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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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その後、何度も賞金首の10番目のコピーと戦闘を繰り返したが。
やはり此方が覚えた違和感は拭えず。
勝率として、8割は勝てる程度に安定して来るほどまでにやり込んだ。
なのにやっぱり、変なのだ。
相手がどうしても“手札を隠している”としか思えない。
これを警戒し過ぎて、2割は負け続ける。
何と言うか……凄く気持ち悪い感覚に陥りながら、ひたすらやり込んではいるものの。
結局答えは見つからず、断念する形となってしまう。
私がどんな行動を取ろうとも、彼は“隠した何か”を見せてくれない。
例え絶対絶命と言える状況に陥ろうとも、その切り札を使わないのだ。
今までのNPC戦であれば、こんな感覚に陥る事は無かった。
敵の出来る範囲はここまでなんだと、確かに納得出来る何かを見つける事が出来たのに。
彼にだけは、どうしても“ソレ”が訪れないのだ。
これは多分私の方が戦い方を変えないから。
6keyではきっと、このNPCからこれ以上の何かは引っ張り出せない。
なんかもう直接本人に色々聞きたくなってしまう程、モヤモヤとした感覚を抱きながらも。
普段通りの日常生活を送っていれば……。
「シロさん、あの……さ。コレ、試しに使ってみてくれないかな?」
「はい?」
本日のサブキャラプレイ中、急にクロさんからハンドガンを渡された。
見た感じは普通というか、これまでも他の人が使っているのは確認した事のある四角い銃。
というか、私が“こっち”で使っているヤツのフルサイズ? なのかな?
パーツは付いていないのに、46leatherの手では全体的に少々大きい様に感じてしまうが。
「あ、れ? わりと馴染むと言うか、結構普通な感じですね? 銃口が長いから、てっきり扱い辛いかと思ったんですけど」
どうやら普段使っているソレに比べても、そこまで大きさの違いは無かったらしく。
それこそアレか、クロさんから貰った銃はカスタムパーツが標準装備だから、その分も合わせれば大して変わらないのか。
などと一人で納得していれば、クロさんはまじまじと此方の構えを覗き込んで来て。
「持った時に違和感とか、掴み辛いとかある? もしくはいつものヤツより重いから扱い辛いとか、そういうのってあったりする?」
「い、いえ? 特には……多分? まだ構えただけなので、良く分からないですけど。あぁでも、ちょっとだけグリップが滑る様な感じがあるかも……ですかね? 私、手が小さいので」
それだけ言ってから、相手の前に向かって空いている方の掌を広げてみせると。
クロさんは真剣な表情をしたまま、ピタッと自分の掌を合わせて来た。
はい? ……ぇ、え?
急な行動に頭が追い付かず、そのまま固まってしまったけど。
向こうは非常に真剣な表情のまま、こんなに違うのか……とか。
だとしたらこっちと組み合わせて……なんて、ブツブツと小声で呟いている。
いや、えぇと、何?
もはやピクリとも動けず、完全に停止していたのだが。
「あぁぁっ! クロさんがシロちゃんとイチャイチャしてる! ズルい! 私も混ぜて!」
今日は時間があると言って、一緒に遊んでいたナナさんが此方に向かって大声を上げて来た。
これに対して、私はビクッと身体を震わせただけに終わったけど。
相手に関しては“今気が付きました”と言わんばかりに瞼を広げ、暫く固まってから徐々に顔が赤くなっていった。
「ご、ごめんシロさん! そういうつもりじゃなかったって言うか! 全然、ホント! ボディータッチが目的とかじゃないから!」
「わ、分かってます! な、何か気になった事があったんですよね!? 凄く集中した顔をしていたので、理解してます! ブーツの時もそうでしたし、大丈夫。此方も大丈夫なので!」
二人揃って、アワアワと慌て始めてしまう結果に。
なんか、はい、ごめんなさい。
こういう所でも、以前兄が言っていた様に……ちゃんと“駄目”だと言える人間にならないと、それこそ周りの人を心配させてしまうのだろう。
とはいえ、別に嫌な感じとかはしなかったので。
ごく普通に、そのまま相手の反応を待ってしまったのだけれども。
やはり周囲から見ると、健全な光景には見えなかったらしく。
「シロちゃんの独り占めは駄目で~す、ちゃんと私に許可取って貰わないと。いくらクロさんでも、ハラスメントとして運営さんに通報しちゃうぞー?」
「クロ、あのな? お前昔っから何かに集中すると、他の事見えなくなり過ぎ。マジで。リアルで考えてみ? 普通はドン引きされんぞ?」
ナナさんが此方に抱き付いて来て、ぐい~っと緩めにクロさんから引き剥がしたかと思えば。
彼の肩にポンッと手を置いたグレーさんは、思い切り呆れた表情。
へ、へぇ? 黒沢君って、集中するとやっぱり周りが見えなくなるタイプだったんだ。
そして出っ歯さんを含めた彼等三人は、リアルでもとても仲が良い。
更に先程の発言からすると、何だか昔からというか。
幼い頃からお友達だったみたいだし。
え、ちょっと気になる。
黒沢君の小さい時とか、どんな感じだったんだろう?
普段学校では、あまりグレーさんと出っ歯さんに話しかけたりはしないのだが。
その辺を聞いてみる為にも、今度は此方から声を掛けてみようかな。
などと、ソワソワしつつナナさんに確保されていたのだが。
「クロ、何か言い残す事は……無いか?」
「……うん、なんというか、ゴメン。これは納得というか、俺が悪いです」
ゴリッと音を立てながら、出っ歯さんが彼のこめかみに銃口を押し付けているではないか。
待って待って待って、展開が急すぎる。
皆旧友というか、ずっと仲良かったんだよね?
なのに何で容赦なく銃を向けてるの。
いやでも前にグレーさんとクロさんは、出っ歯さんの事を普通にキルしてたっけ。
ライフルと機関銃でぶん殴ったり、その後普通に射殺してた気がする。
男の子のノリというか、あれも結構驚いたけど。
前回のはなんというか……出っ歯さんだしなぁって感じがするから凄い。
慣れって怖い。
「俺も出来ればこんな事はしたくなかった。だが、しかし……いいか、クロ。たとえ仲の良い女の子だったとしても、どんなに可愛かったりエッチな格好をしていようと……基本的には、ノータッチが正義なんだ。分かるな?」
「はい、分かります。完全にやらかしたのは俺だから、いっその事容赦無くやっちゃって……」
何故か涙ぐむ出っ歯さんが、ギュッと銃のグリップを握り締め。
不思議な事に、クロさんも何やら諦めた表情で全身の力を抜いているではないか。
待って待って待って、このままだと普通に引き金を引きそうで怖いんですけど!?
「さらばだ、クロ……だが、これだけは心に刻め。イエスロリコン、ノータッチ……だ」
「いや俺はロリコンじゃないよ!? シロさん同い年だからね!?」
この発言だけは遺憾だったのか、急激に反応したクロさんだったが。
次の瞬間には、明らかに出っ歯さんが人差し指に力を入れたのが分かった。
だからこそ、なのか。
ちょっと自分でも分からないけど。
「ふっ!」
咄嗟に身体が動き、ナナさんの抱擁を抜け出して足を真っすぐ振り上げた。
リアルの私だったら、絶対ここまで脚が上がらないでしょって角度まで。
結果、octopus8から貰ったゴッツいブーツのつま先が。
出っ歯さんの構えた銃口を蹴り上げ、空に向かってパァン! と乾いた音を響かせた。
「「「え?」」」
その光景に、男性三人からは非常に驚いた表情を向けられ。
「んもぉ~こういう所で急に格好良い事しないの! 変な所でファンが出来るよ! 私みたいな」
ナナさんからは、再び後ろから抱き付かれてしまった。
「いや、えと……あの、すみません。えぇと……つい?」
アハハっと乾いた笑い声を洩らしながらも、どうにかこうにか言い訳してしまったけど。
さっきだけは、本当に自然と身体が動いたというか。
思わず反応してしまっただけなので、もしかしたら全然空気を読めていない行動をしてしまったのでは?
などと、今更ながらテンパり始めたけども。
少しだけ固まっていたグレーさんと出っ歯さんからは、大絶賛されてしまう事に。
もう一回やって! 録画するから! みたいな状態に陥り、カメラを構えたナナさんの前で……全員揃って何故か演技をする事に。
私にとっても初めての経験だし、意外と面白かったんだけど。
恥ずかしい事この上ないのと同時に、ちょっとだけ顔を赤らめているクロさんと何故か視線が合わせられなかった。
◆
「今日も色々やらかしてしまった……」
ログアウトして、6keyの訓練が始まるまでの間。
ベッドに突っ伏しながらも、んもぉぉ……と一人唸っていた。
分かるじゃん、普通。
あの三人なら、皆の中で許容しているおふざけなんだって。
しかもゲームだし、本当に怪我する訳じゃないんだし。
だったらあんな事して、変な空気にするのは違う。
いやまぁ、お二人のお陰で非常に盛り上がってくれたけど。
でもさぁ、でもさぁ……ちょっとあの後、黒沢君も気まずそうにしていたし。
私の馬鹿ぁぁぁ……とか何とか。
枕をポスポスと叩きながら悶えていたのだけれども。
ちょっとだけ、気になる事が。
6keyならもちろん、46leatherですらアレだけ動ける感覚があると言う事に、自分でもびっくり。
もちろんステータス振ったから、リアルの私よりずっと柔軟だし筋力があるのも知っている。
けども……あのキック。
両方のキャラで、似た様な行動してるんだよね。
6keyでは3daysの銃を蹴り上げたし、46leatherでは出っ歯さんの銃を蹴っ飛ばして逸らした。
もしかして、なんだけど。
リアルの私でも、あんな高い位置までキック出来たりするのだろうか?
だって実際黒沢君に連れて行ってもらった射撃場では、ある程度はメインキャラの動きをトレース出来た訳だし。
もしかしたら……なんて希望と共に、ベッドから床に降り。
すぅぅと息を吸い込んでから、ギュッと自室のカーペットを踏みしめた。
そして。
「せぃ――っ! ふぎゃぁっ!?」
派手に、ひっくり返りました。
それはもう、ドンッて背中をぶつける感じに。
痛ったぁぁ!? というか、苦しい! 背中思いっ切り打った!
あと股、股関節! 絶対グキッって鳴った!?
とかなんとか、部屋の中で悶えていると。
「どうした夢月! 凄い音したけど、大丈夫か!?」
兄が、慌てた様子で此方の部屋へと駆け込んで来る始末。
そして、床に転がったままピクピクしている私。
「きゅ、救急車!」
「ちがっ! いやホント大丈夫なので! 平気なヤツなので!」
とんでもない誤解を、生んでしまいましたとさ。
やっぱりリアルの私の能力は、全然大した事ありませんでした。
あと、身体が固いです。
というか痛いです。
コメント
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第128話、読み終わりました!シロさんがクロさんに手を合わせられて固まるところから、まさかのイエスロリコンノータッチの流れ、さらに咄嗟のハイキックで空気を一変させるシロさん…めっちゃ面白かったです!特に、ゲーム内であれだけ動けるのに現実で股関節をグキッとやるギャップが笑えて好きです。黒沢君の小さい頃の話も気になりますね!