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次の日曜日の午後、武司と二人の母親は麻里の自宅で麻里の両親と向かい合って座っていた。
みな押し黙って言葉を発する事ができないでいた。リビングのドアが開き、書類の束を抱えた麻里が入って来た。麻里は自分の両親の間に座り、書類の束をテーブルに置き、まっすぐに武司、美咲、麗子の方を向いて口を開いた。
「結論から言わせて下さい」
武司、美咲、麗子は死刑判決を受ける囚人のような気分で居住まいを正した。麻里が言葉を続ける。
「武司さんとの結婚に、条件をつけさせて下さい」
そう言われた3人はそろって驚愕の表情を浮かべた。麗子がおずおずと訊く。
「あの、結婚を取りやめるというお話ではないの?」
麻里はきっぱりと首を横に振った。
「それも考えました。それでいろいろ調べて回ったんです。弁護士さんが言うには、あたしと武司さんは法律的には結婚できます」
麻里の両親も寝耳に水だったようで、そろって驚きの声を上げた。母親が言う。
「でも、あなたたちは半分きょうだいなのよ」
「遺伝子的にはね。でも、あたしと武司さんは、戸籍上は血縁関係のない両親から生まれて、別々の家庭で育った。いい意味で赤の他人同士という事になるの」
武司が信じられないという表情で訊く。
「法律的には問題ないって意味?」
「日本の結婚制度は戸籍主義って言って、戸籍上の血縁関係が無ければ婚姻を禁止してないの。と言うより、あたしたちみたいなケースは、完全に法律の想定外なのよ。医学の進歩に法律が追い付いてないのね」