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「名前どうしよ……。あ、じゃあ……『子翠(しすい)』だ!」
ひらめいた名前を口にすると同時に、その子の魂へ俺の魔素が流れ込み始めた。
彼女――『子翠』の見た目は、翡翠(ひすい)のような緑の要素は一切なく、赤紫がかった茶髪に茶色の瞳をしている。本人は不思議そうな顔を浮かべている。
その瞬間、俺の体内からとんでもない量の魔素が、一気に子翠へと流れ込んでいった。
(……あれ? でも、寝ないな……?)
いつもなら、アークデーモンクラスに名付けをすると、進化の負荷に耐えるためにその場で気絶(スリープモード)に入るはずだ。ガビルやゲルドの時もそうだった。なのに、子翠はケロッとした顔のまま立っている。
『解。対象の魔素量はアークデーモンの中でも上位ですが、魔王リムルの現在の最大魔素量の数パーセントに過ぎません。そのため、気絶(スリープ)モードに移行する必要はありません』
脳内で知慧之王(ラファエル)が、事も無げに教えてくれた。なるほど、今の俺の魔素総量が規格外になりすぎて、数パーセント削られたくらいじゃ彼女のキャパシティを超えないってことか。
(あ、そうなの? 良かった、今回は起きたまま進化を見届けられるな!)
そんな脳内会話を繰り広げている俺の前で、子翠の身体が柔らかな光に包まれた。名前が彼女の魂に深く刻まれ、肉体と魔素が爆発的な勢いで最適化されていく。
やがて光が収まった時、子翠の姿は少しだけ変化していた。
光が晴れた彼女の格好は、鮮やかな赤いブラウスに、きりっとした黒いネクタイ。
そして、ひらっとした黒いミニスカートへと変わっている。
本人の好みに合わせたのかは不明だが、非常に動きやすそうで、着心地が良さそうだ。
……でも、ちょっとスカートが短くないだろうか?
(っていかんいかん、俺は一体何を考えてるんだ。まるでおじさんみたいな心配をしてしまったぞ……)
前世の記憶がうっかり顔を出したのを、心の中で激しく首を振って誤魔化す。
さて、問題はまだ後ろに控えている3人だ。子翠一人でこれだけ魔素を持っていかれたんだ。原初の彼女たち3人に一気に名付けなんかしたら、間違いなく俺の魔素は枯渇して、今度こそ俺がスリープモードに入ってしまう。
俺は冷や汗を拭いながら、ジョーヌ、ブラン、ヴィオレの3人に向き直った。
「3人は後でな! ちょっと魔素の消費がヤバくなる気がするから」
正直にそう告げると、彼女たちは不満を漏らすどころか、妙に神妙な面持ちになった。
「「「はい!」」」
なぜか完全に納得した様子で、力強く返事をする三人娘。
どうやら彼女たちからすれば、原初である自分たちの名付けにどれほどの魔素が必要か、そしてそれを「後回しにすれば問題ない」と言い切る俺の底知れなさに、改めて戦慄したらしい。
(いや、本当に俺の身が持たないだけなんだけどな……?)
内心でそんな言い訳をしつつも、こうしてテンペストに新たな強力な仲間(と、大量の配下)が加わることになったのだった。
コメント
3件
うわ、名付けのシーンすごく鮮やかでしたね!魔素が流れ込む描写と「寝ない」ギャップに思わず笑いました。スカートの心配でおじさん化しかけるリムル、可愛いです(笑)。原初たちが「後で」と言われて戦慄するのも面白くて、またこの世界観の奥行きが広がった感じがします!
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