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・knkz
『触れたら壊れそうな夜に』
配信終わり。通話が繋がったまま、しばらく何も聞こえてこなかった。
いつもなら向こうから適当な一言が飛んでくるのに。
「…葛葉?」
名前を呼ぶと、返事が遅れて落ちてくる。
わずかに掠れた声で、「なに」とだけ。
その短さが、妙に引っかかった。
踏み込んでいいのかわからないまま、時間だけが過ぎてゆく。
「…今日の配信さ、あそこまじやばかったよね。」
「…だな」
「絶対葛葉あそこでやらかすと思ったもん。」
「…別に」
そこで会話が途切れる。
らしくないと思った。
「…葛葉なんか今日変じゃない?」
「気のせいだろ。」
即答。だけど少し間があった気がした。
「…いやさ、、」
聞いていいのだろうか。
一瞬、そう思って踏み止まる。
けどやっぱり、聞かないわけにはいかなかった。
「……なんかあった?」
少し考えてからそう聞く。
「……ごめん 。なんか今日ダメだ…。」
勇気を出して言ってくれたのだろう。
通話の向こうから聞こえてきた声はか細く、今にも泣き出しそうだった。
「葛葉、今からそっち行く。」
考えるより先に口が動いていた。
行かなきゃと思った。
理由なんて、後からいくらでもつけられる。
ただ、このまま放っておくなんてできなかった。
9月でも、少し夜の空気は冷たかった。
もう少し厚着をしてくればよかったな。
そう思いながら葛葉の家まで急ぎ足で向かった。
葛葉の家の前まで行き、そっと扉を開ける。
鍵は閉まっていなかった。
ただ単に締め忘れていたのか、僕がくると言ったからなのかは分からない。
「…葛葉ー?」
部屋の中へ入る。
静まり返った部屋には、乱雑に置かれた服が散らば っていた。
目当ての彼はおそらく奥にいる。そう思い、奥の部屋へと向かった。
奥の部屋へ足を踏み入れた瞬間、動きが止まった。
そこにいたはずの姿が、どこか違って見えた。
「…葛葉」
名前を呼ぶと、少し遅れて視線が向く。
「……叶」
僕の方を見た葛葉は、一瞬だけ、力が抜けたように見えた。
「大丈夫?」その言葉はまだ早いと思い、 言葉を飲み込む。
「電気つけなよ?」
「目悪くなるよ〜?」
返事はない。
代わりに肩がわずかに揺れた。
「ごはん食べた?」
「…食ってない。」
会話が続かない。
それが1番らしくなかった。
「……葛葉。」
「…何」
葛葉の声が少し詰まる。
「……無理しないでよ」
その言葉を合図かのように、彼の目から涙が零れる。
「大丈夫、大丈夫。」
そんな言葉 と同時に、
なんでこんなになるまで我慢させてしまったんだ。と自分を責める気持ちが湧き出てくる。
「大丈夫、葛葉は何も悪くないよ。」
僕達は、少し湿った空気の中で、肩を寄せて抱き合った。