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ハーブティーの淹れ方を教えてもらい、一杯をお試しで飲んでいると、
「ここにいたのか」
目を覚ました貴仁さんが現れた。
「あっ、起きられたんですね」
「私は、うたた寝をしていたらしいな。起きたら、君がいなかったものだから」
首元に気まずそうに片手を当てる彼に、
「今、源治さんに聞いて煮出したカモミールティーを、あなたに持って行こうかと思っていて」
何も気にしないでほしいと、事の次第を話した。
「私に? すまないな」
「ううん、すまないことなんてなんにも。この紅茶、私が淹れたんですが、飲んでみてくれますか?」
源治さんが出してくれたカップに、ティーポットから紅茶を注いで彼へ差し出した。
「うん……熱っ」
紅茶に口をつけた彼が、少し慌てたようにカップを口元から離すのを見て、
「あっ……と、もしかして貴仁さんって、猫舌でしたか?」
やや心苦しさを感じて尋ねた。
「……ああ、いや悪い。とてもいい香りだ」
言いながら彼が、紅茶を冷まそうとふぅーっと湯気を吹く。
「貴仁さまは、昔から熱いものが少々苦手でして。なので紅茶はいつも少し温|《ぬる》めにしています」
すかさず口を挟む源治さんに、「……源じい」と、彼がなぜ言うんだとばかりに、カップを持ったままため息をこぼす。
クールに見えて、熱いのが苦手だなんて……。
……ギャップ萌えっていうのかな、なんだかかわいくて……。
また胸が疼くのを感じて、今日一日だけでも何回彼にキュンてさせられちゃったんだろうと、密かに指を折って数えてみる。
朝食の甘い囁きで一回に、お庭での二回、それに今の一回で、もう四回目だなんて──。
貴仁さんへ恋する想いは、結婚しても尚さら尽きそうになくて、日を追う毎にますます募っていくみたいだった。