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「どうしてインスタグラマ―の彼女と別れたの?」
私は初めてのデートで彼に聞いた
「彼女は愛より野心をとった、ディレクターと出来てたんだ」
「それを知ったのはいつ?」
「さぁ・・・もしかしたら最初から気づいてたのかもしれない。でも・・・気づかないようにしてたのかもしれない」
「わかるわ・・・・他には?何を言われたの? 」
「僕には将来が見えないそうだ」
「酷いことを言うのね一緒に暮らしていたの?」
「いや・・・暮らしてないよ」
「別れた時・・・悲しかった?」
「悲しくはなかったな、裏切られた事への怒りしかなかったな」
「彼女を愛してた?」
「あれは愛じゃないな・・・ねぇ・・・君はいつもこんな風なの?」
「こんな風って?」
「僕を質問攻めにする」
「あなたに恋してるから」
「実は僕もなんだ」
彼はそう言って笑って私にキスをしてくれた。晴れて私達はテレビ局公認のカップルになった
付き合ってみると彼は素晴らしい人だった。同じ年の康夫はしっかりしているし、一緒にいてとても楽しい人だった
好奇心旺盛で、思いやりがあって、次から次へと面白い話をしてくれた。自分の持ち物やファッションにこだわりがあり、おしゃれな所も好きだった
私は彼を愛した
狂おしいほど
たまらないほど
私は彼のすべてに夢中だった
彼の笑み
彼の笑い声
彼の外見
彼のキスの仕方
彼はまるでチョコレート中毒の様だった。食べすぎて気持ちが悪くなることが分かっていても、それでも食べてしまうのだ
私は彼に尽くしまくった苦手な料理も頑張った
そして二年後私達は結婚した
康夫の仕事は順調にとは行かなかった、暫く彼はキャスターではなく、報道番組の裏方の仕事をやらされたていたが、辛抱強く彼はキャスターになるチャンスを伺っていた。そしてしばらく停滞していたものの、今また動き始めている
私は正美を妊娠し、受付嬢から報道局部長の秘書になる昇進を断った、さらに二年後斗真が生まれると仕事を辞めて専業主婦になった
康夫を気に入っている私の両親に頭金を援助してもらって、市内の駅前に35年ローンで家を買った
私はもっと地方の土地で安い物件にして、借金を少なくしたかったのだが康夫はファッションだけでなく、住む所にもこだわった
そういう訳で今私達はここにいる。完璧な核家族で、恋愛を結婚生活の格差の疑念と、議論が表面化してもろくも崩れようとしてる時に、うっかりできた子供が生まれてくるのを待っている
私は子供達を愛している。夫を愛している。それは間違いない
それでも時々、自分が本当に幸せだった瞬間の昔を思い出して、それをかき集めている
まだ若くてキラキラしていた頃に、私が恋に落ちた男性は長い結婚生活の中で思いやりを忘れた冷淡な男になってしまった
彼の欠点ばかりを見ているわけでも、短所を数えあげているわけでもない、いまでも彼を愛している
これは本当だ
ただ彼が自分自身の事ばかりに目を向けていないで・・・・もう少しだけ愛情と感心を私や子供達に向けてくれたらなと思う
そして私はインスタグラムに投稿する偽物の理想家庭を・・・・3万人のフォロワーに向けて
仮面夫婦の私達家族は、誰もが健康で幸せでウィットに富んでいて、夫婦は愛し合っていて、子供は素直で可愛くてディズニー・チャンネルに出てくるような理想の家庭をいかにも毎日過ごしている風に
結局、認証欲求とは・・・・
寂しさの表れなのだ