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「今より、約四十分前に土蜘蛛本体が大聖病院に出現。土蜘蛛は病院内の人間を、あの気持ちの悪い胎の中に吸収」
「吸収だと!? おい、取り込まれた人達は無事なのかっ」
「それは僕も知りたいわっ! 先に僕の話を聞けっ。さらに土蜘蛛は病院内に蜘蛛の巣を張りめぐらし、眷属を呼び寄せやがった。しかも他の妖に力を渡しているのか、小物が中級ぐらいの妖に──って、一気に喋らすな! むせるわっ!」
言葉通り真守はゴホゴホっとむせて、大きく深呼吸した。
そして、はぁと大きく呼吸をしてからまた俺ではなくて、病院の屋上にいる土蜘蛛を鋭く睨んだ。
俺もつられて土蜘蛛を見る。
土蜘蛛が人を食べるのではなく、腹に吸収。まるで人質みたいだとゾッとした。
「たまたま、僕が近くにいたから土蜘蛛の初動は抑えた。病院全体に|真円《しんえん》結界を張った。だから吸収された人達も、その恩恵は受けてると思いたいところやな」
「真円結界か。|大業《おおわざ》だな」
真円結界は対象物を中心に球体の結界を張って、妖を完全に閉じ込めてしまう結界。地面や空に逃げてしまう妖に有効だ。
並の妖ならばその中に閉じ込めるだけで、祓うことも可能。結界の中に居る人には、ある程度の浄化作用もある。
そうか。だから土蜘蛛の動きが鈍いのだとわかった。
真守の結界と帝都中の結界。二つの結界の効果も土蜘蛛に作用しているはずだ。
しかし、大妖だけあって足止めはされても、結界だけでは祓い切れないというところか。
真守が舌打ちをしてから、俺に向きなおった。
「はぁ、しんど。分かっていると思うけど、結界だけでは祓い切るのは無理や。とにかく大業ぶち込んだけど、規模が大き過ぎる。あと五分ほどで結界は壊れる」
「あともう一回、真円結界を張れるか? その間に俺がなんとかする」
「ふざけんな。鬼軍曹。命が幾つあっても足らんわっ! って、言いたいところやけどな」
真守はぐいっと両手で乱れた髪を後ろへと撫で付けてから、じっと俺を見た。
「このあと結界は壊れる。けどあと一回、土蜘蛛だけに的を絞って、すぐに僕と梔子家の人間が真円結界を貼り直す。ええか。良く聞けよ。病院敷地内面積 約一六五〇平方メートル、病床数二百。患者や病院関係者、三百名近くが敷地に閉じ込められている。中には中級程度の土蜘蛛の眷属まで蔓延っている。言わば土蜘蛛の人質や。それをまずは助ける」
真守は息を整え、あとは走りながら話すと俺を先導する形で走り出した。
その後ろをぴったりと着いていく。
周囲は不気味に静まり返っていて俺達の走る音、息遣い。そして、病院から聞こえる建物の軋む音に、土蜘蛛が脚をもぞもぞと、動かす奇妙な音が重なる。
起きたまま、悪夢の中に入り込んだ気持ちになった。
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