猫@サボり魔
8,090
ありきたりな雑炊
50
「な……」
「一撃……?」
スペクターは満足そうに微笑んだ。
「はい、おしまい。」
「……って言いたいところだけど。」
「この世界は、そう簡単には終われない。」
闇が二人の身体を包む。
崩れた肉体が組み上がり、裂けたコードが繋がり直していく。
数秒後。
シェドレツキーは息を切らせながら目を覚ました。
「……はっ!」
胸を押さえる。
確かに死んだ。
心臓が止まる感覚も、骨が砕ける痛みも全部覚えている。
なのに、生きている。
「FORSAKENへようこそ。」
スペクターは楽しそうに笑った。
「ここでは死は休憩時間なんだ。」
「何度でも殺されて。」
「何度でも生き返って。」
「永遠に僕を楽しませてね。」
その笑い声だけが、霧の中へ長く響いていた。
◇
数日後。
サバイバーたちの休憩所。
焚き火の前で、シェドレツキーは頭を抱えていた。
「いててて……。」
「何回リスポーンしても痛みだけは残るんだよなぁ……。」
隣ではデュセッカーが静かにイルミナを磨いている。
「だから無茶をするなと言った。」
「スペクターは、この世界そのものだ。」
「真正面から挑んでも勝てない。」
「分かってるよ……。」
シェドレツキーは苦笑した。
「でも、逃げっぱなしも性に合わないし。」
その時だった。
「シェドレツキーさーん!」
明るい声が飛んでくる。
頭がテレビの女性型ロボット、ヴェロニカだ。
スケボーを抱えて元気いっぱいに駆け寄ってきた。
「さっきの試合さー!」
「なんで毒沼へ自分からダイブしたの!?」
「アホなの!?(°▽°)」
「違う違う!」
シェドレツキーは慌てて立ち上がる。
「あれは高度な誘導テクニック!」
「キラーの進路をずらすためで!」
「絶対違うよね。(・_・)」
ヴェロニカは画面の端にメモを書き始めた。
《シェドレツキー。笑顔が怪しい。絶対何か隠してる。あとチェイスが雑。》
「勝手にメモするな!」
「証拠は残しておかないと。」
「怖い怖い怖い!」
焚き火の周囲から笑い声が起こる。
シェドレツキーも笑ってみせた。
昔のように。
明るく。
頼れるリーダーとして。
「次の試合も俺が前に出る。」
「リンクソードでキラーを引きつけるから、その間に修理を進めてくれ。」
「了解!」
「任せた!」
皆が頷く。
その姿を見ながら、シェドレツキーは胸の奥で静かに呟いた。
(……これでいい。)
(1xのことは誰にも知られなくていい。)
(全部、俺一人が背負えばいい。)
だが。
その横顔を見つめるデュセッカーだけは、小さくため息をついた。
「兄弟。」
「隠し事は、人を守るための盾にはならない。」
「いつか、自分自身を刺す剣になる。」
シェドレツキーは照れ隠しに笑う。
「大丈夫さ。」
「俺にはリンクソードがある。」
「それに、お前との誓い――イルミナもある。」
その笑顔は、誰よりも明るかった。
だからこそ。
誰よりも痛々しかった。
◇
同じ頃。
FORSAKEN最深部。
誰も近づこうとしない漆黒の回廊。
そこではスペクターの配下たちが静かに蠢いていた。
古代吸血鬼ノスフェラトゥ。
背中に触手を揺らすアズール。
巨大な尻尾を持つホスフォラス。
誰もが、その最奥だけには近づかない。
そこには黒緑色の炎が燃え続ける封印の祭壇があった。
ゴォォォ……
炎が脈打つ。
まるで心臓の鼓動のように。
その奥から、小さな声が漏れた。
「……シェ……」
炎が揺れる。
「……ド……レ……」
鎖が軋む。
「……ツ……キー……」
赤い光が闇を裂いた。
ゆっくりと開く二つの瞳。
憎しみ。
執着。
そして、何千年経っても消えなかった愛情。
それだけを宿した真紅の瞳だった。
黒緑の炎が爆発する。
祭壇の奥から、一人の影が立ち上がる。
頭にはドミノクラウン。
赤いケープが闇を翻り。
その右手には、毒剣ヴェノムシャンク。
かつて神に捨てられた半身。
時間の黎明へ封じられた怪物。
そして今、FORSAKEN最悪のキラー。
1x1x1x1。
千切れた鎖を引きずり、彼はゆっくりと笑った。
「……待ってろよ。」
「バカシェドレツキー。」
「今度こそ、お前を一人になんかさせない。」
その声は恋人へ向ける囁きのようであり――
同時に、世界の終わりを告げる呪いのようでもあった。
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