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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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「……ふへぇ」
「シ、シロさ~ん? 大丈夫?」
アレから数日後、いつも通りサブキャラでログイン。
したのは良いんだけど……物凄く、気が抜けているのが自分でも分かる。
声を掛けてくれたクロさんに対して、すみません大丈夫です! なんて言いながらブンブンと頭を下げてみるものの。
やはり、集中出来ていないのは確か。
原因に関しては、間違いなく賞金首の10番目。
彼のコピーと戦闘を繰り広げ……一応、勝率は良い結果になっている。
なっているんだけど……なんか、変! という感じが拭い切れないのだ。
本当に現代の人? とか思っちゃうほどに刀の扱いに慣れているし、ソレを封じる一手が打てたとしても。
相手はナイフなどの刃物を使って襲い掛かって来るのだ。
まさに近接戦闘の達人、これだけはハッキリ分かる。
此方も銃を奪われ、ナイフファイトに持ち込まれたりなんかしたら絶対負けるし。
何かもうこれまでに見た事の無い動きを繰り出し続け、こんな戦い方があるの!? と驚愕してしまった程。
なんだけど……変な所で、ラッキーパンチが入るというか。
妙なタイミングでキルが取れてしまったりして、勝ったというのに困惑してしまう事が多々。
そんな訳で、もう一回もう一回と何度も兄におねだりしてしまい。
なんかもう昔みたいに、ひたすらあの戦闘をやりこんでしまっているという訳だ。
そろそろ寝なさいと度々怒られる事態にまで発展してしまい、最近少々寝不足という事もあり。
サブキャラで遊んでいるのに、なんだかボーっとしている。
「すみません、今日……ミスしてばっかりで」
と言う事で、仲間達に向かって頭を下げてみれば。
「ヘーキヘーキ、そういうのをサポートするのもパーティ戦だからさ。全然気にしなくて大丈夫よ?」
いつも通り、頼もしい言葉を掛けてくれるグレーさんと。
「フフッ、どいつもこいつも分かっていないな。だからいつまで経っても童貞なのだ……」
「こら、出っ歯。シロさんも居るんだから、いちいちそういう言葉を混ぜるな。男だけのバカ騒ぎじゃないんだからね?」
何やら意味深な発言をする出っ歯さんに対し、クロさんがジトッとした眼差しを向けている。
そして。
「ズバリ! シロ、貴様……今の期間、生理――」
相手がおかしな事を口走った瞬間。
グレーさんが機関銃で、クロさんが狙撃銃で。
出っ歯さんの顔面を派手にぶん殴ったではないか。
もはやコメディ映画みたいな勢いで吹っ飛んだ出っ歯さんは、無駄に遠くまで転がって行き。
やがて、死亡判定が下る。
殴った片方に関しては、かなり筋力に数字振ってるし……まぁ、こうなるのか。
その後リスポーンして戻って来たかと思えば。
「痛いじゃないか、お前達」
「死ね、マジで」
「次おかしな事言ったら、殴るじゃ済まないからね?」
お二人から、ハンドガンを額に付きつけられていた。
わ、わぁ……絵面が凄い事になっているけど。
「え、えと! 違いますので、大丈夫です! 私の場合は、もう少し先と言うか――」
「答えなくて良い答えなくて良い! シロさんそこは結構デリケートな話になるから!」
「出っ歯……な? もう一回、死んでおけ。な? お前、デリカシーってモンを母ちゃんの腹の中に置いて来たか? 殺してやるから、もう一回生れ直して来い。今度は忘れもんするなよ?」
慌てて声を上げるクロさんと、普通に引き金を引いたグレーさん。
彼が持っているハンドガン、今はでっかいリボルバーだったりするので。
当然の様に、一発でキル判定。
その後、もう一回戻って来た出っ歯さんは。
「痛いじゃないか!」
「おかえり、今度はデリカシーもちゃんと持って来たか?」
「出っ歯……あのね? 俺も一回撃って良い?」
「だ、大丈夫ですので! お二人とも落ち着いて!」
そんなドタバタもあったけど、本格的に私の体調不良なども疑われてしまい。
結局本日は、どこかでのんびり過ごそうという形になってしまった。
非常に、申し訳ないけど。
などと思いつつも、皆でクラフトしたりして遊んでいれば。
「そういやまた、運営から大規模イベントのお知らせ出てるけど。シロさんは今回参加出来そうなん?」
急に、グレーさんがそんな事を言いだした。
イベント? あれ?
私は特にこれと言って、お仕事の話聞いてないんですけど……なんて、思ってしまったけど。
思い出してみれば、兄から貰った企画書に書いてあった気がする。
私達賞金首のコピーのお披露目イベントと同時に、その後はこれらのNPCを各地に配置。
これによって“賞金首の練習台”みたいな扱いになるって書いてあった。
そっか、ずっと“timelimit:10”との戦闘に明け暮れていたけど、そろそろなのか。
もともと私がやっているNPCテストも、お兄ちゃんが何故か止めちゃってた状態でしかなかったみたいだし。
本当に最終段階のチェックというか、私達も試してみてね~程度だったのかも。
そんな訳で、ブンブンと首を縦に振ってから。
「多分、にはなっちゃいますけど。急な“バイト”とか入らない限りは、大丈夫だと思います」
「フハハハッ! それでは今度のイベントはスプリンターコンビが結成出来るな! こうなって来ると、もはやシックスなど敵ではない! 共に行こうシロ! 我々で超近接戦の何たるかを賞金首の連中にも教えてやるのだ!」
元気な声を上げる出っ歯さんだったが、此方としては本当に賞金首のお仕事が入らなければ……なので。
一応まだ分からないと何度も伝えたが、相手のテンションは上がりっぱなし。
ついでに言うと……現在“超近接戦の何たるか”に関しては、改めて私も勉強中です。
とんでもないお手本と、毎晩の様に6keyで戦っているので。
◆
シロさんの様子がおかしくなり始めてから、早数日。
最初はそれこそ、俺が無理矢理デートに誘ったから気まずくなっているんじゃ? とか。
デートとして、全然つまらなかったとかで嫌われたんじゃ……なんて不安になってばかりだった。
実際の所、俺は彼女がシックスかどうかという項目を確かめる為に、白川さんをデートに誘ったと言っても良い。
思い返してみればね、馬鹿としか言いようがない。
目的と行動の順序が、逆!
思考がどうしても一方向へと向かってしまい暴走した訳だけど、これ相当とんでもない事してるからね!?
前までの俺だったら、相手にデートだと認めてもらえて、その上でお出かけに付き合ってもらっただけでもずっと喜んでいた自信がある。
だというのに、帰って来た後俺は何を考えていた?
何度も何度も射撃レンジに立った彼女を思い出し、本当に目の前の問題にばかり目を向けていた。
違うよ馬鹿、なんの為に彼女と同等になりたかったのか思い出せ。
最終目的地は、あの子に好きだって伝える事だろうがい。
これに対しての重要な一歩を、どうして無下に出来ようか。
今現状の、“普通の女の子”としての彼女を見てから……そんな思考回路ばかりに陥っている。
俺マジでガキ……何が目的に対しての順序を整える癖が付いた、だよ。
全然出来てない上に、気になった事に対してまっしぐらになった馬鹿としか言いようがない。
これでは本日の出っ歯に対しても、デリカシーが無いなんて言えたモノじゃないだろう。
「はぁ……とは言っても、今度は白川さんもイベントに参加出来るのか」
疲れた溜息を吐きながらも、ポチポチとパソコンを弄ってガンサバの公式ページを表示。
もしも次のイベントが“賞金首”主体のソレでは無かった場合、疑いは更に強くなると言っても良い。
本人が主役として登場しないからこそ、こっちと一緒に遊べる……みたいな。
どうしても“確証”が欲しくて、何度でもこういう思考回路に陥っているのが分かる。
駄目だな、こういうのは。
いくら細かい証拠が残っていようとも、まだ確たる結果を導き出せていないのに。
俺の疑念を真実の様に思い込んで、他の出来事を当て嵌める癖が付いている。
もしもコレで全然見当外れでした、シックスは彼女でも白川さんのお兄さんでもありませんでした。なんて結果になってみろ。
ものっ凄く馬鹿みたいだぞ、俺……。
もはや何度目か分からないため息を零しながらも、公式ページのイベント情報を覗いてみると。
どうやら、丁度内容が更新される日だったらしく。
なになに? 次のイベントの詳細は――
「ブッ!」
それを見た瞬間、思い切り吹き出してしまった。
待って、本当に待って。
俺の妄想が全て合っているんじゃないかって程の情報が、というか外堀が。
どんどん埋まって来ている気がするんですけど。
だって、イベントの紹介ページに載っている人が。
「兄貴! ねぇ兄貴!」
「んー? どうしたどうした。元気だな」
バタバタと慌てながら、兄の部屋に駆けこんだ。
そして、スマホでもう一回ガンサバのページを開いてから相手に突きつけ。
「コレ! 賞金首の動きを学習したNPCの登場! ストーリー的には色々書いてあるけど、書いてあるけど!」
「あ、あぁぁ~……やべ、忘れてた。そりゃそうだわな」
各賞金首のコピーNPC、その一人。
サングラス掛けてるし、ちょっと雰囲気も違うけど。
間違い無く、“白川さんのお兄さん”が居るのだ。
「9Kのコピーが兄貴と全然似てないって事は、本人をスキャンしたって訳じゃないよね!? 兄貴のNPC、この人誰がモデル!?」
「……黙秘。仕事に関わる事なので」
「ガンサバの賞金首って、もしかして“担当”みたいな人って居たりする!? ホラ! 小説家とか漫画家みたいに! これってひょっとして、9K“担当”の運営陣の人だったりする!? 普段の厳つい海外マフィアみたいな顔したNPC一人も居ない! 絶対モデルが居るでしょ!?」
「…………黙秘!」
これは、決まりかな?
だとすると、全部辻褄が合う。
シロさんが今度のイベントに参加出来るのは、6key本人が登場しないから。
そしてここに、しかも彼のコピーNPCとして白川さんのお兄さんが登場しているのは、6keyの担当さんだから。
更に言うのなら、以前兄貴と白川さんのお兄さんが話していたのは、運営陣の……しかもシックスの担当だから。
だからこそ白川さん本人とじゃなくても、あの人を通して仕事の話が出来る。
もっともっと妄想を垂れ流すのなら、兄貴が彼と話していたのは……賞金首のチーム戦の後。
あの時のチームって、9Kと6keyは同じ部隊に居たし。
その二人が話しているのは、なんら不思議はない。
つまり……。
「やっぱり、白川さんが……“シックス”」
「ん~……黙秘! ちゃんと自分で確かめてから結論付けろ! そう教えた筈だぞ!」
なんか物凄く必死に誤魔化そうとしている兄は、どうにかこうにか俺を部屋から追い出したけど。
けど、やっぱりそういう事なのだろうか?
だとしても、“仕事”である以上本人の口から聞き出すのは厳しいだろう。
なら。
「少なくとも、“関係者”にならないと……ハッキリとした答えが出ない?」
そうなって来ると、俺が目指す先はかなり変わって来るのだが。
コメント
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うわあ、今回も読みごたえあった……!まず出っ歯さん、またやらかしてて笑っちゃったんだけど、クロさんとグレーさんの連携即死コンボが凄すぎる(笑) でもシロさんのぼんやりした様子、これまでの戦闘の反動なのかなって思うとちょっと心配になる。それにしてもクロくんの迷走っぷりが切ない……「デートの目的が確証集めになってた」って自己分析、胸が痛いよ。白川さん=シックスの確信がどんどん強まってるのも緊張する展開だね。次が気になる!