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「土蜘蛛に吸収された人達を先に助けてやりたいが、足場を整えてやらんと、新たに土蜘蛛に吸収される人が出てくるかもしれん」
「そうだな。近くに人がいると巻き添えの恐れがある。しかも病院。患者の安全が優先」
喋りながら、これは本当に防戦。
下手に攻撃できない。時間との戦いだと思った。
真守が俺をチラッと見た。
「間違っても、|黒洞《こくどう》を使うなよ。これは時間との勝負や」
「分かっている」
返事をしながら道を曲がる。
土蜘蛛の巨体がまた近づく。
すると生臭い匂いが漂ってきた。土蜘蛛から発せられる| 瘴気《しょうき》だろう。思わず眉をひそめてしまう。
「そんなわけで、十五分ほどで救出を完了させろ。僕の結界の維持が出来る時間や。お前のところの上級隊員や|白百合《さゆり》家も全員投入。ギリギリで行けるやろ。病院から人を救出さえしたら、あとは後方支援の|梅桃《ゆすら》や|馬酔木《あしび》がなんとかする」
「そのあとは俺が土蜘蛛に吸収された人を助ける。土蜘蛛に皇宮に環の存在を知らしめ、土蜘蛛を誘き寄せて倒す──か」
「そうや。死んでもやりきれ」と言う、真守にどちらが鬼軍曹かと思うが、やるしかない。
環を守るにはそれしかない。
じゃりっと音を立てながら、また一歩、足を前に踏み出す。
病院はもうすぐそこだ。
そんな時に真守がふと喋った。
「それと、これはなんて言うか予感やけどな。土蜘蛛が最初現れて、大暴れする様子はなかった。人を吸収したり、|眷属《けんぞく》を呼び寄せたりした後は大人しかった。まるで誰かを……待っている気がした。本当の狙いはお前の嫁じゃない、もっと違うかもしれんから気をつけろよ」
「……俺の心配をしてくれるとか、明日は大雨か台風か」
「ふんっ。誰がお前の心配なんかするか。明日を無事に迎えてから言え」
「そうだな」
今日は長い夜になりそうだと思いながら、道を駆け抜けるのだった。
──それからはまさに戦場。
病院に到着すると、ここが帝都だと忘れてしまうほどだった。
先に到着していた杜若家の隊員達と合流し、環が葵隊員によって皇宮に向かっているというのを聞いた。
あとは俺の番だ。
全てを終わらせて環を安心させてやりたい。
前世など関係ないと何度でも言いたい。殺伐とした空気の中、陣営を築き、指示を飛ばす。
ぞくぞくと集まってくる五家の人々は前もって準備していた為、混乱を生じることなく滞りなく連携をして組織体制、陣営を作り上げていく。
その間にも真守が病院の前で陣を敷いて、梔子家一族と共に土蜘蛛だけに真円結界を張り、土蜘蛛を再び足止めの準備に入る。
土蜘蛛はじっと、金色のギョロリとした瞳をこちらに向けているだけ。
それが却って不気味さや不穏さを煽る。大人しくしているのは有り難いが──現場の不穏な空気は増していた。
しかし暴れ狂うよりかはいいと、自身を納得させた。
そうして警戒の意識は屋根の上の土蜘蛛へと怠らず、いよいよ救出作戦が始まった。
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