好きを増やす

目黒は阿部の方が年上なのに、可愛くて仕方ない。何かあれば自分が守ると決めている。

この気持ちは「好き」だと思う。

だが、阿部が目黒を「好き」かは分からない。

同じ男なのにとか、自分の方が年上だとか、守ってもらうなんてとか、思ってないだろうか？

阿部を想いはじめて半年経った。

告白してもいいだろうかと思う。

嫌われるかもしれない。

それでも日々、募る想い。

まだ自分は２０歳を超えて少しの若造。

本気にしてくれるだろうか？

不安の方が多い。

優しい顔立ちをしているが、長年の下積みを耐えてきた人。

性格も優しいが、根性はある。

目黒ー阿部ちゃん。

阿部ー何？

目黒ー阿部ちゃん、好きな人いる？

阿部ーん、いる。内緒だよ。

目黒ー告白するの？

阿部ーしない、想ってるだけでいいんだ。

目黒ーどんな人か聞いていい？

阿部ー言わない、内緒だから。

目黒ー俺が、阿部ちゃんを好きだって言ったら困る？

阿部ーめめが俺を？

目黒ーうん、本気なんですけど。

阿部ー困る、自分の恋でいっぱいだから。

目黒ーその人のこと、そんなに好き？

阿部ーん、想ってるだけで幸せなんだ。

阿部に想われている人は、どんな人だろう。

「想ってるだけで幸せ」と言える人。

目黒の想いは「困る」と言われた。

でも、簡単に嫌いになれない。

目黒にとって、大事な恋。

時々、思い出したように阿部に告白する。

困ったような顔をして、「ごめんね」って言う。

3か月、言い続けた。

最初は「ごめんね」と言っていた阿部だが、3か月を過ぎる頃から言わなくなった。

目黒に気持ちが動いたのではなく、自分の恋が上手くいっていないから。

阿部ーめめみたいに、言い続けてたら想いが通じるかと思ったけどダメだった。

目黒ー俺じゃあ、その人の代わりになれない？

阿部ー今、気持ちがへこんでるから、めめの気持ちが嬉しい。

目黒ー阿部ちゃん。

阿部ーでもやっぱり、大事な気持ちなんだ。簡単に、めめの気持ちに応えられない。

そうやって、想い続けて1年が経った。

楽屋の隅で阿部が泣いてる。

阿部の好きな人が、付き合いを始めたと言われたらしい。

阿部は完全に失恋した。

目黒は、阿部の話を聞く。

阿部ーそりゃそうだよね。可愛い女の子がいいよね。

目黒ー阿部ちゃんの好きな人は男だった？

阿部ーおかしいでしょ。

目黒ー俺の好きな人も男だけど？

阿部ー俺なんかを好きになっても先がないよ？

目黒ー抱きしめてキスできるじゃない。

阿部ーそこから先はあるの？

目黒ーあるけど、泣くことになる。

そこへメンバーが入ってきた。

阿部は、楽屋を出て行った。

渡辺ー追いかけろ。

目黒ー翔太くん。

渡辺ー大事なんだろ？

目黒ー知ってたの？

渡辺ー何年お前と一緒にいる。

目黒ー行ってくる。

渡辺ー上の階に行く階段にいる。

目黒ーありがと。

誰もいない階段。

泣いてないけど、寂しそうな顔をしてる。

そっと目黒が近づいても、動かない。

目黒ー阿部ちゃん。

阿部ーめめと付き合うと、俺が泣くの？

目黒ーうん、でも大事にする。

阿部ーありがと、ちゃんと考える。

目黒ーずっと待ってる。

阿部ーめめは優しいね。

目黒ー阿部ちゃん限定だけど。

2人で笑い合う。

少しずつ阿部が目黒を意識するようになっていく。

ちょっとした優しさが嬉しい。

目黒の想いが伝わってくる。

阿部の失恋の傷は目黒の優しさが癒してくれた。

意識して見ると、目黒は優しいし、年下を感じさせない。

阿部ー俺のこと、まだ好き？

目黒ーずっと好き。

阿部ー俺ね、この気持ちが何か分からないけど、めめと一緒にいると落ち着く。

目黒ー俺は喜ぶところ？

阿部ーうん、一緒にいて楽しいし落ち着くし、ちょっと好きになってきたかも。

目黒ーどうしたら、もっと好きになってくれる？

阿部ー時間かなぁ。一緒にいる時間だと思う。

目黒ー一緒にいてくれるの？

阿部ーいたいって思うよ。

目黒ー嬉しい。

阿部ー出かける？

2人は少しずつ近づいていく。

まだ友達の域を超えていないが、仲良くしている。

一緒にいると楽しい。

阿部は目黒といるのが、当たり前になってきた。

休みの日とか、早く仕事が終わって帰って来たら、目黒が会いに来る。

料理の上手な目黒が晩ご飯を作り、阿部と一緒に食べる。

悪いからと阿部が洗い物をする。

2人は、互いの家を行き来するようになって、親密度が増した。

阿部ーずっと考えたんだけど。

目黒ーん。

阿部ーめめが皆んなより特別みたい。

目黒ー特別と好きは違うの？

阿部ー一緒だと思う。

目黒ー阿部ちゃん！

阿部ー俺は勉強するから、1人の時間がいるんだけど、それでもよければ、付き合いますか？

目黒ー嬉しい！

阿部ー俺も、なんか嬉しい。

目黒ー大事にする。

阿部ー少しずつ進んでね。

目黒ー嫌なことははっきり言って？

阿部ー分かった。

目黒ーキスしていい？

阿部ー軽くね。

目黒ー中学生みたい。

阿部ーまだ初めてだからね。

会うたび、目黒は阿部にキスをする。

阿部も慣れてくる。

だんだん物足りなくなってくる。

阿部ーめめ、もっと大人なキスしていいよ？

目黒ーふふふ、ありがとう。

阿部ーしばらくは我慢してね。

目黒ー何を？

阿部ーその先に何があるか、俺だって分かるよ。

目黒ー今までで満足してるから大丈夫。大人なキス出来るだけ、嬉しいし。

阿部ー少しずつしか進んでないけど、大丈夫？

目黒ー今言ったでしょ、満足してるからって。

中学生みたいな恋から大人な恋に。

ゆっくりだけど時間をかけて、進んでいく。

目黒が阿部の身体を、そっと撫でる。

くすぐったいって顔してる。

キスから先に進むのはまだまだ先だと思っていたのに、阿部が妖しく誘ってくるようになった。

目黒ー進んでいいの？

阿部ーふふふ、優しくしてください。

目黒ー気持ちいいことだと思うから。

阿部ー恥ずかしいから真っ暗ね。

目黒ーいつかは、可愛い顔を見せてね？

阿部ー恥ずかしい。

だが、目黒が思うより早く阿部の可愛い顔を見ることが出来た。

阿部は可愛い声で啼く。

快感に身を委ねてる阿部、目黒は優しくもっと快感の高みに誘う。

阿部ーめめ・・あつい・・なんとかして。

目黒ー出して？

阿部ーんっ・・あっ・・でる・・。

目黒ー可愛い。

阿部ーあぁ・・まだ・・でる・・で・・る。

目黒ー阿部ちゃん・・。

阿部ーんっ・・めめは？

目黒ーん、ちゃんと感じた。

2人はそうやって3年の月日を共にしている。

泣かすのは本意ではないが、ここから先は阿部は泣く。

どうするか目黒は阿部に聞く。

阿部ーごめん、勇気ない。

目黒ー今でも満足してるから大丈夫。

阿部ー俺のこと、嫌いにならないで？

目黒ーもっと好きになった。

阿部ー何で？進めないって言ったのに。

目黒ー自分に正直だから。俺のために無理してほしくない。

阿部ー待ってね。

目黒ーずっと一緒だからいつまでも待つ。

阿部ーめめ、好きになって良かった。

目黒ー嬉しい。

そこから先はまだまだ先だけど、いつかは結ばれる日が来る。

2人は、1日1日を大事にしている。

グループが忙しくなって、会えない日も出てくる。

会える日を大事にして過ごしている。

互いに「好き」だと言いながら。

完