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#異世界転移
花月夜れん
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設楽理沙
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耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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なんでまた、わざわざ陛下自らお出ましに?
日暮れが近いこともあって蔵の中は暗い。蝋燭片手に見るよりは、明かりが多く灯されたご自分の部屋で見ればいいのに。
普通は何か資料を見たい場合は、宦官や侍女が使いに出されて取りに来るもので、こうして皇帝自ら来るのは珍しい。
不思議に思いながらもひたすら待つしかない麗霞は、扉の横で待機した。
何をご覧になっているのかしら。今度ある皇后陛下の還暦祝いの宴ことで調べたいとか?
なんて、普通こういうのは皇帝がやる仕事じゃない。
考えたところで答えなどでないが、如何せん暇なのだ。立って控えているというのは。
ついあれこれと考えを巡らせてしまう。しかも姜弘に皇帝と皇后の昔話を聞いたばかりだと尚更に。
女の一生は、男からの寵愛にかかっていると言っても過言ではないと思う。
男系が基本のこの国で女が力を握るためには、主人に愛された者勝ちだ。特に多くの女性がひしめく後宮ともなれば、その戦いは凄まじいものだろう。
きっと皇帝に妃嬪たちは、あの手この手で目をかけて貰おうとアプローチしてくるのだろうけど、それにしたって皇后に対して非情だな、などと思ってしまうのは麗霞が甘い考えを持ちすぎなのかもしれないが。
あんなに溺愛されていたって、時と共に心も移りゆくもの。永遠の愛などただの幻想だと、現実を突きつけられてしまった今では、それなら結局、誰と結婚したって同じような気がしてきた。
どうせ気持ちなど変わってしまうのなら煜峰のことなどさっさと忘れて、父に結婚したい旨を伝えて嫁ぐべきなのかも。母には文句を言われるだろうけど、知ったこっちゃない。父の鼻を明かしたいのなら、麗霞頼みではなく自分で何とかしたらいい。
父も父だ。どうして側妻と同じくらい、母のことも愛してあげないんだろう。女として愛せなくても、せめて家族として愛してくれたらまだ母の気持ちも違ったかもしれないのに。
考えていたら腹が立ってきた。
男ってホント、勝手だわ!
女を自分のいいようにして!
あーー、ムカつく!!!
麗霞の怒りが爆発しそうになった頃、ようやく皇帝の用事が済んだらしい。蔵の中から出てきた。
「今回はお忍びで来られた故、帳簿には何も書かなくて良い」
「かしこまりました」
とりあえず返事はしたけれど、お忍びでって、なんでまた??
皇帝の考えることはよく分からない。
そんな事はないとは思うが、皇帝一行が去った後、念の為無くなったり破損している書画はないか、明かりで照らしながら丁寧に確認していくと、麗霞は蔵の一角で手を止めた。
「あら?」
今日半日かけて掃除をしたここ。
皇帝と皇后との絵が多く蔵書されている場所の書画が、微妙に位置が変わっている。
少し前まで麗霞がせっせと蔵書を棚に戻したので、どんな風に置いたのかはっきりと覚えている。間違いない。
「陛下はこの辺りの絵を見にいらしたのかしら」
お忍びで皇后陛下と過ごした日々の絵を見に……?
熱々だったなあ、あの頃は。なんて思いながら見てたっていうの?
馬鹿馬鹿しい。
そんな必要はない。だって皇帝が皇后を寵愛するのであって、その逆はないもの。女の一生は、男の手に委ねられているのだから。皇帝さえ皇后への気持ちがあれば、いつでも仲睦まじい夫婦でいられたんだもの。そんなはずは……。
――本当にそうなの?
相手にわざと冷たい態度をとったり、意地悪をしてしまいたくなる。その気持ちに、麗霞も覚えがある。
煜峰のことが好きで力になりたいって思うのに、つい困らせてしまいたくなった。気を引きたくて、でも引けなくて。
一人目の子が産まれてから、距離が生まれてきた二人。
次々と他の妃嬪との子をもうける皇帝と嫉妬しない皇后。
そして、子供の中でも特に煜峰を疎む本当の理由。
麗霞の中で全てがひとつに繋がった。
間違っているかもしれない。
けれどもし麗霞の予測が当たっているのなら、描いてみる価値はあるかもしれない。それで上手くいくかどうかはわからないけれど。
皇后の為に描く春画をどんなものにするか、麗霞の中でイメージが完全に固まった。
あとはそれを上手く表現しきれるだけの腕が、麗霞にあるかどうか。
蔵に錠をかけた麗霞は、頭の中のイメージを紙の上に吐き出すべく、足早に自室へと向かっていった。
コメント
1件
おお、第41話…これはまた深いところに触れる回でしたね。皇帝がわざわざお忍びで蔵を訪れ、若き日の皇后との絵を見ていたというのがもう。麗霞が「女の一生は男の寵愛にかかっている」と言いながら、同じ心当たりから皇后の感情に気づいていく流れ、とても自然で胸に沁みました。「つい困らせてしまいたくなる」という内省が、彼女自身の成長を感じさせてくれます。春画を描くという決意の意味が、この伏線で一気に深まりましたね。次が楽しみです。