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もぉ本当にめちゃくちゃ物語に引き込まれました…。
天の声 side
天の声は本を開く。
その本は歴史書だった。
ぱらぱらとページを流し見する。
「…あった。」
そこには一国の歴史。
世界最大の国、wrwr国の軍についてだった。
「懐かしいなぁ」
まだ、あいつらと馬鹿していた時代。
ひどく懐かしく、同時に哀しい。
いつか、あいつらとは会えるんやろか。
きっと、不可能だろう。
でも。
でも。
きっと…会えると信じてる。
…俺たちの総統の言葉を信じて。
いつか、きっと。
俺に変わり、アナウンスをする総統。
戦況は明らかに不利。
さらに戦力となりうる書記長や外資系は負傷。
神曰く、驚異的な回復力でかなり元気になっているが、ドクターストップは一応かけているとのこと。
参謀も戦える、と言っていたが、腕がなまっているとのこともあり、基地周辺を一掃できただけだった。
明らかに負けや。
〚…〛
〚もう、潮時のようだな〛
〚諸君、いつかまた、会おうではないか。〛
〚世界の主役は我々なのだから。〛
数分後、チワワとポメラニアンから報告がはいる
〚西、突破されたで…〛
〚…東もや。〛
〚っ…こちら脅威!!〛
〚参謀と共闘中!!〛
〚前線、突破されてしまいそうです…ッ〛
〚申し訳ありません…ッ〛
〚っ…脅威さん、これ使ってください!!〛
〚あぁ、…さんきゅ!!〛
インカムを切る余裕もないのだろうか、会話がだだ漏れである。
「…天の声」
それだけは嫌や、
なにが起こるかわかりきってるから
そう思い、先程自分の手元に戻ってきたマイクを握りしめる
「…天の声。」
「マイクを。」
「っ…嫌や、それだけは」
「みんな、こうなることを恐れて頑張ってきたんや」
「逆境を乗り越えてきたんや」
思わず、声が震えてしまう
「…わかってるわ」
「俺が1番わかっとる!!」
「ぁ…ごめん…」
震えながらマイクを渡す。
多分、俺はもう泣きそうな顔やと思う。
〚________諸君。〛
聞きたない
嫌や
〚…我々の負けだ〛
インカムの向こうで息を呑むのが聞こえる。
〚っ…待ってください総統さん!!〛
〚俺、まだ頑張れる…!!〛
〚書記長さんに庇われてたから、まだ…!!〛
〚ちょっと外資系くん!?〛
〚総統さん、俺やっていける…!〛
〚俺が1番役に立っとらん。〛
〚少しでも役に立ちたいんや…!〛
〚だめ!それなら俺が行くから!〛
〚総統!俺は?!〛
〚俺は怪我なんてしてないから!〛
〚総統!!〛
懇願する神達の声が聞こえる。
みんな嫌なんや
あのとき。
まだ幼かった頃に決めてしまった約束。
ーもし、俺らが負けたら。ー
ー全員、国を捨てて逃げよう。ー
ーバレへんように全員バラバラに。ー
国民はどうするのか、と聞いたのだが、国民には先に逃げていてもらえばええ。と、なんともぼんやりとした答えが返ってきた。
あのときのチワワからは一言。
お前らが生きとればいくらでもやり直せる。
せやから全員が逃げるんや。
あんな約束、しなければよかったかもしれへん。
あんな約束があったから、俺は総統にマイクを渡したくなかった。
〚…さらばだ、諸君。〛
〚願わくば、来世で。〛
もう一生会えないかもしれないということを言外に伝える俺らの総統。
総統の話を聞ききった我々はまず、インカムを破壊し、一般兵に敗北を伝える
一般兵も知っているだろうが、念の為だ。
「天の声。」
「感謝するぞ。」
「…あぁ。」
「書類、燃やさんとな。」
もう俺はぼろぼろと泣いていたと思う。
総統が悔しそうに俯いていたのが1番印象的やったな…
我々は想い出の品であるペンダントだけを握りしめ、ちりじりになった。
______これが、世界最強と名高かった国の終わりだった。
「ほんま、懐かしいわぁ…」
あいつらはうまく逃げれただろうか。
そもそも、国が潰れたわけでなく、軍のみが潰れ、国自体は政府が創立し、それに引き継がれてしまった。
俺らの伝説は塗りつぶされてしまった
自分達の血で。
今日も、外に出ようか。
いつも着ていた橙色の着物__にするのはやめた。
思い出すのは辛いから。
パソコンだってあるから消息は掴もうと思えば掴めたかもしれない。
でも、死んでいたらどうする?
それが頭をよぎるから、調べようとは思わなかった。
いや、思えなかった。
オレンジ色の着物の代わりに、黒い服を着て、その上にコートを羽織る。
今日は寒い。
気分はもっと最悪で冷え冷えとしたような気分だ。
「寒いなぁ…」
いくら寒くても、雨でも、風が強くても。
毎日俺は外に出る。
あいつらを見つけるため。
名前すら思い出せんのに、何言っとるんやろな。
夢では、みーんなあだ名か役職やったしな。
思い出せればええんやけど
ふと、気づくと首元でペンダントが光っていた。
“また”だ。
いつも無意識につけている。
誰かが見つけてくれるんじゃないかと思ってだろう。
向かい側からたくさん、人が歩いてくる。
駅前やししゃーないな。
その中に黒髪がいた。
黒い髪なんてたくさんの人がそうや。
でもあの黒髪。
地毛じゃないやん。
おおよそ、かつらかなんかやろう。
元監視塔責任者舐めんな?
「っ…w」
「ばれっばれやで、参謀?w」
そう呟くが、この声は届くはずもない。
「はー…ったく、参謀は気配消しが得意やから敵わん」
「せっかくの手がかりやったのに」
そう思ったのに、俺は追いかけなかった。
認めるのが怖かった。
もし、違ったら。
もう、参謀は死んでいたら。
そして、別人かもな、なんて自分の期待を自分で潰す。
期待通りとは決まってへん。
ほんまにあれは参謀やったか?
でも、あの方向。
元々あった軍基地の方向。
それだけならええけど、持ち物。
両手で抱えていた花束。
もしかしたら、誰かが死んだ?
だとしたら、なんで参謀はそれを知っとる?
「やめや、もう」
もう期待してこの国に残るのはやめよう。
辛くなる。
行くとしたら合衆国にでも逃げたるわ
そうと決まれば飛行機の予約を取る
ただ、いきなり過ぎたため合衆国行きの便に乗れるのはかなり後になってしまった
荷物まとめなあかんから少しだけまとめておく
今日はもう寝よう
さて、残り少ない私物を片付けてしまおう。
もともと持ち出せるようなものはなかったから私物が少ない。
これでさっさと逃げられる。
心残りがあるとすれば…
もう1度、馬鹿騒ぎしたかった。
…これは望み過ぎか。
…せめてあいつらに会いたかった。
「もう、叶わへんな、w」
自嘲気味に笑う
もしかしたらこの国も見納めになるかもしれん。
なら、最後はあの場所で過ごそう。
自分の荷物と有り金を持ってあの場所へ。
そして足を運んだのは基地。
俺らが築き上げてきた世界。
少し錆びてしまっている門に手をかける。
「あんた、そこでなにしてるのかね?」
振り向くと、老婆だった。
「こんちには、おばあさん。」
「少し、思い出に浸っとったんや。」
桃色の目を見てはっとしたような顔をする老婆。
カラコン、いつも通りにつけておくべきだった
きっと、国民だろう。
罵倒、されるだろうか。
「すまんかったなぁ、みんなのこと守れなくて」
「…」
「そんなことはないぞ」
「あんたの国の国民で良かったと思うよ、わしは」
「そう…ですか…」
あぁ、もちろんだ!といって微笑むのはどこかおかしい総統と姿が重なってしまって。
切ない気分になってしまった。
「あんたの探し人にとってはあんたが探し人だろうねぇ」
「え?」
「昔の仲間なら探すだろうねぇ」
「頑張るんだよ、我らの天の声様」
「ッ…あぁ、ありがとさん」
老婆は満足そうに立ち去っていった。
俺の探し人は俺が探し人…?
なんだか少しおかしいけど、少し、あたたかい。
ええなぁ、こんなあたたかさに包まれてたいわ
もう、叶わへんのに。
もう一度、鉄の門に手をかける。
軽く押すと、ぎぃ、と音をたててあっけなく開いてしまった
「最後やし、入っておくか…」
そう思い、重たい体を引きずるようにして歩き始めた
参謀 side
両手に抱えた花束を、図書館と書斎にいける。
「…懐かしいですね」
もしも、私が前線を守れていれば。
あのとき、私にもっと力があれば。
もっと、訓練しておけば
この未来は変わったんやろか。
背後に気配を感じる。
思わず振り返ると、蝶だった。
振り返ると私の体に当たるペンダント。
綺麗な茶色。
私の色。
「…」
蝶に向かって語りかける。
「貴方も、1人ですか?」
そっと手を伸ばす。
「私とおんなじですね…w」
指先に止まった蝶は美しい羽を持った蝶。
綺麗な黄緑の。
「…脅威さんみたいで、綺麗ですね」
名前を口にしたくても、決して出来なかった私の大切な仲間。
「総統さんなども元気でしょうか…?」
「貴方、何か知っていたりしません?」
答えなんて返ってこないのに、蝶に向かって語りかける。
孤独なのだ、私達は。
私が孤独なのと同じように、みなさんもそうなのでしょう。
何度、私が故郷へ帰ろうと思ったことか。
でも、しなかった。
可能性があるならば、私はこの国で生きましょう。
そう、決めたから。
錆びた門の方から、耳障りな音が聞こえる。
「チッ、またか」
また。
最近、門から音がすることが増えた。
どうせ情報を取りに来た敵国だろうと思ったのだが、殺意が一切ない。
むしろ慈愛のようなものすら感じる
それに、いくら見つけようと足掻いてもすぐに消えるのだ。
「今は外に出ないほうがよさそうですね。」
買いだめしている食料、飲料水はこの書斎に置いてある。
自国の基地を離れる気にはなれなかった。
1度は逃亡したが、数年を経て戻ってきた。
「もう、手放す気はないのでね。」
「ね、貴方もそうでしょう?」
話し相手がいないからか、蝶に向かって語り続ける。
天の声 side
まずは情報管理室へ向かう。
俺の仕事場。
そして、この国最後の時間を過ごす場。
「あと1ヶ月。」
「どうやって時間を潰すべきやろなぁ」
さっき、書斎に気配を感じて目をやったのだが、蝶しか見当たらなかった。
きっと間違いだろう。
あの人影は俺の罪悪感と妄想が見せたものだ。
きっと、そうだ。
書記長 side
ずいぶん前から居座り続けている書記長室。
懐かしい、俺だけの居場所。
あのとき、俺が怪我なんてしてなければ。
あのとき、俺が。
…可能性に縋るのはやめや。
俺はここに居る。
あいつらもどこかに居る。
なら、それでええやん。
でも、やっぱり。
もう1度、会いたい。
脅威 side
窓の外を眺める
あーあ、おもんない日常に逆戻りやん
軍基地を眺めるたびに思う
あいつらは、元気やろか。
「っ…参謀…さん…ッ」
涙はとめどなく溢れる
「大先生…ッ」
「天の声…ッ」
みんなの名前を呼びながら号泣してしまう
「ッ…寂しいやん、」
「1人に…ッしないでや…」
外資系 side
せっかく面白かったのに
楽しかったのに
自分の居場所やと思えたのに
なんで、消えてまうんや?
俺が怪我して、書記長さんに庇われて、みんなの足引っ張って。
「俺、みんなに迷惑かけただけやん…」
基地へ行こう
辛くなるときはあそこに行こう。
俺の思い出のある場所。
ぎぃ、と言う音をたてて鉄の門を押す。
なんか、気配を感じる
「誰や、出てこい」
「俺の思い出を汚すのは許せないんで」