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「第二秘書ディアブロ、只今戻りました」
◇◇
――少し遡ろう。これは、俺がディアブロに「仲間を集めてきてくれ」と頼んだ時の、舞台裏から始まる物語だ。
事の始まりは、はるか遠く、冷徹で禍々しい『冥界』でのこと。
いつもは静寂が支配するその世界が、なんだか妙に騒がしかったらしい。
その中心にいたのは、ギィの系統に属する、名前を持たない一体の古い悪魔。
原初の悪魔たちが誕生してほんの数年後に生まれたという彼女は、実力こそあれど、なぜか昔からヴィオレやブラン、ジョーヌといった我が強い原初三人娘の玩具(お気に入り)にされるのが日常茶飯事という、ちょっと苦労人気質な悪魔だった。
「何…? ノワール……。」
怪訝そうに顔をしかめる彼女に対し、男は不敵に、そして実に忌々しげな(おっと失礼、嬉しそうな)笑みを浮かべて言い放ったという。
「クフフ、これからは”ディアブロ”、と呼ぶように」
「は? 名前……?」
呆然とする彼女の様子を見て、ディアブロのテンションはさらに跳ね上がる。
「羨ましいですか? 羨ましいですよね? そんな貴女にっ! 朗報がありますよ。貴女もリムル様の素晴らしさを知れば、のり気になるはずです」
のちに彼女から聞いた話だが、この時の彼女の心境は「え、やだ。何で私が? しかもなんかこいついつにも増して気持ち悪いな……」という、極めて真っ当なドン引き状態だったらしい。ディアブロ、お前あっちで一体どんな顔してたんだよ。
ともあれ、彼女がどれだけ嫌がろうと、あの偏執的なストーカー悪魔が引くはずもなかった。
「拒否権はありませんよ?」
有無を言わせぬ笑顔で迫るディアブロ。
彼はそのまま、ヴィオレ、ブラン、ジョーヌの三人娘もまとめて勧誘(という名の強襲)に赴いた。聞けば、ジョーヌを圧倒的な力でねじ伏せ、ヴィオレを痛烈な論破と煽りで精神的に追い詰め、ブランには「つまらなければノワールごと殺すけれど、面白そうね」なんて物騒なセリフを吐かせながら、全員を半ば強制的に連行したのだとか。
……いや、、本当にうちの第二秘書は何やってんの? 怖すぎるだろ。
◇◇
そして現在、舞台は、我が魔国連邦(テンペスト)へと移る。
テンペストの我が執務室の扉が開き、いつも通り優雅に一礼するディアブロの姿があった。内心、無茶な命令を出して送り出してしまったなと思っていたので、その姿を見てホッとする。
「おぉ、おかえり!心配しちゃいなかったけど無事で何よりだよ」
俺が軽い気持ちで労いの言葉をかけると、ディアブロの表情が劇的に凍りついた。いや、凍りついたというより、感極まりすぎてバグっている。
「っっ……!?!?有り難き幸せっ……!!歓喜余って泣きそうですっ……」
「あ、あぁ……それで、仲間集めは?(よし、無視しよう)」
相変わらず重い忠誠心だな。これ以上構うとまた長くなるので、俺は綺麗さっぱり話を流して本題を促した。
「クフフ、リムル様にご挨拶させても問題ない、と私が判断した者が4人」
ディアブロの言葉に、俺は彼の背後に控える面々に目を向けた。
……おぉ、4人とも女性か。しかもかなりの美人揃いだ。
お転婆そうな金髪の美女、お淑やかそうな白髪の美女、お転婆そうな紫髪の美少女。
ディアブロの古い知り合いだっけ?でも、不思議とそこまで強そうには見えない。普通の人間のお姉さんたちって感じだが……。
『告。この4名はデーモンの中でも最上位者、アークデーモンです。魔素を完全に制御して人間に擬態している模様』
脳内で知慧之王(ラファエル) さんの無慈悲な解説が響く。
……マジかよ。アークデーモンが4人も並んでるのかよ!なるほど、気配を完全に隠しているから強そうに見えなかったわけか。
納得した俺は、素直にその技術を称賛することにした。
「なるほど、すごい擬態だな!」
俺が素直に感心してそう口にすると、彼女たちのうち3人が「……まさか見破られるとは」と言いたげに、フッと不敵な微笑みを浮かべた。ん? 俺、なんか変なこと言ったか?
それよりも、俺の視線はある一点に釘付けになっていた。
「――ってディアブロー!? 何でその子だけ物理で運んでんだよ!?(※今更)」
我に返った俺は、相変わらず一人…いや、一体?の小柄な女の子の足を片手で掴んでズリズリと引きずっている我が秘書に思わずツッコミを入れた。引くわ、普通に引くわ!
「これは失礼」
俺に怒られたのが相当ショックだったのか、ディアブロは慌ててその手を離した。床にドサッと落ちた女の子は、心底めんどくさそうに溜息をついている。
気を取り直したように、金髪の美女――ジョーヌが前に出てきた。
「初めまして、魔王リムルだ」
俺が挨拶を交わすと、ジョーヌは獰猛な笑みを浮かべて俺を睨みつけてくる。
「私たちの正体を一瞬で見抜くとはな。――ならば……っ!」
刹那、室内がピリリと凍りつくような感覚。ジョーヌが自身の魔力を少しだけ解放し、こちらを威圧してきたのだ。部屋の空気が一気に重くなる。ジョーヌの身体から、周囲の空気が爆ぜるほどの荒々しい魔力が解放され、俺に向けて強烈な威圧が放たれた。普通の人間なら精神ごと消し飛びかねない一撃だぞ?
(おいおい、初手から挨拶代わりの洗礼かよ)
だが、ここで怯むわけにはいかない。魔王としての格を見せるため、俺もほんの少しだけ――本当に俺の感覚としては「ほんのちょっぴり」だけ、魔力を解放してその威圧を綺麗にいなしてみせた。
「……ほお、流石だ……我があるじ。我が軍勢200を引き連れ、リムル様の軍門に降るとしよう」
ジョーヌは満足そうに満足そうに頷き、一歩退いた。よし、まずは一人クリア。
「よろしくな!」
すかさずディアブロが「失礼しました。続いて」と次の者を紹介する。
白髪の美女、ブランが優雅に一礼した。
「初めまして、リムル様。私と配下200。是非ともリムル様の配下へとお加えくださいませ」
続いて紫髪の少女、ヴィオレが不敵に笑う。「ボクも同じだよ、です。ボクのしもべ200と一緒に、リムル様にお仕えしたいです」
続いて紫髪の少女(ヴィオレ)も、猫を被ったような愛らしい笑みで頭を下げてきた。
「おお、2人とも頼んだぞ!」
これで合計600以上の軍勢が手に入ったことになる。大戦果じゃないか。そう思ってディアブロを見ると、なぜか彼は地面に膝をついて絶望していた。
「1000体用意するつもりが…自らの無能を恥じるばかりですっ……!!!(血涙)」
「いやいや充分多いから!!!」
むしろこれ以上連れてこられたら、テンペストがパンクするわ!そして俺は、さっきディアブロに手放されようやく自由の身になったものの、未だに床に転がっている最後の1人に視線を落とした。呆れ半分、引き気味にディアブロを問い詰める。
「で、ディアブロ。お前がその物理で引きずってきた子は……?」
「リムル様、この者はルージュ系統の古き悪魔にございます。冥界から、半ば強引に連れてまいりました」
ギィ系統の、古い悪魔。原初ほどではないにしろ、そんな大物がなんでディアブロに荷物みたいに運ばれてるんだよ……。
床からノロノロと起き上がったその子は、服の埃をパッパと払うと、ケロッとした表情で俺を見上げて手を振ってきた。
「初めましてリムル様」
「お、おぉ、初めまして……!」
あまりのマイペースさに拍子抜けしながらも、心なしか三人娘よりずっと常識人(悪魔だけど)に見える彼女に、俺は少しホッとして笑顔を返す。するとその子はとんでもないことをサラッと言い放った。
「私、配下は150くらいしかいないけど、好きに使っていいよ〜」
「……は?」
……ちょっと待て。ディアブロ、お前本当に何をスカウトしてきたんだ?
俺は思わず耳を疑った。
配下、150?
アークデーモン(というか原初)だけでもお腹いっぱいなのに、どいつもこいつも軍勢を引き連れてきやがった。合計で何人だ? 200足す200足す200足す150……。――うん、総勢750名超の超過激悪魔軍団の誕生である。
「お前、なんでそんなに配下いるんだよ!?」
思わず、俺の素の叫びが執務室に響き渡った。どうやら、我がテンペストにまた一人、とんでもない規格外の新人(しかもディアブロ被害者の会)が加わってしまったらしい。俺は頭を抱えつつも、これから始まる騒がしい日々に、少しだけ口元を緩めるのだった。
#東リべ
ぱなっぷ
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53
#クロスオーバー
ココア☆
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コメント
5件
読了!めっちゃテンポ良くて一気に引き込まれたわ〜。ディアブロの重すぎる忠誠心と、ラファエルさん(智慧之王)の無慈悲な解説のコンビネーションが原作の空気そのままで安心した。物理で引きずられてるルージュ系統の悪魔ちゃんが一番気になる…あの「配下150、好きに使っていいよ〜」がサラッと怖すぎる(笑)。続きでどんな規格外っぷり見せてくれるのか、めっちゃ楽しみ!🔥