テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
いつも通り、ワイワイガヤガヤやっていると一本の電話が掛かってきた。
誰がいつこの場所に居るかなんて誰も決めてはいないというのに、この事務所には常に四、五人ドールがたむろしている。
今日は、愛華、鈴華、陸華、そして共華の四人がるようだ。
共華が陸華や鈴華と共にいるのは珍しい。
一番初めに受話器に飛び付いたのは鈴華だった。
「はい、日常の小さなトラブル解決隊です!今回はどのようなトラブルですか?」
鈴華の瞳は受話器の向こうから聞こえてくる声にキラキラと輝き始めている。
「スマホが神隠しに遭った!?!」
鈴華の元気な声が事務所の外まで聞こえそうだった。
そんな鈴華の言葉に愛華は眉をピクともさせずに緑茶を啜り、共華は自身のノートPCで何やらとても複雑な数式を打ち込んでいた手を止め、陸華は慌ててメモ帳片手に鈴華の隣りに立つ。
「神隠しかぁ、これまたオカルトじみた表現だね」
不思議そうに、陸華は鈴華の受話器の音を上げながら声を漏らした。
受話器からは、焦りと困惑が混じった女性の声が聞こえる。
「そうなんです!昨夜、確かに枕元にあったはずなのに、今朝起きたら跡形もなく消えていて…! 家の中をいくら探しても見つからなくて、もうどうしたらいい か……」
女性の声はまさしく絶望に打ちひしがれているようだった。
それもそうだ。現代人にとってスマートフォン、略してスマホというのは、命綱のような物。これが無ければ簡単に迷子になる者だっている。
そんな物が突然消えるだなんて、初手から【ちょっとしたトラブル】では無い気がするが、気にしてはいけないのだろう。
「成る程、本当に霊的な消失なのか、認知のズレなのか、、、」
愛華は少し面白くなっているのか、口角を上げて何やら呟いている。
「神隠し……!面白そう!」
鈴華が受話器越しに女性の言葉に答える。女性はそんな鈴華の言葉に混乱を隠せないようだが……。
「電子機器の位置情報特定ならば容易い事だ」
共華が何かのデバイスを開きながら呟く。
「待て待て待て。そう簡単に彼方此方にハッキングしにかかるな」
「チッ」
何処か不気味な笑顔を浮かべる共華を愛華が慌てて制止した。
共華は不満そうに口を尖らせ、わざとらしく舌打ちをしているが、愛華の言う事はしっかりと聞くらしい。
「承知いたしました、依頼主様。私たちがその『神
隠し』になったスマホを、必ずや見つけ出してみせ
ます。場所と、消えた時の詳しい状況をお聞かせい ただけますか?」
陸華がハイテンションの鈴華から受話器を奪い取り、優しい声で女性に尋ねた。
「はい、場所は○☓マンションの□△号室です。昨日の夜、寝る前にベッドの枕元に置いて、充電していたんです。それから朝起きたら、もう本当にどこにもなくって!寝ぼけて変なところに置いたのかもしれないですけど、ソファの下も、タンスの裏も、全部探したんです!もう何時間も…!おかげでせっかくの休日が台無しで」
女性は焦りからか早口になっている。陸華は相槌を打ちながらメモをしている。
「〇☓マンションの□△号室ですね。じゃあ、5分後にそちらにお伺いさせていただきます。その時に我々が見つけ出しますので、ご安心下さい」
声だけでも分かるほど陸華の性格は穏やかで、優しい。
「ありがとうございます!本当に、助かります…!お待ちしています!」
女性の声は少し明るくなった気がした。