私はとりあえず怜ちゃんを家で寝かせ、看取るとは言ったもののどうすればいいのか考えた。とりあえずまずは市役所に行くことにした。怜ちゃんを連れて。
「怜ちゃん、ちょっと一緒に来てくれないかな?」
怜 「なんですか?」
「ちょっと小難しいお話しに行くんだけど…」
怜 「分かりました。」
怜ちゃんは快く応じてくれた。とてもしっかり者で、真面目な子でありがたい。
「すみませーん」
市役所職員 「はい、どのようなご用件でしょうか?」
「先日虐待による捨て子を見つけて、里親になりたいと思っているのですが…」
市役所職員 「虐待による捨て子、ですか。では、養親手続きを行うために一時的に児童相談所に置かせていただきます。」
「はい。」
市役所職員 「そして実親と連絡が取れない場合は海枝さんに委託研修をしてもらいます。そして実際に療育委託をしてもらいます。そして家庭裁判所に療育状態と近隣調査の結果から療親になるかの判決が言い渡されます。」
「分かりました」
市役所職員 「では、、そちらにいるお子様が棄児の方でしょうか?お子様を児童相談所に送る手配をさせていただきます。」
怜 「はい」
怜ちゃんは難しい法律の話も真面目に聞いていた。すぐに怜ちゃんと過ごせるわけではないのは寂しいが、一番大変な思いをしているのは怜ちゃんだ。私も頑張って転職して怜ちゃんを安心させたい。
幸い、転職活動はすぐに終わり、明日から働き始める。
「また、、理不尽に叱られて、仕事を押し付けられるのだろう…でも頑張らないと怜ちゃんを幸せにできない」
次の会社でも同じように虐げられるのだろうと、私は恐怖から憂鬱だった。けどその中に、怜ちゃんのあの笑顔があった。私の心の中でそれは輝いていて、その光に向かって進んでいける気がした。
──翌日
「お、おはようございます。先日採用されました海枝です。何卒よろしくお願いします。」
上司 「あぁ、海枝さんか、これからよろしく。」
「よろしくお願いします」
上司 「じゃあ早速指導してもらおうか、幹江さん、海枝さんの指導を頼むよ」
幹江さん 「承知いたしました。」
幹江さん 「あなたが海枝さんね?私は幹江結末。同じ部署で働く主任よ。顔が強張ってるけど、そんな怖がらなくていいのよ。よろしく!」
「あ、ありがとうございます!ちょっと、前の会社が散々でして…社会って怖いんですよね。」
幹江さん 「そうだったのね。でも、勇気をだして会社を辞めてここまで来たのはとても凄いことよ。その勇気を活かして仕事を頑張ってくれればきっと周りから愛されながら仕事ができると思うわ。少なくとも、あなたにトラウマを植え付けるようなことは絶対させないと誓うわ。」
「…!」
私は自分が新人としてあの会社に入ったときを思い出した。ろくな指導もさせてもらえず、それでいて仕事ができないと軽く数十分は怒鳴られ罵声を浴びせられ、味方も居なくてただ一人雑用をやらされていたあの頃を。
既にあの会社とは全く違う雰囲気に、私は疑いを覚えていたが、幹江さんの強く、そして優しい言葉は、信用したくなった。でも、どうやって信用したらいいのかがわからない。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!