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12月下旬――
「ここが俺たちの合宿先だ!!」
龍之介は、目の前の建物を指し示す。
それは和風の旅館で、かなり立派な佇まいだった。
「すごいですねぇ! こんなところに泊まれるなんて!!」
「設備も整っていそうですね。楽しみですわ」
マキとユイが目を輝かせる。
他の少女たちも、皆一様に嬉しそうだった。
「では、早速中に入りましょう! ……むっ!? あれは筋トレルームでは!?」
「ちょっと、ミオちゃん! 先にチェックインしないと……って、あれは合気道道場!?」
「剣道場もあるようでござる。いやはや、このような旅館が存在するとは……」
「さすがは龍先輩。すてきなセンスですっ!」
ミオ、アイリ、セツナ、ノゾミが旅館の中を見て回る。
龍之介が選んだ旅館は、彼女たちに好評のようだ。
「ふふ……。みんなが喜んでくれて、俺も嬉しいよ。この旅館には、中学生の時にも合宿で泊まったことがあるんだ。学生やプロスポーツ選手からの評価が高い特別な旅館でな……。みんなも気に入ってくれると思っていた」
「そうだったのですかぁ! とっても嬉しいですぅ!」
龍之介の言葉に、マキが満面の笑みを浮かべた。
チェックインを済ませた龍之介たちは、早速部屋で荷物を下ろす。
そして、必要な荷物だけを持って旅館の外に出た。
「さて……。みんな集まってくれ」
集まった少女たちの前で、龍之介は説明を始める。
「この合宿の目的は2つある。1つは、練習での個々の課題点を改善すること。2つ目は、みんなの仲を深めることだ」
「はい! 質問です!!」
ミオが挙手する。
龍之介は頷いた。
「いいぞ、ミオ。何が聞きたいんだ?」
「私は龍様と、これ以上ないくらい仲を深めていると思います! さらなる進展を目指すとなると、その方法は限られてくるのではないでしょうか!?」
「はは……。そうだな」
ストレートに好意を伝えてくるミオに、龍之介は苦笑する。
だが、すぐに表情を引き締めた。
「確かに、ミオの言うことにも一理ある。だからこそ、この合宿で寝食を共にして――」
「初夜を迎えるのですね! ついに龍様と結ばれる時が来ました!!」
「ぶっ!? な、何を言ってるんだ、ミオ!」
「何って……。私たちは愛し合っていますし、いずれはそうなる運命ですよね? それが今だというだけですよ。さぁ、早くお布団に入りましょう! ……むぐっ!?」
暴走するミオの口を、アイリが塞ぐ。
そして――。
「ミオちゃんはすぐ暴走するんだから……。これじゃ作戦が……」
「龍先輩、先に練習を始めといてください」
「わたくしたちは、ミオさんと話をして落ち着かせますわ」
「そ、そうか……?」
アイリ、ノゾミ、ユイが言う。
そこにセツナとマキも加わり、5人がかりでミオをズルズルと引っ張っていく。
「……あなたたち、私の邪魔をするなら――」
「――落ち着いて。実は作戦が――」
「――決行は――」
6人が小声で会話を交わすが、その内容は龍之介の耳には届かない。
龍之介は1人で準備運動を始める。
そして、しばらくすると――
「納得しました! 流石は龍様が勧誘したメンバーなだけはあります! 私たちはワンチームです!! オール・フォー・ワン!! ワン・フォー・オールです!!!」
ミオは笑顔になって戻ってきた。
その笑顔には、一点の曇りも感じられなかった。
「それで……何の話をしてたんだ?」
龍之介が問いかけると、少女6人が声を揃えて答えた。
「それは秘密!」
「秘密です!!」
「……そうか」
妙に機嫌の良い彼女たちに首を捻りながら、龍之介は準備運動を進める。
そして、7人で練習を始めた。
「今日の練習は、ここまでだ」
日が暮れる頃、龍之介が告げる。
7人は汗をかきながらも、爽やかな表情だった。
「龍先輩! お宿に戻って休憩しましょう!」
「そうですわね! 早く温泉に入りたいですわ!」
ノゾミとユイが龍之介に駆け寄り、腕を絡める。
龍之介は2人の頭を撫でながら、他の少女たちに告げた。
「みんなも、汗を流してさっぱりするといい。大浴場に行くんだろ? 今はちょうど女性が入れる時間だったはずだ」
ここの旅館は特殊で、大浴場は一つしかない。
その分、とても広く豪華だった。
時間や日によって男女の入れ替えがあるが、今は女子の時間だ。
「はい! ちなみに、龍様は……」
「部屋にある風呂で軽く汗を流しておくよ。大浴場ほどじゃないが、そこそこ広いし十分さ。大浴場は、晩ごはんの後にでも使わせてもらう」
龍之介はそう告げる。
そして、少女たちを見送ったのだった。