俺の名前は久我虎徹。
「久我くん、怪我したんでしょ?大丈夫なのぉ?」
「守若の兄貴…お気遣い感謝します」
重症の体で事務所内を歩いていたところ、守若の兄貴に心配されてしまった武闘派の極道だ。
今現在、日本の裏社会を震撼させている『極王戦争』…
俺はつい先日、天王寺組城戸派から送られてきた刺客、韮沢とまさに命懸けの死闘を演じた。
別の場所では同期の犬飼も、同じく城戸派からの刺客、苅米と交戦。
「もらったぁぁあ!」「クソッタレぇえ!」
犬飼は肩を軽く斬られただけで、苅米に圧勝。
対して俺は、全身ズタボロの重傷を負ってしまった。
重症といっても、一日入院してしばらくは戦線に立たなければいいだけだったが。
それでも負った傷には深いのもあった。
「クソが…体が上手く動かねぇ 」
松葉杖なしでは歩くことすら難しい。
「虎徹…復帰できたのはいいことだが、その状態で戦ってもらうわけにはいかん。完治するまでは、後方支援にあたれ」
「うっ…承知しました」
正直、すぐにでも戦線に立ちたかったが、カシラの命令だ。
仕方なく事務作業などをこなしていると、一条の兄貴がやって来る。
「おお虎徹ぅ、やけに大人しくなってんじゃん」
「一条の兄貴…正直今すぐにでも戦いたいですけど、この有様なんで」
「まあな…確かに今の状態じゃ足手纏いもいいとこか」
そう言う兄貴の顔は曇っていた。
「兄貴、最近どうしたんですか?やけに顔が暗いですけど 」
「ん?何でもないけど?」
「そうですか…?何かあったらいつでも聞きますよ?」
「わりぃな。あ、そろそろシマの見回り行って来るわ」
「あ、はい、行ってらっしゃいませ!」
パタン
「…絶対何かあるだろ」
一条の兄貴は、入りたての頃からの付き合いだ。
それゆえ、兄貴の考えることなどは多少理解出来るようになっていた。
「兄貴には悪いけど、調査してみるか」
と決めたその時、佐古がやって来た。
「久我の兄貴、守若の兄貴を見ませんでした?確認事項が出来たんですが…」
「守若の兄貴?そういやさっき、事務所を出たような…あ」
「「今日もか…」」
ここ最近、守若の兄貴が事務所に一報すら入れず、街に出るようになっていた。
目的はもちろん、現在村雨町にいる天王寺組城戸派のヤサを見つけ出すこと。
黒焉街にいる半グレを片っ端から襲っては、ヤサを知らないか尋問していた。
「おーい、城戸派のヤサ知ってるなら教えろぉ。答えなきゃ、落武者にするぞ〜」
「しっ、知りません!」
「 俺たちみたいな下っ端には教えられてないんです!」
奴らは末端…、目的の情報は当然持っていない。
だが正直に言っても、守若の兄貴にそんなものは通用しない。
「じゃあ〜〜〜…ザビエルになれぇ!」
「イエスッ⁉︎」「フキョオォォォオ⁉︎」「フカアァァッ⁉︎」
そいつらは一気に頭蓋を丸出しにされた。
「…天王寺組…許さない…コロスコロスコロス…」
守若の兄貴が単体で動いている理由は明白…天王寺組による高砂の兄貴の襲撃だ。
ザシュッ
「あら…悪い子たち…」パタッ
高砂の兄貴は今も意識が戻っていない。
高砂の兄貴は、守若の兄貴が組に来た時から何かと面倒を見ていた。
兄貴曰く、守若の兄貴は入りたての頃は本当に感情が死んでいて、それゆえカタギに手を出しかねなかったから、とのこと。
そして守若の兄貴から見ても、高砂の兄貴には色々と世話になっていた。
そのため、守若の兄貴は暴走してしまっていたのだ。
「守若の兄貴、みんな心配するんでせめて誰かに事前に報告してください」
「ん〜?わかった〜」
放っておくわけにもいかず、昨日注意したのだがあまり効果が無かったようだ。
「(どうしよう…親父に相談してみるか…?)」
守若の兄貴は、五十嵐の親父と出会って組に入ったと聞く。
そして兄貴は親父の言ったことは基本素直に従っている。
この状況を話せば、親父なら、何とかしてくれるだろう。
コンコン「入れ」
ガチャ「失礼します」「久我か」
「親父、守若の兄貴についてご相談が…」
「知っている、報告もせずに街に出てるんだろう。守若は正直言って暴走している」
「それなんですが、親父、何とか兄貴を説得することは出来ませんか?」
「…分かった。保証はないが、やってはみる」
「ありがとうございます!」
あとは明日、兄貴がどう変わるか…だな。
コメント
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文字数によっては、中編か後編かになるかもです! あと、急にオリキャラ出したくなってきた…(気分屋でごめんなさい🙇🏻♀️)