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ダンジョンを、進む。
隊列は、
王王王 + 佐助
前 俺 館林さん バルク 後
セキロー + 剛武
この様に組んでいる。
「王王王 + 佐助」 と 「セキロー + 剛武」 の組み合わせだが、
ウルフに小鬼を乗せて、騎兵のような扱いにしている。
館林さんは教官の立位置なので、基本的にはパーティーメンバーとして計上しない扱いとなる。
今回の探索で問題が無ければ、次回以降は彼の位置もしくは俺の前にマリィさんが入る事になるだろう。
念のため護衛役には、もう一体欲しい所だ。最終的には前後左右を固められればと思うけど。
バルクは最低一度は前に立ってもらうけど、今回の主力はウルフと小鬼で、彼らが実戦に生かせるかテストしてみたい。
ウルフと小鬼の組み合わせで、前衛・斥候・罠対策まで出来れば良いのだが、どうだろう。
隊列の説明を館林さんにしてみたが、Gランクではこれで大丈夫だろうと言われた。
裏を返すと「Gランクだけなら」と言う事なのだろう。
Fランクに挑む前に戦力・罠対応力のさらなる増強が必要か……
動物型と人型を組み合わせて騎兵を作るサマナーは、たまに居る様だ。
モンスターのランクを上げたり組み合わせを変えると、体格・体形の違いで騎乗が難しくなるので気を付けた方が良いと忠告してもらった。
モンスターの装備だが、ウルフとオークには必要なさそうだったので小鬼達にだけ形の違う棍棒を2本ずつ渡している。
十フィート棒の代用も出来るように棒型と、メイス型のセットを二つ用意していたのだが、素振りさせた限りではどちらも使えそうだ。俺も同じものを武器として持ち込んでいる。
剣に憧れが無い訳ではないが、どう考えても素人には向いていない。
棒型は本当は槍にしたかったんだけど、ネットでは《槍術》のスキルが無いとモンスターに武器として使わせるのが難しいと言われていた。
お値段も高めで槍一本>棍棒十本だった事も理由だが。
棒型もメイス型も木製の棒に鉄で補強した物なので、しばらくは持ってくれると思いたい。
防具は今回は自分用の物だけ準備している。
出来る事ならモンスター分も用意したかったが、小鬼用の防具は今まで需要が無かったようでオーダー扱いになるようなのだ。
作るかどうかは今回の探索次第になるだろう。
Gランクモンスターは基本使い捨てするのが主流の様で、購入費以外に経費を掛けるようなのは滅多にいないんだろう。
舘林さんもGランクモンスターに本契約するサマナーを見たのは俺が初めての様で。
Gランクとはいえど、本契約の料金も決して安くは無かったからなぁ……
しばらくしてウルフ達が止まり、前方の曲がり角に向かって警戒する素振りをし始めた。
俺に意見を求めている感じではないので、敵が近づいているのだろう。
遂に戦闘か。
殺し合いは何度かイメージしてみたが、実戦は果たしてどうなるか……!
曲がり角から出てきたのは人間成人大の人型の獣が一匹。コボルトか。
「王王王、セキロー掛かれ! 佐助と剛武は乗ったままで、まず当てる事だけに集中しろ!」
俺の号令と共に四匹が動く。
コボルトはこちらが動いてから敵の存在に気が付いた様で咄嗟に身構える動きを見せたが、体勢が整う前に四匹が仕掛けられそうだ。
これはいける!
そう勝利を確信した俺が見たものを順番に上げていこう。
1.壁を蹴り飛び掛って、上からコボルトの首に噛り付いたセキロー
2.飛び掛った時の勢いでセキローの背を滑り、股間のボーイがコボルトの顔にダイレクトアタックしてしまった剛武
3.全速力でコボルトの股下を潜り抜けた王王王
4.その勢いのまま、コボルトの股間に叩きつけられた佐助、
5.声無き絶叫を上げ、股間を押さえて床に転がるコボルトと剛武
わずか五秒に満たない時間で何故これだけの悲劇が起きたのか。
俺の初めての戦闘は、生まれて初めて向けられる殺意に怯えたりとか、人の形に類似した生物に対する殺害に苦悩するとかそんな事はまったく無く。
早く楽にしてあげなければという慈悲の心とか使命感的な感情と共にコボルトの後頭部に振り下ろしたメイスの一撃で幕を閉じた。
当てた時のグシャッとした感触を知覚した時に思った事は、ああ、これでこいつは救われたんだなぁという祈りにも似た思いだった。
カルトの狂信者かな?(彼の目は濁っていた
(主に精神的な)戦闘のダメージが回復した後、ウルフから小鬼を降ろして行動させる事にした。
鞍と鐙が無くても大丈夫かもしれないとかいう考えは甘えだった。
反省会は帰ってからするとして、今はまず対策を優先する。
警戒役はウルフのままで、戦闘時にはまずウルフ、次に小鬼の順で攻撃させてみよう。
練習すらしていない今、出来る連携は最低限の物だろうに何故俺はいきなり騎乗突撃させてしまったのか……
やはり、冒険者になれたというだけで浮かれていたんだろうなぁ。
と。いけないいけない。気を取り直していかないと。
コボルトの死体が消えた跡に、直径一センチ程度の魔石が残っていたので忘れずに回収する。
この魔石が初心者・上級者問わず、全ての冒険者の主な収入源である。
無論、お宝と言えるのはダンジョンで発見できるアイテム類なのだが、魔石、正確に言えば魔石の中に入っている”魔力”は冒険者の活動の全てに関わる最重要資源にもなる。
携帯用の魔力抽出器も予備の貯蔵容器も無いため、今すぐ魔力の活用が出来ないのは残念だが…
それからの道中はボスエリアまで、何度かあった戦闘と、館林さんによる罠の解説・解除の実践があったぐらいで、どちらも大きな問題は無かったが、残念ながら宝箱も無かった。
館林さん曰くGランクでは出てくる方が珍しいとの事だ。
宝箱の罠は、鍵もしくは蓋を開けた時に作動するのが大半との事で、罠解除をしようと思うならその辺りも注意する必要があるらしい。
探索開始から三時間、ようやく見つけたボスエリアで待っていたのは、ホブゴブリンと四匹のゴブリンだった。
前衛の四匹だけでは苦戦は免れなかっただろうが、ここで満を持してバルクさんを投入。先生、よろしくお願いします!
結果、大剣三振りでボス戦終了である。
五匹なのに三振りで済んだ理由? 最初の横薙ぎ一振りで取り巻きのゴブリン三匹が膾斬りにされたからだよ。(ドヤ顔
ここまでのドロップ品は小容量の魔石だけで、おそらく二~三千円位とほとんど稼ぎにならない。
ボスドロップの魔石を売ってようやく一万円に届くか届かないか位である。
時給三千円以上と見ても、Gランクとはいえ命の危険が隣り合わせにあるダンジョンの稼ぎと考えると物足りなく感じる。
万が一にも一個二十万円の脱出アイテムを使う羽目になると大赤字もいいところだ。
Gランクで経験積んで、早くFランクあわよくばEランクにならなくては……!
決意も新たにボス討伐後に出現した帰還用ゲートを潜る。
ダンジョンからの脱出先は入り口に使ったゲートの裏側であり、館林さんに促されて部屋の入り口の逆側にある帰還口に入る。
帰還口の先では、手に入れたアイテムの申請及び申請したアイテムのチェックが行われる。
申請はしてもしなくてもいい物なのだが、しておくと後でトラブルを防げる事もあるらしい。
特に理由も無いので手に入れた魔石の申請を行い、量を測ってもらう。
換金所も施設内にあるのだが、まずは館林さんからの評価を聞くのが先である。
評価の内容は纏めると、最初の戦闘以外は大体問題が無く、真面目に取り組んでいけばEランクまで挑戦出来るようになるでしょう、とのことだ。
「ただ、本契約を結んだ召喚モンスターとはちゃんと意思疎通を取っておく事だね。」
と、少し苦笑しながら釘も刺された。
「……最初の戦闘で、すごく思い知りました。」
俺も、苦笑いで答える。
それでも評価を聞いた後は少し嬉しくなった。
小さな事でも家族・友達以外の誰かに認められたのは、久しぶりだったので。