TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「隻(セキ)、その場所に案内してくれ」

「勿論です!」




「ここだよ」

「うわ、陰気くさ…」


 やはり、どの時間帯でも路地裏は暗いので、どうしても入りたくない気持ちになってしまう。

 まあ、そうは言ってられないので、素直に、かつ用心しながら路地裏の奥へと入る。

 手前側には貴族や子供達は見られなかった。子供達が街の人達に助けを求められないように、と奥にいさせてるのだろう。

 結局、子供達がいるであろう少し開けた場所に着くまで誰一人として人に出会う事はなかった。その方が丁度よかったかもしれない。


「三人以上、やっぱいるね…」


 セキが偵察に行った時に見た人数よりも多い。セキの予想は合っていたみたいだった。

 貴族らしき男達は、少年少女達に散々怒鳴りつけている。本当に可哀想なくらいだ。


「…おい」


 建物越しでこっそり見ていたのだが、別の男がいたみたいで、あっさりバレてしまったようだ。

 しかも、子供達やその子達を怒鳴りつけている男も気づくくらいの大声で叫ばれてしまった。


「おや…」


 でも、そんな程度で物怖じする人物は、ここにはいない。やはり少年少女達からすればこの男達は怖いだろうが、光石国の人間の方が怖いだろう。

 叫んだ男が『こっちへ来い』と子供達がいる広場へと連れて行き、三人を囲むように男達は並んだ。


「何の用だ? あんたらみたいな貴族様が来るような場所ではねぇぜ?」

「ふふ、そうみたいだねぇ。だけど、恐らく君達の上司は、この子達は諦めると言っていたよ?」


 そう言うと、男達は輝(ヒカリ)達がただの貴族ではない事を察した。

 こんなに子供達に執着しているベルスの総統が、この男の前で簡単に諦めるなどするはずがないと思ったから。

 という事は、ベルス総統と同等、それよりも上に立つ存在の人物―――。

 そうやって、簡単に想像がついた。


「僕は光石国総統、ヒカリと言う。…まだ、何か言いたい事でもあるのかな?」

「い、や…」


 光石国は、この世界に存在する国々の頂点に立つ国。そんなの、偉そうにする目の前の貴族達だって、怖気ずくに決まっていた。

 顔を青ざめて、先程より小さくしている男達を見て、面白そうに口角を三日月にして笑う柊(ヒイラギ)とセキ。

 そんな縮こまっている男達は気にせず、目の前にいる子供達へと向かうヒカリ。

 自分達よりも一回り以上大きく、「総統」という単語を聞いて、只者ではないと察する子供達。

 勉強すらさせてもらえない子供達でも、総統という位が凄い人物だという事は何となくでもわかった。

 何をされるんだろう、と怖がる子供達。『悪い事はしないよ』という意味も込めてニコッと笑ってみせた。


「はじめまして、僕は光石国総統ヒカリと言います。僕、君達を勧誘しに来たんだ」


 奴隷相手に丁寧な言い方で、子供達も困惑していた。生まれた時からこのような扱いをされていたと思うから、尚更だろう。

 そして、勉強させて貰えず、言葉も簡単なものしかわからなかったから、「勧誘」という言葉にはてなを浮かべていた。


「勧誘っていうのは、んー、まあお誘いって事かな。僕の国に来ないかっていう、お誘い」


 急にそんな事言われても。周りの子供達はたじろぐ。どうすればいいのだろう、と。


「僕は、この国のような扱いはしない。絶対に」


 ニコッと怖くないように笑っていたヒカリだったが、その言葉を言った途端、真剣な眼差しを子供達に送った。

 神にでも、いや、自分の命でも捧げるような勢いで子供達に誓う。そんな真剣な眼差しに、子供達は見蕩れる。


「…も、ぼく、こんなところに、いたくないよぅ…」

「ん、わたしも…ここ、こわいもん…」


 男の子に続いて女の子、その子達に続いて他の子供達も話しだした。

 皆がボロボロと涙を零して泣き出す。こんな小さな子供達になんてことをするんだ。

 ヒイラギとセキはこの路地裏にいる子供達を連れて、路地裏から出る。


「―――僕は、子供達に手を出せば、宣戦布告をすると言った。連れて帰ろうと我が国に訪れ、少しでも暴れてみろ。必ず宣戦布告をして潰してやるからな」


 そのヒカリの言葉で更に顔を青ざめて、完全に動かなくなる。言うのは強いのに、言われるのには弱いんだ。

 子供達の前では強者でも、所詮はそこら辺にいる貴族だ。ナンバー1の光石国の前じゃ、弱者になる。

 せめて、こういう事も考えておかなきゃ。最低限の後先の事は考え尽くさなきゃいけない。


「ふふ、バカだねぇ」


 クスクスと笑いながら、子供達と路地裏から出たヒイラギとセキを追いかける。

 もう少し時間が経ったら、この貴族が何もしなくても宣戦布告して国を名前ごと潰してやろうと決めたヒカリだった。




 何やかんやして、子供達をボロっちい布切れではなく、綺麗な服を着せてあげた。

 勿論、その子達の好みの服だ。これを着ろなんて命令なんかは言っていない。絶対に。

 そして、連れてきた子供達を総統室に集める。入ってきた子供達は皆、広い部屋や煌びやかな装飾を見て、目を輝かせていた。


「君達に、選択権を与えようと思う」


 選択権とは何ぞや、とこれまたはてなを浮かべていたので、近くにいたヒイラギが『自分で決められる権利だ』と教えていた。


「先ずひとつ、街で平和に暮らす。ふたつ、兵士、または幹部となり、国に貢献する」


 兵士となって国に貢献するとなると、命に関わる。子供達も、今までだって命に関わるくらい危険な生活を強いられていたかもしれないが、それ以上に危険となるだろう。

 それを聞いて、多くの子供達は一つ目の街で平和に暮らす事を望んだ。また死ぬかもしれない生活になるくらいなら、街で暮らしていた方が断然安全だ。

 だがしかし。


「ぼく、は、ここで働きたい、です」

「わたしも…」

「え、でも…」


 兄妹か姉弟(か双子)らしき男の子と女の子がそう言った。ヒカリの言葉は十分理解はしていそう。だが、今の発言だ。

 この子達以外に国に貢献する、を選んだ子はいない。ナンバー1の国で貢献して暮らせるのか、そう考えれば無理かもしれない。そう思っての一つ目の選択なのだろう。

 だからこそ、他の子達は二人が城で暮らす事への躊躇いがあったのだ。

 でも、二人の決心は強い。発言した時の目と、今の目は違う。もう決めたんだ。そういう目。


「理由を聞こう」

「えと…詳しく、は何をするかわかってませんけど、ぼく達みたいな子達がいるなら助けてあげたいな、って…。総統様みたいに」


 兵士なら戦う事しかやらせてもらえない、悪く言えば殺人兵器として起用してるようなものだ。

 だが、幹部ならば?

 幹部の仕事は、戦う以外にも書類仕事がある。そう、書類仕事を使えばいいのだ。

 書類仕事には、武器の管理についてのものだったり、街についてのものだったりもある。

 たまに、奴隷についての書類もあるので、それを使えば男の子の言う子達を助ける事も可能だ。


「…わかった。ただし、君達も試験を受けてもらうよ。不合格ならば他の子達と一緒に街で暮らすんだ。いいね?」

「はいっ!」


 幹部の中に、全く戦えない人はいない。非戦闘員でも、少しだけでも戦った事のある人はいる。

 だからこそ、話を聞いてはいどうぞで入らせるわけにはいかないのだ。兵士ならば特に。

 まあ、男の子達の言う「書類仕事を使って」ならば、兵士よりも幹部になった方がいい。ただの兵士は、書類なんて触らせてもらえないから。


「セキ。橘と楓の三人で、子供達を街へと連れて行って家を用意してくれ、と伝えてくれ」

「りょーかい! じゃあ、皆行こー!」


 パタリ


「…ああ、名前―――」


 そういえば、この子達に名前はないのか。という事で、ヒカリが名付け親になる事になった。

 二人は双子の兄妹という事はわかったので、後は双子らしい可愛らしい名前をつけてあげる。


「君達は字の読み書きはできる?」


 二人とも首を横に振った。知ってはいたが、やはり字の読み書きは習えなかったらしい。

 目の前の子供達は他に連れてきた子達と違うオーラを感じる気がするし、幹部になるのなんて直ぐだろう。

 幹部に昇格してから字の読み書きを習わせればいいし、漢字はその時に教えてあげればいいだろう。


「それじゃあ、お兄ちゃんは「心抄(ミト)」、妹ちゃんは「心捺(ミオ)」だ」


 名前をもらえて嬉しいのか、自分の名前を小さく繰り返しながら呼んでいる。

 我ながら二人に似合った名前をつけられた、と自画自賛するヒカリ。そして、その光景が微笑ましくてふふ、と笑ったヒカリとヒイラギだった。


「さあ、急ではあるがまた兵士を募集しよう。そこに、君達の名前も書こうか」


 二人はまだ字は書けないから、付き添いの人に書かせればいいだろう。別に、募集のチラシに「自分で著名しなければいけない」とは書かれていないから。

 なんて雑な募集のチラシなんだろうか。防犯対策が一切ないし。まあ、自分で書かせても防犯になるのかは知らないが。


「それじゃあヒイラギ、ミトとミオの付き添いをしてくれ」

「了解。じゃあ、行こうか、二人とも」


 そういえば、二人の年齢を聞いてなかった。聞くのをすっかり忘れていた。


「…見た目は五、六歳なんだけど…。もう少し年上だったら栄養不足すぎるぞ…」


 結局どの年齢だとしても、見た目と年齢がそぐわなかったら焦るのに変わりはないのだけど。

 もし本当に五、六歳なのだとしたら、大問題だぞ。小さな子供を大人の、特に男が多くいるあの場所に放り込むのは危険だ。


「…考えてなかったぁ…」

「意外と天然だよな、ヒカリって」


 たまたま書類を届けようとして総統室に来た凪(ナギ)。

 この世に完璧人間なんて存在しないけど、本当に言葉の通りに意外だなと思っただけだ。率直な感想を述べただけ。


「…まあ、ヒカリの思った事はその通りの事がほとんどだし、あの子達を信じてもいいんじゃないか?」

「うん…、そうだね」


 子供達が心配なのは変わりないが、あの環境を生き抜いた逸材なのだ。逃したくはない。

 あの二人を信じて、幹部になれるように祈り、その時まで待った。




あー、忙しい忙しい()

ま、推し様の動画とか小説読んでただけだけど。

あー忙し(おい)

loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚